表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深淵を知る者  作者: Gary
幕間
49/124

王宮に蠢く者

 天高くそびえる王宮の窓から見える景色はいつもと変わらず、どこまでも続く青空と太陽の日差しが眩しく降り注ぐ。

眼下には市井の軒並みもまた、どこまでも続き、街路に溢れる民衆の喧噪がここまで聞こえてくるようだ。


「フン、下らん…」


 ポツリと口をついて出るいつもの口癖を吐き捨てると、背後からノックの音が聞こえてくる。


「入りたまえ。」


 両開きの書斎の扉を開け放ち現れたのは、最近では見飽きた顔ぶれである。

豚のような醜い容姿を上等な衣服で包み込み、卑しい笑みを浮かべるバルト卿、そして常に暗鬱な表情で顔をしかめ、深く刻まれた皺を更に深く掘り込んだベルムス卿、2人の貴族だった。


「ルイス殿下におかれましては、本日もご機嫌麗しく…」


 バルト卿は深く頭を下げ、チラリとこちらの様子を伺ってくる。


「前置きは良い、要件は何だ?」


「はい、良い知らせと悪い知らせがございます。」


「ふむ…悪い知らせから申してみよ。」


死神の大鎌デスサイズが妹君の暗殺に失敗致しました…。その後死神の大鎌デスサイズは壊滅…どうやら、かのウォーロックが連中の味方に付いた模様でございます。」


「…あの神炎の娘か?」


「はい。トラキア戦役の英雄…敵前線の都市を魔法一つで跡形もなく焼き払った、強大な力を持つ娘でございます。」


「まったく、愚妹め…余の慮外りょがいを引き寄せる…。それで、良い知らせというのは?」


「混乱を避けるため、まだ公にはなっておりませんが、御父上…国王陛下が崩御ほうぎょなさいました。」


「そうか、遂にか!この時をどれほど待ちわびた事か!」


「この件に関しましては、ごく一部の者しか知りません。多少は時間が稼げるかと思われます。」


「ふむ…して、宰相はどうしておる?」


「それが…国王陛下崩御の知らせを受けた後、八方手を尽くして捜させておりますが、皆目…」


「何!?王都から消えたと申すのか?」


「はい…そのようでございます。」


 宰相であるフェスタ―卿の裁可無くして次期国王の地位を得る事はままならず、故に次期国王の座を手に入れるため、脅迫、監禁、あらゆる手を尽くしてでも奴に認めさせなければならない。

それが無理ならば、暗殺して子飼いの者を宰相に就かせ、国王の座を得れば良いと画策していたが、我々の監視の目を掻い潜り、王都を抜け出すとは…。


「アルテミシアは、未だリィンフォルトに滞在しているのだな?」


「はい、街を出たとの情報は入っておりません。」


「ならば、宰相はそこへ向かった筈だ。」


「トラキア戦役にえにしのある者が集まりつつあると?」


「何の因果か分からぬが、恐らく間違いない。」


「それでは早急に手を打たねばなりますまい…。」


「リィンフォルトに兵を送れ、理由など何でも良い!そうだな…神炎の娘を死神の大鎌デスサイズの一味に仕立て上げよ。」


「兵の数はいかほどに?」


「2万だ。アルテミシア諸共、宰相、神炎の娘、近衛の連中も皆殺しにせよ!」


「しかし、それではバラン殿下に対する備えが無くなってしまいます!」


「心配するな、兄上との決戦に際して、フェニキアから続々と兵力が集まりつつある。」


「そうだな?ベルムス卿。」


「はい…滞りなく…。」


「おお!それは心強い。」


「よし、それではすぐに出陣の準備に取り掛かれ、明朝には出立せよ!」


「はい、必ずやルイス殿下のご期待に応えて御覧に入れます!」


 慌ただしく書斎を退室する2人の背中を見送り、ほくそ笑む。

邪魔な兄上と妹を始末すればようやくだ、ようやく、余が国王の座に君臨する。

フェニキアの属国と成り下がったとしても、手の打ちようは幾らでもある。


 王都の中枢を握っている余に地の利は有る。

故に軍事力に勝る兄上にも、衆望しゅうぼうに勝る妹にも、負ける道理はない。

自然とこぼれ出る高らかな笑い声が、静かな王宮に鳴り響いた――

ご意見、ご感想、評価など頂けたら私の魔力も滾りますので、どうぞよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ