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深淵を知る者  作者: Gary
力の源泉は己の内に
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王女の決意

「そうですか…事情は理解できました。」


 アルテミシア王女は、ニッコリと太陽のような眩しい微笑みを浮かべ、ミラルダ、ミリアム、師匠、そして僕の顔をゆっくりと見渡す。


「私に可能な限り彼を保護する事を約束します。ですが、残念ながら安全は保障できません…。」


「と、言うと?」


 陰りを見せる王女の笑顔を見て、師匠は真剣な表情で王女に問いを投げかける。


「私から説明させて頂きます。」


 王女の苦しそうな表情を見て心苦しく思ったのか、ミラルダが王国の、そして王女の置かれている現状を語りだした。


「数か月前から国王陛下が病床びょうしょうせられておられる。神官殿の見立てでは余命幾何よめいいくばくか…という話だ。この事は国内に混乱を招くため、口外厳禁だ。」


 沈黙…王女はうつむき、師匠は目を閉じ無言でミラルダの話に耳を傾けている。


「そこで下卑げびた話だが、次期国王の継承問題に宮廷内は混乱している。というのも、国王陛下は未だ次期国王を決めあぐねておられるのだ…。」


 ミラルダいわく、長兄のバラン王子は王国の軍事力の実権を握り、その矛先をサンドラ帝国に向けているという。

猛々しく好戦的な彼が国王の座を得た暁には、王国中を戦乱の渦に巻き込む暗黒の時代が訪れるだろう。


 そして、次兄のルイス王子は王国内の内政を掌握しょうあくし、私利私欲で国民に悪政を強いるばかりか、隣国フェニキアとの後ろ暗いつながりや、闇の組織との癒着ゆちゃくうわさされている。


 そして最後にアルテミシア王女。

彼女は国民からの支持が高いながらも、国内の実権を何一つ持っていない。

国王陛下もアルテミシア王女に次期国王の座を継がせたいと考えているらしいが、アルフォード王国の長い歴史の中で女性が王になった事など前例がなく、貴族や重臣達の反感を押し切る事が出来ずにいるようだ。


「私達は恒例の外交政策という名目で、聖教国ハイネシアに使節団として派遣され、完全に継承争いから蚊帳かやの外になっている。」


「ルイス王子の策略か…とすると、今回の暗殺騒動の黒幕もルイス王子で間違いないな…。」


「その通りだ…。そうなると、例え王都内であっても安全とは言えない。」


「王国の実権を握るためならば、実の妹の命もいとわないか…。」


「哀しい話だが、権力の毒とはそういう物だろう…。」


「で?オマエ達はこの先どうするつもりなんだ?」


「聖教国ハイネシアへの亡命…それが我々近衛騎士団の総意なんだが…。」


 そう言って、ミラルダは真剣な表情でアルテミシア王女を見詰めた。


「それは出来ません!民を見捨てて私だけが逃げおおせるなど、王族としてあるまじき行為です!」


「アルテミシア様は実の兄弟と戦うと?」


「…戦いは望んでおりません。ですが、このままでは、お兄様達が争い、国が割れ、多くの民が犠牲になってしまいます!」


「戦わずに争いを収めると?」


「はい…」


「甘ったれてんじゃねー…」


 そのあまりに不敬な物言いに近衛兵の二人は、師匠を睨みつける。


「戦わずに争いを収めるだと?もう戦いは始まってんだ!民のために戦うか、自分のために逃げるか、それしかねーんだ!」


「私は…」


「友として言わせてもらう、オマエがどんな決断をしたにせよ、誰にも文句は言わせねー。文句を言うヤツは私が力ずくで捻じ伏せてやる!だがな、オマエは逃げねー、逃げるような女じゃねー!」


「逃げない…」


「そうだ、困ってるヤツがいれば必ず助ける。それが例え民百姓であっても、下賤げせんやからであっても、オマエは必ず助ける。それがオマエだ。私はそんなオマエだからこそ信じられる、命を賭して戦う事が出来る!」


「それは我々とて同じ事です!」


「私は…私は、逃げません!」


「そうだ、それで良い。」


「あの時のように、また私に力を貸して頂けますか?」


「ああ、望むところだ!」


 こうして、僕達は王国の継承権争いに巻き込まれて行くのだった――

ご意見、ご感想、評価など頂けたら私の魔力も滾りますので、どうぞよろしくお願い致します!

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