奪還作戦
私が市街地の門に戻ると、ラキ少年の横で綺麗に整列して待機している5人の王都守備隊の姿があった。
「お帰りなさいませ、アイリスさ…ん」
「はぁ…あのなー、バカなのかオマエら!そんな綺麗に並んで突っ立ってる傭兵がどこの世界にいるんだ?」
「そうは言われましても、待機命令ならば当然ではないのですか?」
「あー分かった、もう良い…。それよりもホラ、形見の首飾りだ。これで間違いないか?」
オルテガから奪い返した虎目石の首飾りをラキ少年に渡すと、両手の上で鈍く輝く首飾りを見詰め、その手に優しく包み込む。
「私に目利きの知識は無いが、良い品だ。売っ払らわれてなくて本当に良かった。」
「どうやってコレを?」
「奴の幕舎に乗り込んで、ボコボコにして奪い取ってやった。」
「嘘だ!そんな事出来る筈がない!」
「ん?さては、奴が何者か知ってて私を嗾けたんだな?」
「それは…」
「まぁ良い、無事に取り戻せたんだ、これで文句はないだろ?」
「…」
未だ納得していない表情で私を見詰めるラキ少年。
その時、私達の横を3人組の傭兵が、笑い話をしながら通り過ぎようとしていた。
「見たか?団長のあのボッコボコにされたツラ!」
「ああ、傑作だったな!」
「どこぞの女にやられたらしいぜ?」
「マジか!?どんな女だ?」
「さあな。」
「ボコボコにされて、値打ちモンの首飾りを盗まれたらしいぜ?」
「ギャハハ、そりゃ良い気味だ!」
「日頃の行いが悪いからだろ?」
タイミング良く私の噂話をしながら市街地の中へ消えて行く3人。
それを聞いたラキ少年は、驚いたように目を見開き、私を見詰めている。
「な?そういう事だ。」
「本当だったんだな…」
「これで信じてもらえたか?」
「…ああ、分かった、信じよう。」
「そういや自己紹介がまだだったな。私はアイリス、王都から来た魔術師だ。そんでコイツらは王都守備隊の兵士達だ。レナード領の南にも2万の王都守備隊が待機している。」
「2万!そんなに…」
「ああ、私達は本気でフェニキア傭兵からレナード領を解放しに来た。」
「どうやって…オレは何をしたら良い!?」
私を見詰めるラキ少年の瞳に熱い輝きが宿り、急かすように問い詰めてくる。
「まぁ落ち着け。まずは敵の情報を教えて欲しい。」
「まずは南砦の前に、オルテガ率いるクロスボーンの傭兵が1万。」
「ああ、それは確認済みだ。城の方は?」
「レナード城には、王都からゼルギウスと共に来た親衛隊が500、それと王都魔法学院から来た魔術師が数人、そしてフェニキア正規軍が数千はいると聞いた。」
「なるほど、他には?」
「いや、後は西方騎士団が1万ほど、北東、東、南の各砦に分散している。」
「その中で最も多いのは?」
「東だ。約半数が詰めている。」
「そうか…。ラキ少年よ、東砦の西方騎士団を説得して、我々の味方につける事はできそうか?」
「いや、それは無理だ。ゼルギウスに牙を折られ、歯向かう事を諦めた連中だ。傭兵に協力する事は無いが、味方にはならないと思う。」
「私達の邪魔にはならないといったところか…。」
「作戦はあるのか?」
「今ここでクロスボーンに奇襲を掛けるという手段もあるが、城からの増援が厄介だな。」
「ではやはり、我々の本隊で砦の外に誘き出して戦うしかありませんね。」
「ああ、それで行こう。私が砦の外に布陣したクロスボーンに背後から奇襲を掛け、本隊と挟撃すれば、城からの増援が来る前に片付くだろう。後はその勢いで城を攻略する。」
「我々だけで奇襲ですか!?」
「いや、私独りで充分だ。モーリス、今から本隊に合流してハンク将軍に作戦を伝えてくれ!」
「承りました。」
「決戦は明朝、準備を怠るな!」
こうして、モーリスを送り出した私達は今宵もヨルゴ爺さんの納屋を借り、少し早めに眠りに就いた。
いよいよ明日、レナード領奪還のための決戦が始まる――
ご意見、ご感想、評価など頂けたら私の魔力も滾りますので、どうぞよろしくお願い致します!




