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深淵聖女(ディープマリア) ~転生魔王は勇者ご一行~  作者: 恩谷
JUPITERIAS(ジュピタリアス) 第一章 ~二人の真祖~
18/61

18.フローレンツィアの強襲(下)

警告を受け。表現や展開などを全年齢向けに修正。オリジナルはミッドナイトへ移行しました。


本流から少し逸れて、時間軸にして2年前の話で気分転換できればと思います。二つ名持ちの新キャラも登場しますよ。

[麓町(ふもとまち)ホプスエリン (みどり)渠底(きょてい)前広場]




時刻は深夜2時を過ぎていた。緑の渠底の前の広場には数十人の冒険者たちが縄でくくられていた。それを上回る数の盗賊たちが回りを包囲し、冒険者たちの所持品や武装が一か所に積まれて山のようになっている。


メサリアたちはその中の端っこへと放り込まれた。



「この、グリンタールの薄汚い盗賊どもめ!!」



「なんだとこの豚野郎!!」《ガッ》



「ぐあっ…」



少しぽっちゃりしている冒険者の一人が威勢よく立ち上がって手縄に力を入れたところを、小太りの盗賊が殴り飛ばした。



「堪えろガーランド!! アレを見ろ! モスデリルのようになりたいのか!」



「しかしエマンス!! …っちくしょおおお!!」



ガーランドを必死になだめるエマンスは、数メートル先で無残に横たわるモスデリルの死体を涙目で見つめながら言い放つ。ガーランドは殴られながらも悔しさで叫んだ。



「モーゼンさんが… モーゼンさんがまだいる!! なんとかしてくれる!!」「そうだ! モーゼンさんがいるじゃないか!!」



なんとか希望を見出そうとする冒険者たちに、新たにやって来た盗賊の一人が冷酷に告げた。その盗賊の薄汚く下劣な吐息交じりの声があたりに響く。



「ほらよ。お前らのお望みのモーゼンさんだぞぉぉ、けひゃひゃひゃ!!」《ドガッ》



それなりにがたいの良いモーゼンを、更に一回り大きい毛むじゃらの大男がつまむようにモーゼンを皆の前に投げ捨てた。


厳ついマスクで鼻から口までスッポリ隠し、坊主頭で左目に切り傷の入った、毛むじゃらの胸毛が特徴の上半身裸男がそこにいた。右手には大人一人分の背丈はある釘だらけの巨大な棍棒を手にしている。



「モーゼンさん!」



「大丈夫だ俺は… それよりもお前たちは、緑の渠底の皆は無事か!?」



モーゼンはゆっくりと重そうな身体をなんとか持ち上げた。エマンスに状況を伺う。



「奴ら、冒険者に用があるらしく、皆武器を取り上げられてここに繋がれている。大体は無事だが、抵抗した数人が殺された!! モスデリルも!!」



「も、モスデリル!! 俺が不甲斐ないばかりに…!!」



モーゼンは大男を睨んだ。エマンスが大男に言い放つ。



「貴様がこの騒動の主犯格か! 誰だ!」



「長年外の空気を吸ってなかったからな゛あ゛ぁ゛!! 相変わらず湿気た空気してやがるぜここはよ゛お゛ぉ゛!!」



大男はマスクを外すと、大きく深呼吸をしてものを吐き捨てるように唾を吐いた。そして再びマスクを付ける。



「まずい!! 豚箱の中の空気の方がマシだぜこりゃあ゛!」



「貴様… ザムリオ・バグラダマスか!?」「な! ザムリオだって!?」「グリンタール盗賊団の頭!」



「あぁ、お前は俺が豚箱に捕まった時にモーゼンと居たひよっこ冒険者かぁ? ゴールド級とはいい御身分になったな゛あ゛ぁ゛!」



ザムリオはエマンスの身に着けたゴールド級冒険者の証を睨みながら吐き捨てた。



「お頭ぁ! お頭の言った通りでしたぜ。今この町に残っているのは少数のゴールド級冒険者から下のランクどもばかり、人数と人質で脅して、命の保証だけすればすんなり制圧できると!」「こいつら武器持ってなけりゃ大したことねぇなぁ!!」



「げはっはははは!! そんなもんだぜぇ!! だがなテメェら゛ぁ゛、マジックキャスターだけは気を付けろって言ったよな? 杖持ってなくてもそこそこ厄介だぞ! 俺ぁマジックキャスターがでぇっ嫌いだ。数年前俺が豚箱に入る羽目になったのも、モーゼンところのマジックキャスターの女だった… ここの女どもも後で皆殺しだ!!」



「ひゃっほぉぉ!!」「うひょぉおおお!!」



ザムリオが冒険者の女たちを人睨みして吐き捨てると、女性冒険者たちの悲鳴が上がる。



「嫌ああああああああああ!!」「きゃあああああああ!!」



「卑劣な!!」



モーゼンは自慢の大斧を手に構えた。



「おいモーゼンさんよ! 武器を捨てろ!! さもないとお仲間の命がないぞ!!」



盗賊たちの1人がそう言うと、近くにいた冒険者の若者の首元にダガーを突きつけた。



「グゥッ、卑劣な」



モーゼンの動きが鈍る。



「待て、ジェフリー。こいつぁ゛い゛い゛。折角だ、モーゼンをコイツら全員の前でボコボコミンチにしてくれるぜぇ! 微かな希望すら粉砕してやるわ゛!! げはははは!!」



ザムリオはそう言うと、自慢の棍棒を両腕で頭の上で回し始めた。物凄い勢いで棍棒が回転する。



「ひゃっはあ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛!!! 大旋風ぅううう゛う゛!!」



「お頭の十八番だ! みんな巻き込まれるなよ!」「いいぞお頭ァ! 見せたれぇ!」



盗賊たちの野次が飛び交う。



「モーゼンよおお!! 仲間の前で恥はかきたくねぇよな゛あ゛あ゛? 正面から受け切ろよお゛お゛!! げはっはははは!!」



「ふん! 再び牢にぶち込んでやる!! 来い、ザムリオおおお!!!」



先程まで威勢のなかったモーゼンが咆哮すると、冒険者たちも声を上げた。



「頼んだぞモーゼンさん!!」「お願いだ、やってくれ!!」



そんな状況の中、殴られた顔が痛々しいベローチェがメサリアとキュレイアに呟いた。



「面目ないよ。冒険者の端くれとは言え、何もできないなんて!」



「ベローチェさん、あの時抵抗しなかったのは正しい判断でしたよ。相手は手慣れた盗賊の男5人、抵抗していたらキュレイアさんも無傷ではいられなかった… それに、モーゼンさんは冒険者の中でも信頼されてるようですが、その人ですら…」



「あのザムリオという男、モーゼンさんでは敵いません」



ベローチェは視線を相対している二人へと戻す。今まさに決闘が始まるところだった。



「げははははははははははははは゛は゛は゛は゛!゛!゛!゛!゛゛゛」



ザムリオは先ほどから回転させていた棍棒を更に加速させた。



「もう無理だぁ゛!! 我慢できねぇえ゛え゛!! げはははははははははは゛は゛!゛!゛」



モーゼンに向かって走り出す。



「喰らえぃ゛! 長年の豚箱の中でレベルアップした俺様の一物うううう!!! 巨根棒おおおお!!」《ズゥゥゥウゥン!!》



「ふぐっあぁ!!」



自慢の大斧でこん棒を受けたモーゼンの足元が地面に一気にめり込み、地面に大きなひび割れが入った。



「ぐっ…うおおお…お!!」



《バキッ!!!》《ズドォォォオオン!!》



「ふぐわぁあああっ…っ!!」



モーゼンの自慢の大斧が真っ二つに割れ、モーゼンは肩から下まで地面に埋まってしまった。



「モーゼンさん!!」「自慢の大斧が、嘘だろ…」「もう俺たちは終わりだ…」



嘆く冒険者たち。



『メサリアさんは、二人の力量を見抜いていた!?』



ベローチェはメサリアに視線を戻した。



「お前… どうやって牢屋から出てきた!?」



エマンスがザムリオに問いかける。



「げははははは!! なぁに、お前らの元お仲間さんに開けてもらったのよぉ!! 感謝してますぜぇ旦那ぁ!?」



ザムリオが後ろを振り向いて言うと、そこには黒装束に包まれた黒鉄の仮面を付けた男が腕を組んで立っていた。



「タイミングが良かっただけだ。上級冒険者(ハンター)どもが出払っている上に、ゴールド級でも抵抗が予想された厄介な奴らだけ先にめどを付けて始末できたからな。すんなり無力化して拘束することができた。それにこの街には自警団がいない、冒険者どもを制圧すればそれで終わりだ」



「流石は元プラチナ級冒険者の中でも、クリスタル級の実力を持っていたとされるだけはありますなぁ! しかしどうせ殺すのに、無力化して身包みひん剥いて、絶望の中じわじわ弄るだなんて趣味悪いぜ旦那!」



ザムリオの隣に仮面の男が立つ。



「貴様! 元冒険者の裏切り者か!!」「プラチナ級? 誰だ!」「やっぱり私たち殺されるの!?!?」



拘束された冒険者たちから悲痛な声が上がる。



「あいつだ… あいつのせいで俺のパーティ全員手も足も出ずに無力化された… 」



肩に傷を負ったシーフの冒険者が口を重々しく開いた。



「ジルクニット、お前のシーフ(軽装備で素早さ重視の役職(クラス))のメンバーが無力化されたのか!?」



エマンスが驚く。すると、半ば埋まっているモーゼンが口を開いた。



「お前… その声… 神速(しんそく)のライエンか」



「久しぶりだな、モーゼン。やはり老けたな。年月とは怖いものだ」



神速のライエンは黒鉄の仮面を取ると、黒化粧で塗った鋭い眼もとで冷徹にモーゼンを見下ろした。というか、埋まっているので見下ろすしかなかった。



「神速の!? 知ってるぞ!」「神速って確か、人界で最も速いって噂の!?」「無敵じゃねぇかよそんなの」


「二つ名持ちが何故!!」「もう終わりなの私たち…」



「なんでこんな事をする、ライエン!」



モーゼンは未だ地面と向き合いながら辛そうに投げかけた。



「何故? とは可笑しなものよ。お前ならわかるだろう、俺のアサシンギルド「はぐれ逆十字(さかじゅうじ)」は闇に紛れるアサシンのトップギルド。そのリーダーである俺が人格不適合でクリスタル級になれないなど赦されることではない」



「悩み苦しんだ末に俺は気づいた。この世の中冒険者以外でもクリスタル級やアダマンタイト級の実力者はそれなりにいる。例えばここのザムリオ、世間では脅威レベルでプラチナ級とされてるようだな」



げはははとザムリオが相槌をいれる。



「つまりは冒険者などという狭い世界に囚われる必要は皆無。そして、俺を認めぬ冒険者ギルドなどに価値はない。俺はアサシンらしく闇夜に紛れるだけだ。だから、表に顔を出すのはこれで最後だ」




『お前ら冒険者(ハンター)どもは、この神速(しんそく)のライエンに手も足も出ずに窮地(きゅうち)(おちい)った、この事実をその心に(きざ)め!』




「愚かな… 冒険者ギルドが危惧していたのは、お前のそういった自己顕示欲だ」



「ムッ?」



「名声に対する固執と自己顕示欲は冒険者をダメにする」



モーゼンが力なくライエンを見上げた。



「自己顕示は自己実現の最も手っ取り早い方法だ! 何が悪い!! ザムリオ、約束だったな。俺の悪名の為何人かだけは生かせ! それ以外の冒険者どもは好きにしろ!」



「お゛う゛よ゛ぉ゛!! お前ら手ぇ出すなぁ、豚箱の礼にモーゼンの前で女をじわじわいたぶり殺してやる! おめーら! 上玉な女ひとり連れてこい!! げはははは!!」



「嫌ああああ!!」「きゃああああ!!」「やめろ! やめてくれ!!」「女子供だけでも逃がしてくれ!」「やるなら俺をやれ!」


「ちくしょおお!!」「いやよ! 絶対いや!!」



拘束された冒険者たちが一斉にわめき始める。ベローチェは隣にいるキュレイアを抱きしめた。



「お頭ぁ! それなら見て下せぇ、この女やばいんすよ!!」



先ほどメサリアを拘束した巨漢がメサリアを群衆から引きずり出し、ローブをはぎ取った。メサリアの凹凸あるボディラインが群衆に晒される。



「うおおおおおお!!!」「いい女だ!!!」



「メサリア殿!!」「!!」



キュレイアとベローチェは何もできずに、自分の無力さを嘆いた。



「くっっはぁあああ゛あ゛あ゛!! やべぇぞこの女すげぇ!!」



ザムリオがその大きな毛むじゃらの腕でメサリアを掴む。



「赤髪の冒険者? 見たことがない、他国の冒険者か」「クッ、すまねぇ、俺らが不甲斐ないばかりに」「にしても、確かにすげぇ…」



成すすべもなく、無力さにかられる冒険者たち。



「やめろ!! やるなら俺をやらんか、ザムリオ! 女子供は関係ねぇ!!」



「モーゼンとやるだと? バカ言えホモだったのかおめぇえ゛ お前を煮るのはこの後だぜげはははは!!」



モーゼンの咆哮も無駄にあしらわれる。



「俺にとって冒険者は等しくどの国の者も同じ、下らん夢追い共だ。決められたルールの元で決められた評価を受ける。実に狭い。己が冒険者だったことを呪うんだな女」



ライエンが告げる言葉など耳にせず、ザムリオはメサリアに夢中の様子。



「すまんな、どこぞの冒険者の者よ… 俺は…無力だ」



モーゼンは目をそらしながら、力なくメサリアに声をかけた。



「げへへはは!! 怖がって声も出ないのか? 出してくれなきゃ困るんだがなぁあ゛あ゛。なんだその目つきはあ゛ッッ!?!? …!!??」「あっ…」《ドサッ》



突如ザムリオはこと切れたかのように膝を着くと、顔面から地面に突っ伏した。




「全く、その図体でその程度とは、狩人さんの足元にも及びませんよ、お笑い草です」《ボソッ》




「お頭ぁ!?」「どうしたんですかいお頭!!」「おい尼ァ、何をした!?」



困惑して声を上げる盗賊どもに、あっけにとらわれる冒険者たち。ライエンは即座に間合いを取り、メサリアを警戒した。



「下級魔法、魔導士の衣(ケープオブメイジス)



メサリアの羽織っていたボロボロのローブが瞬く間に魔女の衣服へと変化した。彼女の体がみるみる衣服で包まれて行く。ライエンが口を開く。



「女、何者だ。ザムリオは腐ってもプラチナ級、不意を突いてもそうはなるまい」



「神速のライエンさんでしたか? 冒険者時代の二つ名に縋り付いて、未練たらたらじゃないですか。あぁ、くだらない」



「貴様ァ! くだらないと言ったな!」



「あぁくだらない、全くもってくだらない。南では魔王軍の侵略を受けているこの時ですら、人は内部で薄汚い略奪を繰り返す。人とは全く愚か極まりない」



「貴様、その印、シルバー級冒険者風情が言ってくれる。まるで貴様は人ではないかの言いようだな」



ライエンは警戒したまま問いかけ続ける。



「フフッ、人ではない、かもしれませんね」《ボソッ》



「お頭によくも!!」



一人の盗賊が攻勢にうつるが、すかさずメサリアが言い放った。



「お頭の命がどうなってもいいのですか?」



足元で横たわるザムリオの首元を見えない何かで掴んで持ち上げる。盗賊は再び動きを止めた。



「無詠唱で… ザムリオの巨体を持ち上げてる…」



ガーランドが目を見開いた。



「女、名乗れ! メーデリア農国、元緑の渠底所属の冒険者、このライエン・ソフリシェイラの生き様を下らぬと言ったことを後悔させてやる」



「…今は亡きラナ王国 夜光(やこう)祭典(さいてん)所属、勇者ご一行『真紅(しんく)槍刃(そうは)』が元第2魔術師、メサリア・ノア・ヴァルフ… 私のこの力と向き合う時間を下さらない世の中の理不尽さに…(鉄槌(てっつい))を」






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(あの雷鳴のセシルさんの3倍は速いですね)



「あんたぁ、何者だ?」



エマンスは拘束を解いた仲間たちに指示を出しつつメサリアに問いかけた。緑の渠底の顔である数名を除いた冒険者たちは、荒らされた広場の片付け作業に移る。



「いや、それよりも何よりも、本当に助かった。ありがとう」「ああ、そうだ、ありがとう!」「あなたがいなければ終わっていたわ!」



エマンスが礼を述べると、他の冒険者たちも続けた。皆息が上がっている。



「いえ。私も無我夢中でして!」



(本当かよ)



「…正直いって助かったというよりも、感動したぜ俺は!」「あぁ!」「俺もだ!」



ガーランドが腕を上げながら大げさに言う。その声は弾んでいた。周りの数名も相槌をうつ。



「あのライエンの攻撃を地面からの雷で… 凄まじい雷術師(ライトニングメイジ)だ!」



「彼は元々の身体能力の高さに加えて補助魔法の天才なのでしょうね。肉体強化のバフであの素早さを出していました」



「認めぬぅぅ!!」



突如、広場に鎖でがんじがらめにされているライエンが唸りだした。同じくザムリオも拘束され、数名の冒険者が見張っている。そしてしばらく呻きを上げると、力なく静かになった。


他の盗賊たちはほとんど逃してしまい、拘束できたのはものの数人であった。



「メサリア殿!」



駆けつけてきた少女がそのままメサリアに飛びつく。



「キュレイアさん、ベローチェさん」



妹を追って、ベローチェが頭の後ろをかきながら恐る恐るやってくる。



「メサリアさん、無力な僕をお許しください…」



「気になさらないでください、お顔の怪我大丈夫でしたか?」



「ええまぁ、むしろ男前になったと妹が…」《ハハハ》



メサリアは愛想よく返すと皆に背を向けた。空は次第に白み、朝の訪れをかもし出す。



「メサリアって言うのかねーちゃん。あんたの国は災難だったな」



エマンスが告げると、他の冒険者たちもうつむいた。



「こんなに強いセカンドメイジがいる勇者様ご一行が敵わないほどの強敵だったんだな。正直言って、世間の評価は矮小なる人の国がひとつ消えた程度だ。だが、俺たちはもう知っている!」「ああ! もちろんだぜ!」



「アンタもそのお仲間も、強く逞しく勇敢に戦ったんだな。誇りに思うべきだ」



「あったり前じゃないですか… 私の自慢の最高の仲間ですよ!」



振り返ってそう言ったメサリアは、この街に来てからの最高の笑顔だった。






-----------------------------------------------------------------------------







「メサリア殿行っちゃったね、バカ兄」



「そうだな」



空はより一層白み、朝が訪れようとしている。



「亡国の聖女か」「深淵を見た気分たぜ」「深淵… 聖女…」



後ろ姿を見送るメーデリアの冒険者たち。



「あぁ」



深淵(しんえん)のメサリアだ」



人々に伝わりし深淵のメサリアとは…



『深淵』


『聖女』


『妖艶』


そして… 『深紅(しんく)の髪』



《キュゥゥウウウウウウン》



突如冒険者たちの上空で光が収束しだす。皆が驚き光の収束の中心をみつめると、光は次第に闇に染まり放電現象が起こり、次の瞬間大きく弾けた。


そこにはブカブカの大きな真っ黒の魔女の帽子を被った三つ編み白髪の魔導士が、巨大な(なた)のような武器を箒代わりにして腰掛乗りで浮いていた。



断罪(だんざい)のネフィルロッツェ!!?」



エマンスが声を上げる。



「え、ネフィルロッツェ様?」「断罪様だ!」



皆が声を上げる。



「ネフィルロッツェ『様』です、エマンス。格上の冒険者への態度がなってねーですよ」



黒縁のまるメガネをくぃっと持ち上げ、エマンスの頭上から見下ろすようにそう言うと、緑の渠底唯一のクリスタル級冒険者ネフィルロッツェ・エリン・ファウラは地上に降り立った。



「ヤバい気配を感じ取って他の連中よりも先に戻って来ましたが、どうやら収集ついたみたいですね…」



「ああ、一足遅かったな。全部片付いちまったよ」



エマンスの言葉を横耳に、ネフィルロッツェはあたりを見回す。そして、鎖に繋がれたかつての同胞を見つけた。



「お久しぶりですねライエン。この騒動の原因はテメェでしたか… 意識はありますか?」



「…ネフィルロッツェか。お前が戻って来る前に片を付けるつもりだったんだがな、この様だ」



「クリスタル級の実力を持つ『神速』のテメェがその様とは、一体何があったというのですか。モーゼンやエマンスじゃあなたの相手は務まらなかったはず」



(いかずち)だ。地表を割って強烈な雷が、神速移動していた俺をピンポイントで当てやがった」



「地脈魔法ですか? 地中のマナの流れを電撃に変換させたんですね、そんな使い手そうそういませんが。一体どなたが?」



「夜光の祭典の勇者パーティ第2魔術師らしい… 完敗だ」



「ほほぉ… 亡国のセカンドメイジ、やりますねぇ。とりあえず…テメェは不運でしたね」



ネフィルロッツェの表情はその大きな魔女帽子に隠れて見えなかった。



「おい、モーゼンさん! メサリアさん行っちまったぜ、いつまで地中で呆けてんだよ、終わったぜ! ったくお礼のひとつも言えねーのかよあの娘に」



ガーランドはモーゼンの前へ回り込み、地面から引っ張り出した。



「年甲斐もなく、そのな…」



「おう、どーしたんだよ」



「興奮しちまってな、ローアングルだったし」



「…このエロじじい!!!」《ドガッ》






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中二心そそる二つ名持ちの名前考えてる時って最高に楽しいです。その風貌やキャラクター、属性、世界における強さランキングとかたまんねぇっす。


次話、来週です。

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