最強たる者の力
5年前、およそ20年ぶりのウォーロックが誕生した事で、王都のみならず、王国中の国民が歓喜した。
学院入学前、当時12歳だった僕も覚えている。
しかし、その2年後…新たなウォーロックの誕生で近隣諸国との緊張が高まり、遂にトラキア公国との戦争が勃発した事も記憶に新しい。
ウォーロックという存在は、王国の魔法の象徴というだけでなく、存在そのものが強力な軍事力として近隣諸国に影響を与えるものだ。
そもそもウォーロックとは、王国の軍事力を世界に知らしめ、抑止力としての力を誇示するために作られた階級である。
それによって戦争が起こるとは、本末転倒な話だが、それほどに近隣諸国から畏怖される存在という事になる。
その王国最強の力を持つ魔術師が、目の前に立っている。
24代目ウォーロック、神炎の二つ名を与えられた彼女は、右手を天高く掲げ、術式の構築を始めた。
師匠に敵対する4人も、それに合わせ行動を開始する。
彼らはやはり、ブレアの大地の槍撃を起点とした連携攻撃で攻めて来るつもりのようだ。
僕は先程、行動の読めなかったザレン教授の一挙手一投足に注視する。
彼もやはり、タトゥーを使った瞬間魔法ではなく、術式を構築しているようだ。
僕の位置からでは遠く、判別が難しいが、風の力を宿している。
「真空…しかも複数?…探知系…天然ガスを取り込んでいる!?」
不味い、ザレン教授は大地の槍撃により発生した天然ガスを真空で包み込み、一点に集めて、リカルドの炎の礫に合わせて天然ガスを一気に解放し、爆発を引き起こしているのだ。
それに気付いた時には既に遅く、大地の牙が師匠を襲った。
リザの氷の吐息に足を拘束されながらも、師匠は展開した術式を発動する。
「高圧爆風竜巻魔法!!」
先程と同じ暴風魔法…しかし発動地点がずれている。
激しい暴風は大地の牙と氷の拘束を砕き、師匠自身も大きく風に飛ばされた。
これは…故意に飛ばされたのか?
彼女は真っ直ぐにブレアの方へと吹き飛んで行く。
その手には高速で術式が展開されている。
「高圧爆縮火炎魔法!!」
師匠の放った爆炎魔法がブレアに直撃し、同時に師匠を追っていた天然ガスに引火し、凄まじい爆発を引き起こす。
無防備だったブレアは、四肢が引き千切れ、断末魔の叫びも上げる事無く、大量の血を撒き散らしながら絶命する。
師匠の攻撃はそれだけでは終わらず、天然ガスの爆風に吹き飛ばされた勢いに乗って、リカルドの頬に拳を叩き込む。
リカルドは血反吐を吐きながら、数メートル先の木に激突し、ズルリと地面に倒れ込んだ。
死んではいないようだが、完全に意識を失い、暫く起き上がる事は出来ないだろう。
それを証明するように、僕の周りで燃え上がっていた炎の柱は勢いを失い、完全に消滅した。
師匠は呆然と立ち尽くす残された2人に向き直り、ゆっくりと歩き出す。
その瞳は怒りに満ち、恐怖のオーラを身に纏っているようだ。
神話の中から召喚された悪魔のような彼女に迫られたザレンとリザは、恐怖に囚われ、ジリジリと後ずさる。
その時、再び新たなる刺客が、師匠の背後に現れた。
「おいおい、何だこりゃ!?聞いてねぇぞ!」
ボロボロの外套を纏った男が、グチャグチャになって転がるブレアの死体と、師匠の姿を見て驚愕している。
「魔術研究機関どころか、ウォーロックが相手だと!あのタヌキめ、俺をハメやがったな…。報酬は2倍…いや10倍は貰わねぇと割に合わねぇぞ!」
突如現れた謎の男…
自信に満ち溢れた言動から、相当な手練れだと考えられる。
本気を出した師匠と、新たなる刺客の戦いの行方は一体どうなるのだろうか――
ご意見、ご感想、評価など頂けたら私の魔力も滾りますので、どうぞよろしくお願い致します!




