11話
午後5時15分。
陽が完全に落ちる直前で別荘村まで辿り着くことができた。
足は棒きれのように傷んでいて、一歩踏みしめるごとに骨が軋む感覚がする。
活動限界を悟った僕は自宅に戻り、シャワーを浴びて汗を流していた。どうせなら湯船に浸かっても良かったのだが、湯を貯めるまでの待機時間で寝落ちしてしまいそうだ。朦朧とした意識をどうにか繋ぎ止めながら、お湯を被る。風呂場を出ても筋肉が弛緩しておらず、疲労が抜け切っていない。
やはりお湯を張って湯船に浸かろうかとも思ったが、何をする気も起きないほど頭が静止していた。
早く寝ようと思い布団を広げる。
ふと、床に置かれている弁当箱の方へ目を落とした。外出前と違う位置に置かれている。
「また宝田さんかな?」
そのまま寝てしまおうかと思ったが思い直して弁当箱を開いてみた。
冷凍食品が数点とキッチンで焼いたであろうソーセージに白米。
もはや食欲すら湧かないほど疲れていたが、体は正直なもので一口食べると箸が止まらなくなった。
最後の米粒を口に運び終えると、マットレスを手繰り寄せてそのまま仰向けに倒れて目を閉じた。
急速に奈落の底へ引っ張られているような気がした。到底抗いがたい落下の感覚だった。
とてつもなく疲れただけの一日だったかもしれない。だが収穫はあった。あの宇城みきの片割れとも会うことができたのだし、明日は本物の『宇城みき』と会える。
どんな口上を述べるべきか。第一印象が肝心だ。
さて、何を云うべきか……。
そんな事を考えていると僕の意識は落ちてしまった。
目が覚めると、まず温もりを感じた。狭い部屋で天井の光源が僕を照らし温めている。
重い瞼を持ち上げ見上げると、昔ながらの白色豆電球の灯りがそこにあった。
「あれ狭い……」
足を動かすと壁をけってしまった。大人一人分の体積がどうにか入るかという手狭な空間。僕は上体を起こそうと身を捩り違和感に気付く。
両手足が縛られている。
僕はイモムシのようにうねって坐骨を床に当てると上体を起こした。
頭と電球との距離が近くなり、心地よかった温もりは過剰な熱へと変化する。
朦朧とする頭で白い壁を見回すとようやく確信に至る。
僕は物置に閉じ込められている。否、監禁されている。
「誰かいませんか?」
震える声で扉の外へと呼びかける。
反応はない。
声が小さすぎるのだ。声量を上げようと試みるが、震えて声が上がらない。
仕方なく僕は頭を打ち付けることにした。
ごん、ごん、と。側頭部を勢いよく壁に打ち付ける。
「起きたみたいね」
扉越しに冷たい声が聞こえた。覚えがある。つい先程まであっていた子の声音だった。
「本堂さん?ねえここはどこ?なんで僕は縛られて」
「落ち着いて聞いて」
僕の声を断ち切るように本堂さんは短く答えた。
「今朝、宇城みきの遺体が発見されたの。貴方が疑われてる」




