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深淵を知る者  作者: Gary
力の源泉は己の内に
30/124

24代目ウォーロック

 そしてまた、フォルティス川の戦いから遡る事、数刻前――


「サイラス!」


 私はまた、あの時の夢を見て飛び起きた。

あの日から、私は熟睡する事が出来ない。

こぼれ落ちる涙を拭き、騒然としているテントの外へ向かう。


 装備を整える近衛兵達の様子から、敵襲が来た事は間違いないだろう。

私の予想通りだが、地形的にここで戦闘になるのは避けたいところだ。


「数は30程度…」


 地面に耳を押し当て、足音を聞いていたミリアムが、ミラルダに敵の数を告げる。


「たった30か、ずいぶんと舐められたものだな。私が行こう。ミリアム、アルテミシア殿下を頼んだ。」


 無言で頷くミリアムを背に、ミラルダは暗い森の中へと消えて行った。


「大丈夫でしょうか?」


 馬車の中から不安そうな声で、アルテミシア王女が問いかけてきた。


「ミラ様なら大丈夫、心配ない。」


 自信に満ちた表情で答えるミリアム。

しかしその時、魔方陣が反応を示す。


「今度は北側からです!」


 南北に延びる街道の先、王都へ続く北側の街道に人影が蠢いている。


「やはり30程度か…。今度は私が行こう。」


 私は蠢く人影に向かい、月明かりに照らされた街道を北へ向かう。

アルテミシア王女の守りは、ミリアムがいれば大丈夫だろう。

それに、今はファクトもいる。

思えばこの数か月で随分とたくましくなったものだ…。


 誰も信じる事が出来ず、過去に縛られ、自分の無力さを呪いながらも自分の力だけで呪縛から解き放たれようともがく…。

私と同じ匂いがした。


 魔力の暴走――

私は人の身に余る魔力を持って生まれた。

制御を失えば、その力は国一つを消し去るような甚大じんだいな被害を及ぼす。


 そんな私を育て、魔術の全てを教えてくれたのは、アルフォード王国の三賢者の一人、バルタザールだった。

良き父であり、良き師であった彼は、私が殺した。

殺してしまった…。


 深淵の存在を知ってしまった私は、顔も知らない母に会うために、深淵の扉を開いてしまった。

大き過ぎる力は制御を失い、私の魔力は暴走する。

そんな私を深淵より引き戻し、命を賭して暴走を止めたのが、父バルタザールだった。


「生きよ!生きていれば戦える、戦う事から逃げるな!」


 そう最後の言葉を私に残し、父は微笑を浮かべて塵も残さず消えて行った。


 気が付いた私が目にした物は、廃墟と化した住み慣れた街の姿だった。

当然、街一つを消し去り、アルフォード王国にとって重要な人物を殺した私は大罪人である。

にもかかわらず、王国政府が私に下したのは、第24代目ウォーロックの叙勲じょくんであった。


 非公式ではあるが、緊張が高まる近隣諸国への武力示威の一環で、私の力を飼い慣らし、軍事利用しようというのが政府の目論見もくろみであったようだ。

そういった事情で、その2年後に起きたトラキア戦役に投入された私は、想定以上の戦果を挙げ、政府高官の喜憂きゆうに応える結果になった。


 私としてもウォーロックの位を得る事も、戦場に出る事も、不本意ではなかった。

力を制御する事が出来れば、今度こそ深淵へ辿り着く事が出来ると考えていたためだ。

深淵へと辿り着ければ、顔も知らぬ母に会う事も、私を止めるために命を落とした父を取り戻す事も、私の力の暴走に巻き込まれてしまった街の人々を助ける事も可能だろう。


 そして、トラキア戦役から凱旋した私は、父の所属していた魔術研究機関への入所を志願した――

ご意見、ご感想、評価など頂けたら私の魔力も滾りますので、どうぞよろしくお願い致します!

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