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第25話 クロエは黒だけど、「俺は白だ」

俺はタケシ。

身長180cm、運動もそこそこできる。

勉強もまあまあ。

顔も悪くない。

いや、むしろイケメンだ。

親に感謝だな。


……ただひとつだけ問題がある。


彼女がいない。


だからこそ、今年の夏はデビューする。

そう決めて、ジェシカ、ハル、クロエと海に来た。


最初は「今日は絶対に女の子に声をかける!」と意気込んでいた。

だが、ジェシカを見た瞬間、全部吹き飛んだ。


(今日のジェシカ……なんか、映画のヒロインみたいだな……

俺とジェシカが並んで歩いて……

あ、ジェシカが俺の腕にそっと……

いやいや、落ち着けタケシ……)


気づけば口元がゆるんでいた。


その瞬間——


ガブッ。


「いってぇぇ!! クロエ!? なんで噛むんだよ!!」


クロエが俺の足に噛みついた。

俺はその場で正座して、両手を膝に置く。


反省ポーズ。


「……ごめんなさい」


ジェシカが笑いながら言う。


「タケシくん、何か悪いことしたの?」


ハルも肩をすくめる。


「タケシ、ニヤニヤしてたぞ」


「してない!!」


……と言いながら、

俺の頭の中ではまだ妄想が続いていた。


(いや、でも……俺は純粋なんだ。

この夏で、デビューしたいだけなんだ。

ジェシカと海で……

いや、もしかしたら大人っぽい女性とも……

あ、あの人綺麗……)


視線の先に大人っぽい女性が通りかかった。


(……あの人、絶対優しいタイプだ……

俺が困ってたら「大丈夫?」って声かけてくれて……

そのまま恋が始まって……

いや、これは運命……)


気づけばまた口元がゆるむ。


——その瞬間。


ダッ。


砂を蹴る音。

振り返ると、クロエがこちらをじっと見ていた。


(やばい)


クロエは低く構え、

尻尾をぶんぶん振りながら——


ロックオン。


「ちょ、ちょっと待てクロエ!!

俺はただ……夏デビューをしていないんだ!!

悪気はないんだ!!」


逃げる俺。

追うクロエ。


「ぎゃあああああ!!」


ジェシカは笑い転げ、

ハルは呆れながらも楽しそうだ。


「タケシ、ほんと単純だな」

「タケシくん、わかりやすいよ〜」


「単純じゃない!! 俺は純粋なんだ!!

夢を見てただけなんだ!!」


そう叫んだ瞬間、

クロエが俺のお尻に——


ガブリ。


「ぎゃあああああああ!!

そこはダメぇぇぇ!!」


俺は砂浜に倒れ込み、

クロエが胸の上にちょこんと座る。


「……クロエ、俺、そんなに悪いことした……?」


「タケシは単純。

……だから好き。」


そんな声が聞こえた気がした。


「えっ……」


俺は固まった。


クロエは何も言っていない。


それなのに――


なぜか今だけは分かった。


ジェシカが時々言う、


「クロエは、ちゃんと気持ちを伝えてるよ」


という意味が。


「……お前、今しゃべっただろ」


クロエは満足そうに尻尾を振った。


「ジェシカ! 今の聞いたろ!?」


思わず叫ぶ。


だって――


「えっ……えっ……

す、好きって……えっ……?」


頭が追いつかない。


ジェシカは楽しそうに笑った。


「タケシくん、クロエの“好き”はね、

“扱いやすい”って意味だよ〜?」


ハルも追い打ちをかける。


「タケシは、ペットボトルのように握りやすいからな」


「扱いやすい!」

「ひどい!!

でも……クロエに好きって言われたから……まあいいか!!」


「だけど、クロエ」

「俺の尻を噛むな!」


クロエは満足げに尻尾を振った。


「可愛さに騙されないぞ」

(クロエは黒だ! 俺は白!)


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