冥界の番犬と砕けた歯車
2時間ほど仮眠をしたあと俺はまたアフィナの店を訪れた
情報屋として活用させてもらう
「いらっしゃい・・・・て、なんだファントムじゃん」
なんだってどういうことだよ
客に対してそれは言ったらダメだろ
「情報屋のアフィナに用があってな。要件なんだが冥界についてだ」
俺らが参加するのは三ヶ所目だ
ある程度ならボスも予測できる
モンスターに対して無知で挑めば痛い目を見る
つい少し前の対紅岩蜘蛛のように・・・・・・・
「あーそういうことね。3回目ってのは事実。ダンジョンもたしかに2つクリアしてるけど今度からが本格的に始まるっぽいんだよね。これまでのダンジョンは大群戦闘だったらしいんだけど、今回はダンジョンの作りが違うらしいの。入り口は大きな門になっていて城壁みたいになってるんだって。」
城壁・・・・・・つまりこれからが本番だってことか
冥界の入り口と言えば出てくるのは確実にケルベロスだ
「だからみんな次はケルベロスだって噂してるよ。城に乗り込んでからは多分大型ボスとの戦闘が基本になるだろうって。だから今回から制圧部隊の集まりが少し悪いみたい。けど前回参加したランカーの人たちはみんな行くんだって」
そりゃ行かない訳がない
もしかしたらZ級のドロップがあるかもしれない
それなのに大人しくしてる奴なんてランカーになんかなれねぇよ
「なるぼどねぇ~。今回はちょっときついかもしれないな」
これは本心で人が減ればそれだけ時間ごとの平均ダメージが確実に下がる
そうなるとじり貧になるのはプレイヤー側だ
こっちは自分達の体力と相談しながら戦ってんだからな
「それがそうでも無いらしいんだよね。今回初参加のチームがあるんだけどそのなかに元ランカーがいてたしか名前が・・・・・そうだ!ライオネル!元7位のランカーだよ」
あいつか・・・・好きじゃないんだよな
すっげぇ馴れ馴れしいし軽く叩いてるつもりなんだろうけどメチャクチャ痛いし・・・・・
実力はたしかなんだけどね
「すごいな。それなら余裕じゃないか?俺は死にそうで怖いけどね」
実際のところ全然怖くない
というか普通に考えてそれだけのメンツが揃えば余裕過ぎる
「だよねぇー。今回は私も参加しようか考えたんだけどやめちゃった。自分の腕の無さがわかっちゃうと傷つくしね。そういえばファントム今日は武器身に付けてるんだね。なにを使ってるの?」
まずい・・・・ローブ着てるから透明化解いたまんまだった
うまく話をそらさないと・・・
「あー、これ?大したもんじゃないよ。ただの両手剣のC級武器だよ。今日はありがとう!俺はこれで帰るよ。明日の準備しないとだし」
早く帰ろう
出ないとこっちが色々と危なくなりそうだ
俺は手を振りそのままの勢いで店をあとにした
「あっぶねぇー・・・・・」
明日の制圧部隊の集合時間まで宿屋でアイテム整理してよ
俺は重たい足取りで宿屋へ向かった
冥界フィールド第三ダンジョン入り口 11月13日 午後6時50分
暗黒城 城門前
「すっげぇ!有名な人ばっかじゃん!」
つくやいなやてっちゃんは目をキラキラさせている
いつも一緒にいる俺も実は有名プレイヤーなんだけどね
俺は他のやつらに気づかれたくないためローブを深く被ってなるべく目立たないようにしている
「あんまはしゃぐと追い出されるぞ」
てっちゃんはその一言で静になり大人しくなった
まったく単純なんだから・・・・
すると集団の最前線で2人の男が出てきた
右にいるのがウィドで、左がハーメルンっていうやつだろう
ハーメルンの方は忍者のようなマスクをしていて装備はかなりのスピード重視
その分一発をもらうとかなり辛いだろう
ウィドは相変わらずの槍と盾
安定感重視の装備だな
「みんな!今日は集まってくれてありがとう!これより第三ダンジョンに進行する。死者が出るかもしれない!だが、それを越えてでも俺達は先へ進まなければならない!力を貸してくれ!」
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉ!」」」」」」
周りのやつらの気合いが伝わってくる
これはウィドの信頼できる人望によるもんだろうな
さすがとしか言えない
「てっちゃん、銀・・・・・・ぜってぇ死ぬんじゃねぇぞ」
2人はこっちを向いて言った
「「当たり前だ!」」
そして前衛を勤める俺とてっちゃんは前の方へ
銀は後衛に下がってる
お願いだから人とも死なないでくれ・・・・
ウィドが門を開けた
俺たちは中へ入っていく
すると壁に設置されている松明に紫色の火が灯る
「嘘だろ・・・・・でかすぎる。」
俺のレベルは今48
あとの2人は46だ
俺はウィドと同じレベルまでどうにか追い付いた
けど、これは耐えれるかわからない
『グルルルルルルッ・・・・・・貴様らさては魔王様の敵だな!ここで葬り去ってくれるわ!』
野太く低い声が反響する
ケルベロスのHPバーが現れる
おい・・・・・長すぎじゃねえか・・・
今まで見たボスの2倍はあるであろうゲージが見える
「全員かかれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
ウィドの号令と共に前衛のやつらが飛びかかる
だがケルベロスだってそう簡単に攻撃はさせてくれない
『調子に乗るな魔王様に仇なすものよ!』
そういうと左右の口から氷と炎のブレスをはく
何人かが受けたようだ
死んでなきゃいいけど・・・・・
「てっちゃん!行くぞ!」
俺達も駆け出す
ケルベロスはダメージを受けていてもまだ10分
1にも届かない
俺はこの間購入したロングソードを取り出す
長剣
【雪乃太刀(ゆきのたち・氷翔丸】
軽すぎるがそれでも無いよりはマシ
一応A級だしな
ケルベロスの凪ぎ払いを飛び越えてかわすと俺は右の顔に斬りかかる
スキルでまずは斬りつける
そこからは通常攻撃と交互に斬りつけて口に氷が見えた瞬間バックステップで距離をとり防御する
それでも3分の1以上は持ってかれた
「フォト・エウロンが無ければきつかったな」
フォト・エウロンとはいわゆるリジェネと同じ効果だ
常時回復が一定時間続くから掛けといてもらえると便利
「呪文よぉぉおおぉおぉい、うてぇぇぇぇっ!」
掛け声と共に後ろから呪文の嵐がケルベロスに襲いかかる
「前衛も進めぇぇぇー!」
ウィドの声で再び士気があがる
時間が過ぎていく感覚は消えて目の前の敵に集中する
すべての意識を敵に向け、ひたすら攻撃と回避を繰り返す
すると近くで倒れてる人が視界に入る
まずい!あのままだとやられる!
攻撃をやめ近づき抱えて一旦下がる
後衛のやつに預けて戻ろうとしたその時だった
『よくもここまでこけにしてくれたな!塵にしてやる!』
その声が聞こえたときには大きな火の玉が3方向に向けて放たれた
その射線上にいたのは・・・・てっちゃん!
「にげろぉおおぉぉぉ!てっちゃぁぁぁぁぁん!」
声は届いたはずだが他の人を先に逃がしている
てっちゃんは俺をを見ると聞こえはしなかったがなにかを俺に伝えようとしていた
[銀や、他のやつらのこと頼んだぞ!生きて帰れよ!]
口の動き方でそう聞こえた気がした
最後に俺の方を見ていつもの笑顔を見せると炎の中へ消えていった・・・・・・
「て、てっ・・・・ちゃ・・・ん・・・・嘘だろ・・・」
炎が消えてすぐ駆け寄ったが、なにも跡形も残っていなかった
なんで、なんでてっちゃんがこんなとこで死ななきゃなんねぇんだよ!
「なんでだよ・・・・なんでこんなことに・・・・・」
俺は持っていた武器を捨てると背にしょっている相棒を掴んだ
「ぜっだいに・・・・がだ・・・ぎを・・どっでやる・・・・・がらなッ"!!!」
背中からはずし片手で構える
クズモは希望通りの形に作ってくれてあった
いままで使ったのは一人と試し切りしたときだけ
持ち手は黒い皮で巻かれていて柄になる部分はつぶれた逆三角形をしている
強度の確保のためか刃の背の部分には蒼い鉄のような素材で覆ってある
持ち手に近いとこになると白銀石で留め具が三ヶ所ほどついている
その三点の真ん中に妖朱玉がきれいに磨かれはめ込まれていた
そして背を覆っている蒼い鉄の部分には
【鬼】
の字が彫ってあった
「ケルベロス!てめぇはぜってぇ俺が!この場で殺してやる!」
俺の言葉に反応したかのように鬼の字がうっすら輝きを放つ
『やれるものならやってみろ!貴様も塵にしてくれるわ!』
そう言うと右の頭が炎を吐こうとする
「その頭たたっきってやるよっ!」
頭のHPはあと少ししかなかった
あれなら削りきれる
武器を構えたまま高く飛びそのまま斬りかかる
鬼剣専用スキル
【鉄斬豪殺】
横に一閃するとそのまま背を下に持ち上げそのまま振り下ろし力任せに殴る
そのまま殴った反動で上にまた飛び上がる
鬼剣専用スキル
【雷落とし(いかづちおとし)】
剣を下に向けそのまま力任せに頭を貫いた
右の頭は悲鳴をあげると砕け散る
次は左の頭を消してやる!
だがケルベロスは何もしないわけがない
壁が崩れるような遠吠えをすると真ん中の頭が俺の方を向く
今度は紫色の炎を吐くつもりだ
だったら・・・・・
俺は真ん中の頭の鼻を思いっきり踏み切ると
そのまま左の首を切り落とす
ケルベロスの体力はあとわずかになっていた
『よくも俺の兄弟を!!!』
首にに繋がっていた鎖を力任せに引きちぎると上へ飛び上がりやがった
俺にめがけて飛びかかってきた
避けようとするが動きが早く風圧こ転がされる
俺の体を前足で思いきり踏みつける
「グッ・・・・・かはっ!」
呼吸ができない
衝撃で脳が揺れたのか焦点がぶれる
意識が朦朧としている頭が思い出すのは3人で遊んだ記憶だった
てっちゃん・・・・・ごめん・・・
死を覚悟したその時
「その手をどけろおぉぉぉおぉぉおぉ!」
後ろの方からすさまじい音と共に巨大な瓦礫が飛んできた
ケルベロスはそれを噛み砕くがそれに続いて氷の礫が飛んでくる
俺を踏みつけていた足が遠ざかっていく
「ハル!こっちに来て!」
今度は銀の声が聞こえた
俺を抱き起こすと後ろの方へ担いでいく
「銀・・・・放せ・・・・あいつを・・・殺さねぇと・・・・」
声を出すだけで体に激痛が走る
途切れ途切れになんとかしゃべれた
「バカを言わないで!ハルまで死んだら意味がないよ!僕も見てたよ・・・・てっちゃんの最後・・・・。他の人を逃がすために自分が犠牲になったんだ・・・・」
何故てっちゃんはあのとき逃げれたのに逃げなかったのか
なんで自分の命より他の人の命を助けたのか・・・・
「ハルなにか最後言われてたよね!死んでくれって言われたの!?違うでしょ!」
そうだった・・・
銀や他の人を頼むって・・・・
死ぬなよって・・・・
俺は気づくと号泣していた
「俺・・・・死ぬなって・・・・言われて・・・・・最後あいづ・・・・・笑顔でごっぢみやがっだ・・・・」
あんな時になんで俺に笑いかけたのか・・・・
なんでだよ・・・・
「だったらいかせられない!僕だってハルに死んでほしくないんだよ!なんでそうやって1人でどうにかしようとするのさ・・・・。僕を頼ってよ!仲間だろ!」
銀も泣いている
泣かないわけがない
てっちゃんが死んだんだから・・・・
「おい、グレイだろ。お前。」
さっき瓦礫が飛んできたときと同じ声が聞こえた
ライオネルだった
「名前が変わっても性格は変わってねぇな。1人であれだけやれるのはお前かカケルしかいねぇからな」
俺を見下ろして淡々と喋る
皮肉でもいいに来たのか?
「だった・・・らなん・・・だよ・・・」
周りのやつらが回復呪文とマイナス効果を消す呪文を唱えてるが中々回復しきらない
「さっき死んだやつに頼まれ事をされたってやつがいてな。ほら早くこい。ここだって安全てわけじゃねぇんだ」
するとてっちゃんが最後に助けていた男が俺の前に来た
「さっきギリギリのところで助けてくれた奴にお前に渡してくれって頼まれたものがあってさ。これなんだけど・・・・・」
渡されたのは一枚の写真アイテムだった
それは俺たち3人が揃ったとき一番最初に撮った写真だ
「ちゃんと約束は守った。お礼すら言えなかったからこのぐらいはしないと俺も悔しくて立ち直れねぇよ。俺のせいで君の大切な友人を・・・・・本当にすまなかった・・・・」
友達でもないのにこの男は泣いている
てっちゃんが守りたかったのって命じゃなくてこの人と、その周りの人たちの未来だったのかな・・・・・・
俺の体も直ったところで立ち上がる
「謝らないで下さい。謝られたらてっちゃん・・・・テツマが助けたことを否定するみたいだから・・・。その代わり死なないで下さい。それだけです」
俺はそういうとまたケルベロスの元へ足を向ける
今もなお戦っている人がいるんだ
一刻も早く終わらせるんだ
「待てよグレイ」
ライオネルが引き留めてきた
「今はグレイじゃない。ファントムだ。それにお前のことを気にしてるほど今は余裕がない」
おれの肩をつかむ手を払いのける
「死ぬなよ。ファントム!」
そういうとライオネルは前線へ消えていった
「ハル、わかってると思うけど死んだらすべて意味がなくなるからね。生きて帰ろ・・・・」
銀がここまで強く見えたのは初めてだった
「わかってる。もう無茶なことはしないよ」
俺はケルベロスを殺すために・・・てっちゃんの仇をとるために前線へ舞い戻る




