激闘の終結、そして…
うつ伏せで倒れる僕の背中に蒼白の刃が迫る。
全力で新術を使い、血液を失い過ぎた僕は身体を動かす事も出来ない。
時間がゆっくりと流れて行く…。
僕の名を叫ぶザックスの声…。
全力で駆け寄る近衛騎士の足音…。
蒼白の刃が鋭く空を切り、迫り来る音が2つ…。
2つ?
敵の持つ刃は1つしかない筈だ。
蒼白の刃が振り下ろされる音に交じって、細く甲高い音が近付いて来ている。
この音は…。
そう思った瞬間、ドスリと強い衝撃が僕の上に響き、振り下ろされる刃が大きく遠ざかる。
「ぐぼぁ!」
暗殺者の吐血が僕の頬を濡らす。
その胸には深々と矢が突き刺さっている。
暗殺者は蹲り、苦痛に顔を歪めながら胸に突き刺さった矢を引き抜こうと、必死にもがく。
そこへ再び飛来した矢が彼の脳天を貫き、ドロリと脳漿と血を流しながら暗殺者は絶命した。
あんなにも苦戦を強いられた強敵の、あまりにも呆気ない最期…。
しかし、まだ気を抜く訳にはいかない。
暗殺者を射貫いた2本の矢を放った者は、未だ姿を現していない。
その者が味方であるとは限らないのだ。
いや、僕の憂慮は杞憂に終わったようだ。
街道の先の暗闇から現れたのは、陽動部隊を追って南へ向かったミリアムだった。
彼女は弓を構え、警戒しながらこちらへ駆け寄って来る。
「他に敵は?」
「あれが最後です…。」
「そうか。それで、全員無事か?」
「パーシバルが…。」
ランスロットは倒れているパーシバルの方へと視線を向ける。
そのパーシバルの横で、彼の生死を確認していたガウェインが残念そうに首を横に振る。
それを見たミリアムはパーシバルの亡骸に駆け寄り、強く手を握り締めた。
「済まない…、私がもう少し早く戻っていれば…。」
ミリアムの頬に一筋の涙が伝う。
生き残った近衛騎士達はパーシバルの亡骸を囲み、黙祷を捧げている。
その間にザックスは脇腹を押さえながら、一か所に集めておいた物資の中から僕の背負い袋を探し出し、その中に入っている青いポーションを無理矢理僕に飲ませてくれた。
「ゴホッ、僕はもう大丈夫です。それよりも君の傷は…」
氷の牙に貫かれたザックスの脇腹からは、大量の血が溢れ出てきている。
僕はザックスにも青いポーションを飲ませ、簡単な応急処置を施した。
そして、激闘があった野営地の中央に集まった僕達は、ミリアムにフォルティス川での戦い、そして暗殺者との激闘の顛末を簡潔に話して聞かせた。
「私もここへ向かう途中、アル様の馬車に出会って話を聞いた。」
「これからどうすべきか、ですが…。」
「ガウェインとガラハドは、パーシバルの亡骸と少年達を連れてアルテミシア殿下の元へ向かってくれ。私とミリアム様でミラルダ様とアイリス様を探しに向かう。」
「僕も師匠を探しに行きます!」
「しかし…いや、君がいてくれれば心強いが、大丈夫なのか?」
「少し血を使い過ぎただけです。ポーションを飲んだので暫くすれば魔法も使えます!」
「私は反対だ。私の弓があれば魔法など必要ない。足手まといだ。」
「確かにミリアム様がおられれば敵襲があったとしても容易に対処できるでしょう。しかし、アイリス様に何かあった場合、魔術師の事に関して我々では対処のしようがありません。」
「だが…」
「行かせて下さい!」
「…わかった。ただし、足手まといになるようなら捨てて行く。」
「ありがとうございます!」
そして、野営地を完全に撤収した後、ガウェイン、ガラハド、ザックスの3人はパーシバルの亡骸を運び、アルテミシア王女の後を追ってリィンフォルトへ向かった。
ミリアム、ランスロット、そして僕の3人は、ミラルダを探して街道沿いの森を東へと向かう。
果たしてミラルダ、そして師匠は無事なのだろうか――
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