哀れな中年と「シミの呪い」
「まただよ、もう呪われてるとしか思えない!」
タカシさんは、またしてもお気に入りのシャツにコーヒーを少しだけこぼしてしまい、うんざりした顔でクリーニング店のドアを押しました。店内に入ると、いつもの無口な店主がカウンター越しに立っています。
「…また同じシャツですか?」
と店主が淡々と尋ねます。
「ええ、そうです」
とタカシさん。
「そろそろこのシャツが生き物に変身して、シミの主張を始めるんじゃないかって思うくらいなんですけどね!」
と、半ば冗談でぼやきます。
店主は特に笑うこともなく、
「やってみます」
と短く返し、シャツを受け取ります。そのプロフェッショナルな対応に対して、タカシさんは逆に
「(なんでこんなに平然としてられるんだ)」
と心の中でツッコみます。
数日後、シャツを受け取りに行ったタカシさん。期待半分、不安半分で袋を開けると、微妙に残ったシミがニヤリと自分を見ているように見えました。
「もう笑うしかないな」
と、自虐的に笑いながらタカシさんはシャツを広げます。
店主に
「これ、もう新しいデザインに昇格できるんじゃないですかね?」
と皮肉を込めて言うと、店主は一言。
「そうですね」
とだけ答えました。このシンプルすぎる応答に、タカシさんは
「この店主、実はロボットなんじゃないか?」
と本気で疑い始めます。
家に帰ったタカシさんはシャツを鏡の前で眺めながら、
「次こそ、こぼさない。次こそ…」
と心に誓うも、その決意が功を奏するか、誰にもわからないのでした。




