第18話 ずっと好きだった。(Season2)
再会(ハルの想い)
成田空港の到着ロビーは、
夕方の光がガラスに反射して、
どこか水面のように揺れて見えた。
ハルは、胸の奥がそわそわするのを抑えられず、
何度も深呼吸をしていた。
けれど、落ち着こうとするほど、
心臓の鼓動は逆に速くなる。
そのとき——
ガラスの向こうに、金色の髪がふわりと揺れた。
ジェシカだった。
ジェシカが歩き出した瞬間、
ハルは自分の心の中に、
“ジェシカのぬくもり”が流れ込んでくるような感覚を覚えた。
(ジェシカも緊張している)
(でも、それ以上に……嬉しそうだ)
ジェシカは、笑おうとして、
でも少しだけためらって、
それでも結局、
昔と同じ柔らかい笑顔を浮かべた。
彼女の歩幅は一定なのに、
心だけが少し前のめりにあるのが見えた。
ハルの手が静かに前へと伸びた。
(大丈夫だよ)
(僕も同じだから)
ジェシカはふと立ち止まり、
ほんの一瞬、目と目があった。
その一瞬で、
ハルは彼女の心の奥に残る“隠しきれない寂しさ”に気づく。
それでも僕は
——また、ここから始めたいと、そう願ってしまう。
その想いが、胸の奥でそっと息をした。
「ジェ……ジェシカ」
名前を呼ぶ声が、
自分でも驚くほど優しくて、
少し震えていた。
ジェシカは、
その声に安心したように、
瞳の奥でハルの姿が少しだけ滲んだ。
「ひさしぶり、ハル」
その言葉の中には、
再会の喜びと、
新たな始まりへの想いが、
静かに、確かに、息づいていた。
空港のざわめきの中で、
二人の間だけ、
ゆっくりとした時間が流れていた。
「ひさしぶり、ハル」
その声を聞いた瞬間、
胸の奥で何かがほどけた。
——帰ってきてくれた。
再会(ジェシカの想い)
到着ロビーの自動ドアが開いた瞬間、
ジェシカは、
胸の奥がふっと軽くなるのを感じた。
長いフライトの疲れよりも、
これから会う“誰か”のことが気になって仕方ない。
人の波の向こうに、
黒髪の遥斗が立っていた。
——ハル?
その名前が心の中で静かに響いたとき、
ジェシカは彼の表情を一瞬で読み取った。
(緊張してる……でも、それだけじゃない)
ハルは、落ち着かない手つきでスマホを握りしめ、
視線を泳がせては、また前を見つめている。
(会いたい気持ちを隠そうとしてる)
(でも隠しきれてない……かわいい)
ジェシカの胸の奥が、
じんわりと温かくなる。
彼の立ち姿は、
どこか頼りなくて、
でもその不器用さが懐かしくて、
……愛おしい。
歩き出すと、
ハルの視線がふっとこちらに向いた。
その瞬間、
ジェシカは彼の心の奥に残る“小さな痛み”を感じた。
その痛みに触れた瞬間、
胸の奥に小さな不安が広がる。
(嬉しいのに……少し怖い)
彼の目は、再会の喜びと、
距離の取り方がわからない戸惑いが混ざっていた。
(離れていても彼の耳が赤いのがわかるわ)
ジェシカは思わず微笑んだ。
(大丈夫よ、ハル。私も同じだから)
近づくほどに、
ハルの鼓動が、わずかに速くなるのがわかる。
あんなに緊張しているのに、
ハルの視線はまっすぐジェシカに向けられていた。
ジェシカは立ち止まり、
ハルは小さく息を吸った。
「ジェ……ジェシカ」
その声は、
震えているのに、
どこまでも優しかった。
ジェシカは、
その声に込められた“想い”を感じ取った。
(会えてよかった。って言ってる)
「ひさしぶり、ハル」
言葉を返した瞬間、
ハルの緊張が、穏やかな眼差しへと変わっていく。
その変化が、
ジェシカには何より嬉しかった。
(ああ……待っていてくれたんだ)
空港のざわめきの中で、
二人の間だけ、
静かで優しい時間へと移り始めていた。
その静けさの中で、
ハルの言葉に触れた瞬間、
ジェシカの胸の奥で、ずっと押し込めていた想いが一気に溢れた。
気づけば、手にしていた荷物をそっと落としていた。
もう、抑えきれなかった。
「……ハル」
呼んだ瞬間、
気づけば荷物を落とし、
ジェシカは駆け出していた。
もう距離なんていらなかった。
ずっと会いたかった。
ただ、それだけだった。




