リィンフォルト作戦会議
「では、僭越ながら。バラン殿下の王国正規軍、ルイス殿下のフェニキア傭兵、共に戦力は拮抗すると見られます。両勢力の戦闘は泥沼化し、国内は未曽有の内乱状態に突入する事でしょう。」
「ふむ、それで?」
「はい、内乱を早期終結させるだけならば、どちらかの勢力に加勢すれば良いのですが、内乱終結後の王国の安寧を鑑みるならば、共闘の道はあり得ません。」
「その通りじゃな。王国の平和のためには、やはりアルテミシア様が王位を継ぐほか道はない。」
「そうなると、両殿下の勢力に対抗し得る戦力が必要です。そこで、聖教国ハイネシアに援軍を要請する事は出来ないでしょうか?」
「ふむ、それで良い。しかし、ハイネシアも少々問題を抱えておってな、それほど多くの戦力を期待出来ん状況じゃ…。」
「では、風評を利用して兵を集めるというのはどうでしょう?」
「風評とな?」
「はい、多くの国民はアルテミシア王女に対する支持が非常に高く、大義のため兵を集めていると広く国内に流布すれば、自ずと兵は集まる事でしょう。」
「ほぉ、面白い。具体的にはどうするつもりじゃ?」
「ハイネシアとの国境の街アストレアに駐屯し、そこで風評を流します。ハイネシアの後ろ盾があるとなれば、更に多くの兵が集まると思われます。」
「なるほど、アストレアならば北に広がるバラン殿下勢力の陰に隠れる形にもなり、既に敵対しているルイス殿下の邪魔が入り難い。」
「はい。」
「他には?」
「後は集まった戦力次第ですね…。」
「ふむ、そうじゃな。よろしい、概ね儂の考えと同じようじゃが、風評か…やってみる価値はありそうじゃな。」
「それで、実際にはどうするつもりだ?爺さん。」
「…では、ファクトの考えも視野に入れつつ、今後の作戦を説明する。」
宰相閣下は、テーブルの上に広げられた大陸の地図を指でなぞりながら、詳細な作戦を語った。
まず、救援を要請するためアストレアを経由し、聖教国ハイネシアへと向かう。
教皇猊下と縁のあるアルテミシア王女と近衛騎士団を中心に、宰相閣下とザックスも同行する。
そしてアストレアに駐屯し風評作戦を実行するのは、もちろん提案した僕を中心にジーク、シリウス、リィンフォルトで共に戦った民兵の一部、更に王都守備隊から500の兵士だ。
ここでの指揮は僕に一任され、国内に残された数少ない拠点として、守り通さねばならない。
最後に、師匠とハンク将軍を中心とした王都守備隊だが、王国の西、フェニキアとの国境へ向かい、拠点を押さえる事になった。
これは、ルイス王子勢力へのフェニキアからの戦力供給を断つためである。
戦力供給を断たなければ、恒久的に増え続けるルイス王子勢力に対し、打つ手が無くなってしまう。
後は戦力が整い次第、大規模な王都奪還作戦に移行するのだが、実行には半年ほど待たねばならない。
ハイネシアからの援軍が到着するまで少なくとも2か月は待たねばならず、そうするとアルフォード王国に本格的な冬が到来してしまうからだ。
冬の間、国内は南部の一部を除いて雪に覆われ、両王子勢力も身動きが取れないだろう。
その間に軍備を整え、春の訪れと共に王国全土を巻き込んだ戦乱の時代が幕を開ける。
それまでには僕自身も、もっと力を付けなければならない。
アルテミシア王女を国王に奉戴し、平和な王国の未来を紡ぐために――
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