献策
僕達が倒さなければならない敵は2人。
1人はシャズ、彼は複数の針を操る能力を持っている。
もっと深く考察するなら、雷系統の能力者で、身体のどこかに刻まれたタトゥーで瞬間的に電磁力を発生させ、金属を操る事が出来る。
彼の所持する針はもちろん、高速で飛来する矢さえもコントロールする事が出来る。
白銀の胸当てと小手を装備しているミリアムが拘束されなていない事を考えると、鉄などの特定の金属のみが対象となるか、もしくは一定の質量までしかコントロールできないか、そのどちらかだろう。
立ち回りや間合いを考えると、恐らく後者の質量が関係していると考えられる。
以上の事から、剣などの近接武器で攻撃されれば対処できないと思われる。
しかし、僕達の中に近接攻撃が得意な者はいない…。
次にブラッドだが、彼は血液を自在に操る能力を持っている。
系統などは全く分からないが、師匠が流している血を取り込んでいる形跡がない事から、自らの血液に魔力を宿してコントロールしているのだろう。
液体である事から、その形状は千変万化であり、刃にも盾にも小さな礫にも変化させる事が出来る。
何より恐ろしいのは、その圧力で、師匠の魔法を弾く程の硬度を持たせる事が可能なのだ。
刃となれば金属をも切り裂く事が出来るだろう。
「師匠、全力での魔法はあと何回使えますか?」
「…デカいの3発ってところだな。」
「わかりました。では、ミリアムさん、残っている矢はあと何本ですか?」
「残り9」
「その矢の矢尻は全て金属製ですか?」
「こんな時に一体何を言っている!」
「教えてください、重要な事なのです。」
「これは全て敵が持っていた物だ。勿論、全て同じ金属製に決まって…いや、1本だけ私の矢が残っている。」
そう言って彼女が見せてきたのは、べっとりと黒い血糊が染みついた石の矢だった。
「…ありがとうございます。」
「それで、作戦は決まったか?敵も待ってくれそうにねーぞ。」
確かに敵も態勢を整え、じわじわと間合いを詰めて来ている。
もう迷っている時間はない。
今考えている策を実行に移すべきだろう。
「では、ミリアムさん。ブラッドとシャズの両方に矢を放って下さい。ブラッドは血を使って防御、シャズは矢を反転させて来る筈です。その矢を躱したら、間隔を空けてシャズに2発撃ち込んで下さい。ただし、その全ては必ず急所を狙って下さい。そして、2発目に撃つ矢は必ず石の矢を使って下さい。できますか?」
「フン、私を舐めるな!」
「よろしくお願いします。師匠は1発目の矢に合わせて、ブラッドに爆炎魔法を撃ち込んでください。もちろん全力でお願いします。」
「ああ、了解した!」
「その後ブラッドは反撃に出るでしょうが、注意して躱して下さい。これで3対1になります。」
僕の策が言い終わると同時に、彼女達は左右に分かれ、ブラッドとシャズに狙いを定める。
勿論、僕もその場で術式を展開させる。
ミリアムの弓が引き絞られ、ブラッド、そしてシャズへと放たれる。
タイミングを見計らい、先程と同じように僕の氷の吐息、そして師匠の高圧爆縮火炎魔法がブラッドを襲う。
ブラッドの血液は、ミリアムの矢に反応するも、師匠の魔法に気付いたのか拳大の血液を矢の防御に残し、残り全ての血液で盾の形状に変化して師匠の魔法から身を守る。
ミリアムの矢を包み込んだ血液は、内包した矢を破壊した。
一方シャズは予想通りミリアムの最初の矢を反転させて、ミリアムに撃ち返す。
反撃された矢を軽々と回避したミリアムは、指示通りに間隔を空けて2本の矢を放つ。
「クハハハハ!無駄だ無駄だ!俺に矢など通用しな…!!」
ミリアムが2本目に放った石の矢が、高らかに笑い声を上げるシャズの脳天に突き刺さる。
やはり、シャズは金属以外の物質は操作出来なかった。
ミリアムの放つ矢が全て金属だという思い込みと慢心が、彼に死をもたらしたのだ。
脳天に矢を受け、吹き飛ぶように倒れるシャズを尻目に、ブラッドは再び血液の豪雨を周囲に撒き散らした。
今度の血の散弾は先程よりも広範囲に及び、師匠だけではなく、ミリアムや僕にも飛散して来た。
師匠とミリアムは持ち前の身体能力で、僕は転げ回るようにして必死に回避する。
僕が最初に予想していた事もあり、なんとか全員無傷で躱す事が出来たと安心したのも束の間、予想外の事態はそこで起こった。
僕達を通り過ぎた血の散弾は、廃墟の床や壁に乱反射し再び僕達を襲う。
師匠は無事に回避できたようだが、僕は右肩に被弾してしまった。
ミリアムは左足を撃ち抜かれ、血を流しながら膝を付く。
僕と師匠はミリアムの傍に駆け寄る。
敵を追い詰めたとはいえ、僕達も手痛い反撃を喰らってしまった。
ここで終わる訳にはいかない…。
僕の策で、ここから一気に死神の大鎌の首領ブラッドを仕留めて見せる――
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