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深淵を知る者  作者: Gary
力の源泉は己の内に
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新たなる魔法

 双凍剣デュアルフリーズブレードを所持する暗殺者とザックスは、互いに怒りを露わにし、睨み合っている。

何かのきっかけでせきが切られれば、凄惨な殺し合いが始まってしまうほど互いの感情は高まり、危険な状態だ。


 ザックスの左側にはガラハドとランスロット、右側にはガウェイン、そして既に事切れているであろうパーシバル。

いずれもアルテミシア王女の警護を務める精鋭の近衛騎士である。

しかし、この状況では動くこともままならず、暗殺者の出方をうかがっている。


 僕は暗殺者の側面の少し離れた場所で何も出来ずに、必死に打開策を考えているが、その糸口さえも掴めずにいる。

師匠なら暗殺者の体術と互角以上に渡り合えるだろう。

そして師匠の火炎系魔法なら、双凍剣デュアルフリーズブレードを無効化して攻撃する事も可能だろう。

師匠なら…。


 その時ふと、僕が施術した探知魔法の魔方陣が目に映る。

地面に描かれた紋様は、何の反応も示していない。

金属を所持した者が定点を通過していないのだから、反応を示さないのは当然だ。


 しかし僕の中であの魔方陣は、打開策に繋がる何かを秘めているような気がしてならない。

それは一体何なのか…。

焦れば焦るほど考えがまとまらない。


 そこへ、バタバタと羽ばたく夜鳥が僕達の頭上を飛んで行く。

夜鳥の羽ばたく音に反応して、暗殺者とザックスのたかぶった怒りが一気に爆発し、戦闘が始まってしまった。


 ザックスが飛び掛かり、暗殺者が双凍剣デュアルフリーズブレードで待ち構える。

それに反応して、両側面から近衛騎士達が槍で牽制の一撃を放つ。

暗殺者は一斉に襲い掛かる4連撃に対して、大きく地面に剣風を叩き込むと、その軌道上に氷の牙が大地から突き出した。


 近衛騎士達は直前に反応し、後方へ飛び退いて回避するが、ザックスは牙に直撃し、脇腹から血を流している。


「ザックス!」


「後は我々に任せて、君は下がっていなさい!」


「いいえ、ベルガー様の仇…自分があの男を倒さねばなりません…。生きている限り…自分は戦います!」


 そう言ってザックスは長剣を構えるが、その手にはまるで力が入っておらず、これ以上は戦いにもならないだろう。


 僕が何とかしなければ、ザックスは殺されてしまう…。

もう時間がない。

その時僕は、大地から突き出した氷の牙が、記憶の中の情景と重なった。


 あれは確か…シルフィアを出て講師達に襲われた時だ。

精神論講師ブレアの使った大地の槍撃アースグレイブ…。

探知系の術式を組み込んでの天然ガス攻撃…。


 そうか…僕ならば、いや僕にしか出来ない魔法がある!

魔法の能力を発現した人間は、基本的に1つの属性しか扱えない。

ブレアの使った魔法は、大地の槍と天然ガスの探知、どちらも土に属する魔法である。

僕ならば属性に縛られず、あらゆる魔法を扱う事が出来る。


 僕ならば、敵襲の警戒に使った土属性の金属探知魔法と、双凍剣デュアルフリーズブレードを無効化する火属性の炎熱魔法を組み合わせる事が可能な筈だ。

学院で教えられた常識に囚われ、今まで考えた事もなかったが、万能である僕ならば、あらゆる魔法を合成する事が可能なのだ。


 師匠の使う高圧爆縮火炎魔法レイジバーストを何度も見ていながら、なぜ気付かなかったのだろうか。

僕は高圧爆縮火炎魔法レイジバーストの術式を応用し、僕だけの全く新しい術式の展開に取り掛かる。


 何とか間に合ってくれ…。

魔法の対象はミスリル銀製の双凍剣デュアルフリーズブレード、金属探知魔法の術式を組み込めば回避される事も無い。

そして僕の知る中で最高の熱量を持つ魔法、炎の壁ファイアウォールを凝縮し、双凍剣デュアルフリーズブレードの刀身を高熱で包み込む。


 その時、暗殺者は大地から突き出した氷の牙を飛び越え、ザックスに斬り掛かった。

もう間に合わない!

そう思った瞬間、恐らく世界で初めての術式は完成し、僕は双凍剣デュアルフリーズブレードに向かって無我夢中で発動させた。


 ザックスに襲い掛かる双凍剣デュアルフリーズブレードが一瞬赤く発光し、ザックスの構える長剣に当たって粉々に砕け散った。

極低温と高熱に晒された金属は、ミスリル銀であったとしてももろくなるのだ。

特別な製法で作られた魔法の武器エンチャントウエポンなら尚更だろう。


「バカなっ!」


 暗殺者は左手に持つ、砕かれた双凍剣デュアルフリーズブレードを凝視し後退する。

しかし、砕けたのは左手の双凍剣デュアルフリーズブレードのみで、まだ右手の双凍剣デュアルフリーズブレードは生きている。


「もう1本!」


 僕はもう一度、新術の術式を展開するが、途中で術式は空気に溶けるように消えてしまった。

魔力の限界…。

あと少しで双凍剣デュアルフリーズブレードを完全に無力化出来るところだったが、僕は新術の発動に必要な血液を使い果たし、貧血で崩れ落ちた。


「小僧、貴様か!貴様がやったのか!」


 暗殺者は僕の方に振り返り、ゆっくりと歩み寄って来た。


「俺に対して何の効果も無い、氷結系の魔術師だと思って捨て置いたが、何だこれは!何をした!」


 怒り狂う暗殺者を前に、僕はぼんやりと見ている事しか出来ない。


「もう遊びは終わりだ!まず貴様を殺す!あの長剣の小僧も殺す!近衛騎士も王女も皆殺しだ!」


 暗殺者は砕けた剣を投げ捨て、両手で生きている双凍剣デュアルフリーズブレードを振りかざす。

近衛騎士が駆け寄って来ているが、間に合いそうもない。

僕はここで死ぬのか…。

ご意見、ご感想、評価など頂けたら私の魔力も滾りますので、どうぞよろしくお願い致します!

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