哀れな中年と「ソースのしぶき」
週末の午後、タカシさんは友人とバーベキューパーティーに参加することになりました。
「今日は絶対にこぼさない」
と決意しながら、お気に入りのシャツを選び、慎重に会場へ向かいます。到着後、みんなが焼き上がった肉や野菜を嬉しそうに食べている中、タカシさんも恐る恐るプレートを手に取りました。
仲間が盛り上がる中、タカシさんはバーベキューソースのついたチキンを掴んで一口。その瞬間、予想外の出来事が…!チキンにかけられていたソースが、思いがけない方向にしぶきを飛ばし、シャツの袖にほんの少しだけ着地。
「何で……?」
とタカシさんは呆然とするものの、誰にも気づかれないようそっとナプキンで拭き取ります。
家に帰ったタカシさんは、すぐにシャツを洗濯機に入れるか、クリーニング店に持ち込むべきか葛藤しましたが、最終的に
「自分でやるのは危険だ」
と判断し、翌日に店へ向かいます。いつもの店主は相変わらずの無表情。
「今回は?」
と尋ねられ、タカシさんは
「ソースです…少しだけ」
と説明しました。
「預かります」
という店主の変わらぬ一言を聞きながら、タカシさんはこれまでのすべての『こぼし事件』が頭をよぎり、静かに肩を落とします。
数日後、仕上がったシャツを受け取ったタカシさん。
「どうですか?」
と尋ねると、店主はいつも通り
「少しだけ残っています」
と簡潔に答えます。袋を開けてシャツを見ると、ソースの跡はほぼ分からない程度に薄くなっていました。
「これならまたバーベキューに行けるな」
と心の中で自分を励ましつつ、タカシさんはそっとシャツをバッグにしまいました。




