第二十八話 役割と再会
―カッキン・・・カッキン・・・
朝から岩山を砕く音を響かせて、ロランは採掘を続けていた。時折、休憩を挟みながら、毎日の日課となっていた。ゲイルが出発してから五日が過ぎようとしていた。
岩山の鉱石も順調に採掘されていき、岩山にあけた穴は坑道となっていった。ただ、粉砕した岩の集積場が山になり始めていた。
ここ最近は晴れが続き、天気も良く心地の良い気候となっていた。一つ懸念点があるとすれば、川や湖が遠く、一日一回の水汲みからここでの生活は始まる。
ロランはこの土地で作業をしている間は不自由がないように最低限の暮らしを作る必要があると考えていた。いざ、雨が降っても身を守れる家や水の確保、食料調達、生きるために必要な物はすべて用意したい。そんな風に感じていた。
(ゲイル遅いなぁ…まだ帰ってこない…。)
ロランはゲイルの帰りを待ちわびていた。ゲイルと出会ってからこんなに離れることはなかった。段々と不安になってきていた。と、その時、交易町サイナス方面から歩いてくる人が見えた。ただ、まだ遠くてはっきりとは見えなかった。ロランは採掘の手を止め、凝視していた。どんどん近付いて来る。紛れもなくゲイルだった。荷車を引いて、ロランの方に歩いてきた。
「ゲイル!おかえり!無事でよかった…。」
「おぅ、ただいま!」
二人は再会を喜んでいた。すると、荷車の方から別の声が聞こえた。
「着いたかにゃ?」
ゲイルの体に隠れて一人の獣人族の女の子が出てきた。ロランは呆然としていた。ゲイルが帰ってきたと思ったら、獣人族を連れて帰り、ロランの頭は処理が追い付かなかった。
「マリーだにゃ。よろしくにゃ。」
「ほら、ロランが驚いているだろ?」
マリーは鼻をピクピク動かし、ロランの匂いを嗅いだ。
「うん、悪くないにゃ。マリーと遊ぶにゃ。ん?この子…。」
マリーは突然、ガンテを見て後ろに引いた。そして、爪を構えて、警戒をしていた。
「そいつは魔獣にゃ!離れるにゃ!」
「キュィ…。」
「マリーさん、初めまして。俺はロランです。こいつは従魔で岩モグラのガンテ。仲良くしてください。」
「従魔…?本当に?攻撃しないの?」
「大丈夫です!爪を仕舞ってもらえますか?」
ロランは優しくマリーにお願いをした。マリーはそっとガンテに近付き、頭を撫でてみた。ガンテは嬉しそうに鳴き、甘えている。
「キュィ♪」
「ロラン、見てみろよ。荷車貰って来たんだ。これがあれば色々と便利だろ?」
荷車の方に目をやると、少し古い感じはしたが立派な荷車が目の前にあった。その荷台には買い出しを頼んでおいた道具が転がっていた。
「ゲイル、どうしたの。この荷車…。」
「武器屋の店主がもう使わなくて処分に困ってったらしいから、貰って来たんだ。いいだろ?」
「凄い!助かるよ!これで作業もはかどりそうだね。」
そこに、ガレスが畑仕事から合流してきた。
「ゲイル、帰って来ていたのか?ん?その子は?」
「マリーだにゃ。よろしくだにゃ。」
「獣人族か…。珍しいな…。俺はガレスだ。」
「そんなことないにゃ。サイナスにはいっぱいいるにゃ。ドワーフの方が珍しいにゃ。」
ゲイルが連れて帰ってきた獣人族マリーとの挨拶を終え、サイナスの話をゲイルとマリーに聞いていた。道具もすべて鉄製の高価なものを買ってきてくれたみたいだ。
「ねぇ、ゲイル。ツルハシまであるけど、お金足りたの?それに、俺がツルハシなら持っているよ。」
「武器屋の店主と交渉して、一式で銀貨10枚にしてもらったんだ。…ツルハシは誰か手が空いた時に採掘できるだろ?」
「…そっか。ありがとう…。でも、ご飯は?食べてこなかったの?」
「そういえば、食ってねぇな。道具だけで銀貨10枚使ったし。」
「……。」
ゲイルの気持ちは嬉しかった。ご飯も食べずに皆の為に道具を選んでくれたことが。ただ、まさか渡した全額を道具に使うとは思っていなかった。ゲイルの豪快さに唖然としていた。
「ところで、道具でお金使ったんなら、その大斧は?」
「いいだろ~。冒険者ギルドで依頼を受けた分の報酬で買ったんだ。これを買うために必死に討伐したんだから。」
武器を新調するために、不足分のお金を報酬で賄ったらしい。凄く、惚れこんで買ったという事だけはわかった。ロランは、あえて、値段を聞くのもやめておいた。嬉しそうに話すゲイルを見ていると、ロランも幸せな気分になった。帰ってきて、ホッとしていた。
「そうだ!短剣!ありがとな。これが無かったら、火が起こせなかったんだ。」
「え?火…?どういうこと…?」
ロランはゲイルから焚き火の火起こしで困っていたことなど教えてもらって、ゲイルの慌てている姿を想像してしまった。
「ハハハ、あ、ごめんごめん。なんか想像したらおかしくって…。」
「こっちは必死だったんだから、笑うなよ。」
二人は和やかに話をしていた。ゲイルといると、やはり、妙に安心する。
「マリーはここで何をすればいいにゃ?」
突然、マリーが質問してきた。ゲイルがみんなに提案する。
「マリーはこう見えて強いんだ。動きも早いし。魔獣の警戒と狩猟はどうだ?」
「マリーやるにゃ!」
あっさりとゲイルの提案を受け入れた。マリーは急いで森の方へ走っていった。
「お腹すいたら戻って来……。もう行っちまった…。」
慌ただしいマリーの動きにゲイルは呆れ、ロランとガレスは笑っていた。元気な子が仲間となって、ロランもこれからの生活が楽しみになっていた。
「ゲイル、疲れていたら少し休んでなよ。俺はこれから、水脈掘ってみる。ここからだと、川も遠いからね。地脈感知に反応があったんだ。」
「少しだけ休ませてもらうわ。その後、木の伐採でいいか?必要なんだろ?」
「ありがとう!頼むよ!」
みんながそれぞれの役割で動き始めた。畑と料理はガレス、木の伐採加工はゲイル、狩猟、魔獣警戒にマリー、そして、ロランは採掘と水脈発掘を担当する。それ以外にも、ロランのやる事は多い。スキル再生で木や作物の成長もロランの力によって成り立っている。仲間を一人追加して、ここから、また新たに生活を始めることになった。いつまで住むかも決めていない。だが、みんなが楽しく便利に過ごせるようにロランはしていきたいと思っている。




