別れと出逢い
ケルベロスのHPバーは残りが赤く変わった
つまり残りが25%をきったということだ
大体のボスはここで大技を出してくる
「全員後退!攻撃に備えろ!」
ウィドが指示を出す
それと同時に後衛が魔法障壁を出現させる
『よくもここまで俺にダメージを与えたな。だがこれで終わりにしてくれるわ!』
残った真ん中の頭に加え尻尾の蛇が炎を吐き出す
今度は弾ではなく照射型だ
このままだと障壁がやぶられることになる
そんな不安がよぎった
「後衛部隊!エクストラスキルの発動準備!」
エクストラスキルとは銀が紅岩蜘蛛の時に使った火柱と同系列の大技
その代わりに使ったあとMPの回復スピードダウンだったり、行動停止のマイナス効果が付与される
それを半数の後衛で撃つつもりらしいがそれでどうにかできるかどうか怪しいところ・・・・
それぞれが呪文を唱え終わるとウィドの指示を待機
そして一斉攻撃に・・・・・・
「撃てっ!」
指示が出たとたんにケルベロスの足元に多種多様な色の法陣が出現する
してす少し間が空いたと同時に炎の火柱が真っ先にあがる
そして続けて竜巻が起こる
すると炎の勢いが増した
2つの魔法が解ける頃合いになると今度は雷が落ちる
そして氷の柱がケルベロスの動きを止めた
体力はあと1、2%しか残っていない
するとウィドがまた指示を出す
「総員待機!グレイ!あとは任せたぞ!」
あいつ、キザなことしやがって・・・
だがてっちゃんの仇だ
遠慮なくやらせてもらう
構えをとり相棒に対して集中する
心を落ち着かせ、呼吸を合わせる
「今だ!」
何回も一人で練習した
ここで失敗するわけにはいかない
鬼剣専用スキル
【鬼神演舞】
相棒を両手で左下に下ろした状態でケルベロスに駆け寄る
そのまますれ違い様に斬りつけ体を反転させ武器を思いきり振りかぶる
そのまま武器の重さを利用し斬り抜け一旦地面に足をつける
次は相棒を横回転でケルベロスの頭を狙い投げつけると同時に走り出す
あとは突き刺さった相棒をつかみ横を真っ二つに切り裂いた
ケルベロスHPゲージが空になる
氷の柱が砕けケルベロスが足から崩れ落ちる
『中々やるではないか、小さき者共よ。だが浮かれるな!この先に待ち受けるは我より強き猛者どもだ。精々死なぬよう足掻くのだな・・・・・』
黒い霧に包まれゆっくりと消滅していった
フィールドにダンジョンクリアの表記がでると歓声が沸き上がる
でも・・・・・俺の心のなかは暗く濁っている・・・・
てっちゃんはもうこの世にいない
そう思うと自分のなかでなにかが崩れていく
形を成していたものが消えそこには大きな穴が開いた
俺はなにも言わずダンジョンを抜けて地上へ戻ろうとしたとき、誰かに袖を引っ張られた
後ろを軽く見ると俺が助けたローをき着た小柄なやつが立っていた
「俺に何か用か?何もないなら構わないでくれ」
するとぼそぼそと何かを言っている
聞こえない振りをして帰ろうとするとハッキリとした声で呼び止められた
「待って、お願いだから待って!」
きれいに透き通ったこの声はどう考えても女だった
何故制圧部隊の前衛に女が?
どんな理由があろうとウィドなら後衛にさせるはずだ
「なんで女が制圧部隊の前衛にいたんだ」
自然と声が強くなる
こいつがいなければもしかすればてっちゃんを助けられたかも・・・・
そんな思いが浮き上がる
「なんでって・・・・私も力になりたかったから・・・・。最初の制圧戦でね・・・・大事な友達と参加したの・・・・」
仇討ちか・・・・
それは前衛に出なきゃチャンスは中々来ないだろうな
「私とその娘は後衛にいたんだけど敵の軍団に囲まれちゃって・・・・。私達レベルが少し低かったからうまく抜けられなくて・・・・それで・・・」
聞いてるこっちの身にもなってほしい・・・
そんなことを言われてもどうにもできない
俺だって同じ境遇に立たされている一人だ
「その娘が敵を引き受けて君は逃げたと。そういうことだろ?俺は残念ながら励ましてやれるほど心に余裕は無い。それにそうなった理由は君たちにあるはずだ。かわいそうとは思うが他の男を当たってくれ」
気分がどんどん沈んでいく・・・
こんなこと言ったっててっちゃんは帰ってこないのに・・・
「違うの!あなたはきっと自分を攻めてる!あたしもそうだったの!でもそんなことをしたって自分がどんどん辛くなるだけ!なにも変わらないの・・・だから」
「だからなんだよ!お前は死んだ奴を生き返らせることでもできるのか!?いちいち説教みたいな真似してよ!そういうの要らないんだよ!」
イライラが押さえきれず当たり散らす
そんな自分を考えると余計に頭にきてしまう
びびらせて帰らせるつもりでダガーを投げると頬を掠めローブの耐久値がなくなり砕ける
女の顔がはっきりと見える
「なんでお前が泣いてんだよ・・・・。泣きたいのは俺だって同じだ!余計なお節介ばっかしやがってよ!・・・・・くそっ!」
膝をつき地面を思いきり殴る
手には血が滲みズキズキと痛む
もう開いた穴を埋めるものは何もない
開いたところからどんどん他のものまで崩れていく・・・
自分という名の心までも・・・・
いつの間にか女に肩を支えられていた
「もう放っといてくれ・・・・・。頼むから俺に構うな・・・・」
俺に触れる手を払いのける気力すら残っていない
絶望と呼ぶのにはふさわしいだろう・・・
「自分を攻めないで・・・。私を攻めることであなたが傷つかないのなら私はそれを受け止める。私もね、最初はずっと自分を攻めてたの・・・・けどそんなことをしていてもなにも変わらなかった。だからね、本当は今日ここに死ぬつもりできてたの・・・・・・。死ぬんだったらできるだけ近いところで同じようにって・・・・・」
女が泣いてることがわかる
俺の肩に触れてる手には涙が落ちてきていた
「でもいざ敵を前にするとね、悔しかった。せめて仇をとってから死んでやろうって・・・・・。だから顔を隠して前衛に潜り込んだんだ・・・・。私じゃできないことなんて心のどこかで分かってたのに・・・・。それでも、それでもね。どうしても諦めたくなかったの・・・・そしたら攻撃を受けて体が動かなくなって・・・・」
それであそこで倒れてたのか・・・
そのせいでてっちゃんは・・・・
「私ここで死ぬんだなって思ったら涙が出てきちゃって・・・・そしたらあなたが助けてくれた。すごいほっとした自分がいたのに対してそれを許せない自分もいたの。仇をとることすらできないのかって・・・・なんであのときいっしょに残って戦わなかったんだろうって、そしたら君が叫んでる声が聞こえたの。そのあとの話も聞こえててね」
確かに近くにいた
聞きたくなくても聞こえる距離だっただろう
「私と同じなんだって・・・・このままじゃ私を助けてくれた人がそのせいで自分を攻めるんだろうって思ったら我慢できなくて・・・・。それで今ここにいるの・・・・。ほんとにいい迷惑だよね、君からしたら」
そうだ、そうだよ
こいつのせいでてっちゃんは死んだんだ
だとたらこいつを殺して俺も・・・・・
そう思った時にはすでに武器を構えていた
「だったら・・・・・だったらお前を殺して俺も死ぬ!それで終わりにしてやる。それでもいいってことだろ?それなら俺はそうする・・・・」
長剣を振り上げた
あとは重さに任せて降り下ろせば死ぬだろう
意を決して腕から力を抜いた
「ハル !やめて!」
銀の声が聞こえたと思ったら俺の持っていた長剣が吹き飛ばされた
武器を持っていた右手が痛む
そして今しようとしてたことを考えると急に怖くなった
「間に合ってよかった・・・・バカっ!」
銀は俺の顔を思いきり殴り倒した
倒れた俺の胸ぐらをつかんで怒鳴った
「なんであの人を攻めるんだよ!あの人はなにも悪くない!ハルだって悪くないんだ!てっちゃんが最後なにしたか思い出してよ!ハルと同じことをしたんだよ・・・・」
そうだ
俺は他の人を死なせたくないって必死であの娘を・・・・
「ハルが今やろうとしたことは殺人なんだ!あそこでもし僕が間に合って無ければハルはもっと辛い思いをしてたんだよ・・・」
思い返すとまた自分が壊れ始める
なんであんなことを、どうしてあの人を殺そうとって・・・・
自分を攻め続けることで自分を壊している
「こんな風にいっちゃいけないんだけどさ。しょうがないんだよ、僕たちじゃどうしようもなかったんだ。ただひとつ言えるのはてっちゃんは最後まで自分のことだけじゃなく他の人のことを助けた優しいいつものてっちゃんだったんだ!」
今までの生活の中で思い出される日々
なにか困っていればすぐに相談に乗ってくれた
俺が何か頼むと喜んで手伝ってくれた
いつも俺や銀のことを考えていち早く気づいてくれたのはてっちゃんだった
「お、俺、俺は・・・・・・なんで・・・・・・」
涙が止まらない
もう、てっちゃんはいないんだ
「ごめんなさい・・・・。俺、どうかしてました。あなたを攻めてもなにも変わらない。本当にごめんなさい」
俺を追いかけてきた女性に謝る
俺は最低なことをしていた
銀が来なければ今頃・・・・・
「気にしないでね・・・・・。私もやけになってたし・・・。もしよかったらこれから先戦いかたを教えてもらえませんか?」
まさかの相談に一瞬固まる
・・・・・・何て言った?
「え?一緒に行動するってこと??あれ?え?ん?」
連続で起きるトラブルに俺の頭はもうついていけなくなった
心も沈んでる上に殴られて泣いて・・・・
もう訳がわからない
「えっと、とりあえずフレンド申請だけ僕の方にしといてもらえますか?ハル・・・・じゃなかった。ファントムも色々ありすぎて疲れてるんで・・・・。ガーリンドで探してもらえば見つかるはずです。種族は龍族です」
俺は気が動転したまま銀に連れられて冥界から出た




