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コンコココン・コンコココン  作者: 萬田ぷぷっぴどぅ


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 コンコココンコンコココン、コンコココンコンコココン。コンコココンコンコココン、コンコココンコンコココン。


 ときどき鳩の鳴き声のようなリズミカルな音が聞こえて来るようになった。かといって動物の鳴き声ではない。何かを叩くような、小さいものがぶつかるような、そんな音だった。


 娘がお茶碗でも叩いているのかと思った。お行儀悪いよと注意したら、なにもしてないもんと不貞腐れた。


 夫がテーブルを叩いているのかと思った。機嫌でも悪いのかと思ったが、いつもと変わらない顔をしてテレビを観ていた。


 ごくごく小さな音だった。乾いた硬いものを叩く小さな音。


 鳥が外から窓を叩いているのかと思ったが、そんな影は見えない。人が近づけば逃げるのかと思って慎重に何度も覗きに行ったが、台所の小窓に鳥が来ている気配はなかった。


 もしかしたら虫か何かがどこかに入り込んでもがいているのかも。ゴキブリだったらと思うとぞっとしたが、あの害虫はカサカサとは鳴れどコンコンという硬い音はたてないはずだ。かといってカブトムシやカミキリムシのような少し大きめの虫を想像しても鳥肌は立つ。なんにしても放っておけばそのうち死ぬだろうと思っていたのだが、何日経ってもそのコンコココンという音は止まなかった。


 コンコココンコンコココン、コンコココンコンコココン。


 リズムはいつも決まっていた。一音も外れることなく、毎回おんなじ音階を奏でる。


 動物ではなく、家の中の何かが振動で揺れてぶつかっているのだろうか。


 だが家のなかでそんなに振動を感じる場所は無い。あるとすれば洗濯機か冷蔵庫。だが洗濯機を回していない時間でも突然コンコココンという音はなり始める。だとすれば冷蔵庫。


 冷蔵庫の上には何も置いていない。もしかして知らない間に娘が何か乗せたのだろうかと椅子に乗って見てみたが、やはり何も無かった。


 冷蔵庫の中を確認するが、コンコココンなどと音の鳴りそうなものは入っていない。ジャムの瓶も、作り置きのお総菜を入れたタッパも、夕飯を仕込んだ耐熱皿も、どれもコンコンというあの軽い硬い音とは少し違う。


 冷蔵庫の裏に何か入り込んでいるのだろうかと隙間を覗いてみる。暗くてよく見えないが埃以外何もないような気がする。隙間用のモップで裏も下の隙間も掃除をしてみたが、やはり埃と、娘が無くしたと騒いでいたビーズ以外何も出て来なかった。


 冷蔵庫のブーンという音が鳴っても、それに合わせて何かが振動することも無かった。


 テレビの裏も、エアコンの周りも、食器棚の中も掃除したが、それでもコンコココンコンコココンという音は鳴り続けた。


 不思議なのは夫と娘には聞こえていない事だった。


 最初のうち「聞こえないよ」「気のせいじゃない?」と言っていた夫と娘も、音が鳴るたび発生源を探そうとする私の姿を訝し気な目で見るようになってきた。


 耳鳴りなのか幻聴なのか。そう言われればそうのような気もする。仕事も家事も娘のことも最近根を詰め過ぎていたのかもしれない。少し休んだ方がいいかもと思っていると、やっぱりそれは聞こえてくる。


 コンコココンコンコココン、コンコココンコンコココン。


 そしてそれは台所の方から。


 コンコココンコンコココン、コンコココンコンコココン。


 いや、リビング?


 寝室や浴室ではない。決まって、台所かリビングにいるときだ。台所に立っているときか、テーブルについているとき。


 もしかして、とカウンターの上を見る。天使の羽の絵が描かれた赤い卵がぴくりと揺れた。


 

 コンコココンコンコココン、コンコココンコンコココン。



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