表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/33

第14話 クロエの本気

——この時は、まだ誰も気づいていない。

夢界の“検知”が、静かに始まっていることを。


その影が、まだ日常の笑いに紛れていたころ——。

あの出来事から、ほんの少し時間が流れた。



テストづけの日から、数日後。


ハルの家に、ジェシカとタケシが遊びに来た。


「クロエ♡ー!ただいまー!」

ジェシカが玄関で声を張る。


……しかし、いつもの“ダダダダッ”が来ない。


「えっ……クロエいないの?」

ジェシカの肩が、しゅんと落ちる。


「今日は静かだね……」

(寂しいわ)


タケシも不思議そうに首をかしげた。


そのとき——

外から、しげるの声が聞こえた。

「ただいまー。クロエ、帰るぞー」


次の瞬間。

ドドドドドドドッ!!!


玄関のドアが開いた瞬間、

クロエが弾丸のように飛び込んできた。


「クロエぇぇぇぇぇ!!!」

ジェシカが両手を広げる。


クロエ、ロックオン。

一直線。

迷いゼロ。

さらに加速。


「きゃあああああああ!!!」

ジェシカは大はしゃぎ。


クロエは全身で喜びをぶつける。

尻尾は高速回転。

鼻はジェシカの顔にツンツンツン。

前足は「抱っこ!」と言わんばかりにバタバタ。


「ちょ、ちょっとクロエ!くすぐったいってばぁぁ!!」

ジェシカは笑いすぎて床に転がる。


その様子を聞きつけたゆきえが、

もうテンション最高潮で飛び出してきた。


「きゃーーー!!

クロエ!

ジェシカちゃん大好きなのねぇぇぇ!!

かわいい〜〜〜!!!」


スマホを構え、

連写、連写、連写。


「ジェシカちゃん、ちょっとそのまま!

クロエ、いい顔してる〜〜!!」


ジェシカは笑いながら必死にクロエを抱え、

クロエはさらにテンションが上がり、

ゆきえは「最高!最高!」と叫び続ける。


しげるも苦笑しながら言う。

「おいおい……クロエ、ハルより喜んでないか?」


ハルは苦笑い。

「……まあ、いつものことだよ」



そして——

タケシだけが、ぽつん。

「……なあ、俺、今日ここに来たよな?」



誰も聞いていない。


「おーい……俺、透明人間じゃないよな……?」


クロエはジェシカにべったり。

ジェシカは笑いすぎて涙目。


ゆきえは写真を撮りながら大騒ぎ。

しげるは「いい絵だなぁ」と満足げ。


ハルはちょっと複雑な笑顔。


タケシだけ、完全に蚊帳の外。


「……帰ろうかな」

タケシが小声でつぶやく。


ハルが肩を叩く。

「タケシ、ドンマイ」


「ドンマイじゃないよ……」

タケシは下を向き、

ほんの一瞬、沈黙が落ちた。


ぽたり、と涙が落ちた。


その瞬間——

クロエの動きが、ぴたりと止まった。


ジェシカの胸の中で、じゃれていたクロエが、

ちらり、とタケシの方を見る。

(……泣いてるの?)


ゆっくりとタケシの前に歩いていった。


タケシが顔を上げるより早く、

クロエはその頬を——

ペロリ。


一度だけ。

短く。


「……えっ」

タケシは固まった。

   ・

   ・

   ・

クロエはもう興味なさそうに

ジェシカの方へ戻ろうとした——が、


タケシは両手を握りしめて叫んだ。

「や、やったぁぁぁぁぁ!!

ジェシカの言っていた、あれだ!

クロエが!俺の顔を!舐めたぁぁぁ!!」



ジェシカが、泣きながら笑い転げる。

「タケシ、それ…それ、義理よ…義理ペロだよ!!」


ゆきえも涙をこらえて大笑い。

「タケシくん、よかったわねぇ〜!

クロエ、優しいからねぇ〜!」


しげるも肩を震わせながら言う。

「タケシ君……僕は好きだよ……」

    ・

    ・

    ・

タケシには、もう何も聞こえない。

涙と笑顔が混ざった顔で叫んだ。


「義理?それがどうした!!

クロエに舐められたら勝ちなんだよ!!」


タケシは、勝ち誇ったように拳を突き上げた。

「わお~~~」


(誰と勝負してるのかな?)


その姿を見て、

ハルは小さくため息をついた。

(……また一人、クロエの虜になった)



タケシの大爆発をよそに、クロエは一瞬、玄関の外を見た。

その瞳の奥に、かすかな歪みがあった。


まるで、遠くの気配を見るかのように。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ