哀れな中年と「定休日の罠」
タカシさんはまたしてもコーヒーをほんの少しシャツにこぼしてしまいました。
「もしかして、このシャツはシミを引き寄せる魔法がかかってるんじゃないか」
と軽く自分に突っ込みを入れつつ、もう慣れた手つきでシャツを脱ぎ、クリーニング店へ向かいます。
店に着くと、目の前に掛けられた「本日定休日」の札が目に飛び込んできました。タカシさんは一瞬固まりました。
「いやいや、なんでよりによって今日なんだよ!」
と心の中で叫びながら、クリーニング店のガラスドアを軽く押してみます。当然ながらビクともしません。
店内は薄暗く、カウンターの奥にいつもの無口な店主の姿もありません。
「今日の俺の運命ってこういう感じか」
とため息をつき、シャツを手に持ったまま立ち尽くすタカシさん。その後、ふと思い付きます。
「洗濯機で自分でやっちゃうか…いや、でもシミ抜きは難しいよな」
と葛藤が始まりつつ、自宅へと歩き出しました。
帰宅後、タカシさんはシャツを洗濯機に入れるべきかどうかをじっくり考えましたが、
「まぁ、今日はもうこれでいいや」
とシャツを椅子の背もたれにかけてコーヒーを飲み直します。そして、そのコーヒーを飲みながら
「次こそこぼさない」
と決意を新たにするのでした。
翌日、店が営業再開した際には、少し遅れてシャツを持ち込んだタカシさん。
「またですか?」
と無口な店主に一言言われましたが、もう気にすることもなくシャツを預ける姿は、一種の悟りの境地に達しているようにも見えました。




