傭兵団アルタイル
ララス山脈の裾野で決戦が開始される数時間前、アルフォード王国北西部、レナード領と王都を結ぶ街道を2万の大軍勢が南下していた。
その先頭には3騎の騎馬が並走している。
「ふぁーあっと…。何でこんな朝っぱらから引き返しとるんや?」
3騎の内、右側を走る騎馬の上で、朱色の髪を後ろで束ねた筋肉質の女が欠伸をしながら中央の男に尋ねる。
「朝一で伝令が来おってな。嫌ーな予感が的中したもんやから、引き返しとるんや。」
派手な鎧を身に纏う中央の男は、厳しい表情で前を見据えたまま筋肉質の女に言葉を返す。
「嫌な予感っちゅうと、例のレナード領に向っとるゆう王都守備隊の事かいな?」
「せや。」
「いやいやいや、無いわー。暫くは動けへん言うとったやないですかー?」
「こっちの戦力も分からん内は動かんもんと思っとったけどな、今朝方、南砦に向けて進軍したっちゅう話や。」
「内通者でもおるんかいなー?」
「知らん。」
「知らんて…、何や見当でも付いとるんちゃいますのん?」
「領内に連中の味方なんぞおらんやろーし、連絡手段も無い筈や。」
「アルフォードお得意の魔法でも使こーたんちゃいます?」
「あー有り得るわ。デュオはどう思う?」
中央の男は、重装甲に身を固め、無言で左側を走る男に言葉を掛ける。
「…魔法か…あれは恐ろしい…」
「せ…せやな。」
「アホか!自分で振っといて何を後悔しとんのや。」
「うっさいボケー!たまにはコミニュケーション取らな、意志の疎通もでけへんやろが。」
「…止めろ…揉めとる場合やない…」
「お、おう。せやな…。」
「にしても、大して強くも無い部隊が勝算も無しに攻めて来たりするもんやろか?」
「ワシの嫌な予感っちゅうのはそれや!」
「急に大声出すなや!ビックリしたわー。」
「トラキア戦役の英雄っておったやろ?あれが連中の中に紛れてるっちゅう話や。」
「はぁ!?マジで言うとんの?」
「冗談とちゃうで、マジな話や。」
「そんなんウチらの戦力で太刀打ちでけへんやろ…」
「クロスボーンの連中だけに任せとくんか?それこそ無理やろ?ワシらが行かな。」
「クロスボーンと合わせて3万か…」
「本国から援軍も呼んどるみたいやで?」
「それなら何とかなるかもしれんなー。」
「せやろ?何ならワシらが英雄の首でも取ったろうやないか!」
「あー、無理や無理や。ホンマにアホやなー。」
「アホ言うなや!行けるて。」
「死ぬで?」
「ワシらの名を轟かす千載一遇のチャンスやぞ?死んでなんぼやないか!」
「アホくさ。」
「…やらいでか…」
「お?デュオも乗り気みたいやで?」
「なんやのんアンタら!ウチは嫌やで。」
「なぁ、頼むて!」
「危なくなったらウチだけでも逃げるで?」
「行くには行くんやな?決まりや!ほな、全速前進!!」
「ちょ、待てやー!」
傭兵団アルタイルと呼ばれる新進気鋭の2万の軍勢は、レナード領へ向けて猛進を開始する。
この更なる脅威が、苦戦を強いられる王都守備隊へ襲い掛かるのも時間の問題となっていた――
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