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深淵を知る者  作者: Gary
雌伏の地にて時の至るを待つ
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少年達との抗争

 ジークの後ろ姿を見送った僕は、早速走り込みの訓練を始めようとするが、シリウスが独りで街の方へ向かって歩き出した。


「どこへ行くんですか?」


「チッ、ケリを着けに行く…」


「ひょっとして昨日の少年達と戦うつもりですか?」


「お前達には関係ない…」


 そう言ってシリウスは、振り返る事無く街の中へと消えて行った。

僕とザックスは顔を見合わせ、呆れたポーズを取る。


「放っておけませんね。」


「そうですね…」


「ただ、僕達が助けたとしても彼は諦めないでしょうね。」


「どちらにせよ、このまま黙って見過ごす訳には行きません!」


 僕達は互いに頷き、足早にシリウスの後を追った。

シリウスに気付かれないように少し距離を取り、街の雑踏に紛れて彼の尾行を続けていると、次第に人気のない路地裏の方へと入り込んで行く。


 突然ピタリと止まったシリウスに反応して、僕達は物陰に身を隠した。

警戒しながらシリウスの様子を窺っていると、見知らぬ少年と何やら話をしているようだ。

ここからでは会話の内容を聞き取る事は出来そうにない。


 しばらくすると、彼は少年の後に続いて再び歩き出す。

一体何をしているのか解らないが、僕達は彼の後を追うしかなかった。


 そして、僕達は街外れの空き地に辿り着いた。

雑多なガラクタが山積しているその空き地には、20人程の少年達がたむろしている。

ここからでは少し距離があり過ぎるので、物陰に隠れながら空き地の入口まで移動し様子を伺う。


「またテメーか!昨日あれだけボコったのに、しつこいヤローだな。」


「チッ、能書きは良い…サシで勝負だ!」


「んだと?弱ぇくせに調子に乗ってんじゃねーぞコラ!」


「どうした…怖気付いたのか?」


「ハンッ、下らねぇ。おいテメーら、やっちまえ!」


 一際高く積まれたガラクタの上に座るリーダー格の少年の指示で、たむろしていた少年達がシリウスの周りに集まって来る。

いくらなんでもこれでは分が悪い。

チラリとザックスを見ると、彼は大きく頷き空き地の中へ飛び込んで行った。

僕もザックスに続いて走り出す。


「何だテメーらは?」


「チッ、余計な真似を…お前達には関係ないと言った筈だ!」


「でも、このままでは多勢に無勢…ジークさんに無茶はするなと言われたばかりではありませんか!」


「チッ、だからどうした…固有魔法オリジンだか何だか知らないが、俺はこんなところで負ける訳にはいかない!」


「ゴチャゴチャうるせーな。テメーら、3人まとめてやっちまえ!」


「ア…アレンさん!」


「何だよ!」


「あの金髪、昨日俺達3人をボコった奴です!」


 昨日シリウスを助けた時に撃退した少年の一人が、ザックスを指差しながら後ずさる。


「ビビってんじゃねーよ!この人数相手に勝てる訳ねーだろが!」


「で、でも…あの金髪、バケモノみたいに強ぇんですよ!」


「ったく、バカかテメーは!素手でダメなら角材でも何でも使えば良いだろ!良いかテメーら、二度と俺達に歯向かわないように教育してやれ!」


 少年達は各々転がっている棒切れを手に、じわりじわりと詰め寄って来る。

あんな物で殴られれば、怪我では済まされないだろう。

しかし、例え正当防衛だとしても一般人相手に魔法を使う訳にもいかず、かと言って他に対処する方法など皆無である。

ここは退路を断たれる前に逃げるのが得策だろう。


「ここは自分が食い止めます、その隙に逃げて下さい!」


「チッ、逃げる?ふざけるな!俺が戦う…お前達は消えろ!」


 こんな時に言い争いをしている場合ではないのだが、少年達が目の前まで迫って来ているというのに動こうとしない2人。


「仕方がないですね、ファクトだけでも逃げて下さい!」


「…分かりました。気を付けて!」


 僕は一瞬躊躇ちゅうちょするが、ここにいても彼らの足手まといになるだけだ。

逃げるというよりも、一旦離れて別の手を考えるべきだろう。

僕は空き地の入口に向かって全力で走り、物陰に隠れる。


 ザックスは、僕を逃がすまいと追いかけて来る少年の前に立ちはだかり、顎先に拳を叩き込む。

一撃で意識を刈り取られ、膝から崩れ落ちる少年を見て、彼らは一斉に襲い掛かって来た。


 ザックスは、少年の落とした棒切れを拾い応戦するも、波状攻撃の前に防戦一方で反撃に出る事が出来ないようだ。

いや、例え棒切れであっても一般人の少年相手に、本気で武器を振るう訳にもいかず、守勢に回っているように見える。


「ハッハ―!どうした、その程度か?」


 その時シリウスは、背後から角材で殴られ地面に転がった。

このままでは彼らが危ない。

仕方なく魔法を使って援護する事に決めた僕は、空き地に向かって足を踏み出すが、何かにつまずいて転んでしまった。


 足元を見ると、長いロープが蜷局とぐろを巻いて横たわっていた。

これを使えば何とかなるかもしれない…。

今なら少年達はザックスに集中している。

僕はロープの片方を重いガラクタに結び付け、もう片方を持って空き地に飛び込んだ。


 僕は空き地の中央を突っ切り、リーダー格の少年の目の前まで走り抜ける。


「何だ!?」


 リーダー格の少年は、彼の目の前でピタリと止まった僕を不思議そうに眺めている。

そこで僕はきびすを返し、ザックスに群がる少年たちの後ろをぐるりと駆け回った。


 ザックスに襲い掛かっている少年達は、駆け回る僕の存在に気付くが、もう遅い。

僕が力いっぱいロープを引くと、張り詰めたロープが少年達の足元を襲い、将棋倒しにバタバタと倒れて行く。


「ザックス、今です!」


 僕の声に反応したザックスは、手に持った棒切れを投げ捨て、立ち上がろうとする少年達を蹴り飛ばして行く。

ザックスが呻き声を上げる少年達を一瞥いちべつすると、小さく悲鳴を上げて後ずさる。


「マジかよ!何なんだよテメーらは!仕方ねえ、この俺がブッ飛ばしてやる!」


「待て…」


 怒りに顔を歪ませ、ガラクタの上から駆け下りて来るリーダー格の少年の後ろから、フラフラとシリウスが歩み寄る。


「貴様の相手は…俺だ…」


「この死にぞこないが!」


「お前達は…手を出すな…コイツは俺が倒す…」


「舐めやがって、そんなボロボロで俺に勝てる訳ねーだろうが!」


 頭から血を流し、リーダー格の少年と睨み合うシリウス。

果たして、シリウスはこの少年に勝つ事が出来るのだろうか――

ご意見、ご感想、評価など頂けたら私の魔力も滾りますので、どうぞよろしくお願い致します!

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