第二十九話 仲間と食事
ロランは地脈感知のスキルを使った。意識の中に辺りの情報が頭の中に入ってきた。ぼんやりと見える水色の靄が水脈だと教えてくれているようだった。広めの水脈にはどれくらいの量の水があるのかはわからない。しかし、意識を集中すると湧き水の音だけがかすかに聞こえていた。ロランはその水脈の真上を中心として、すり鉢状に掘ることに決めた。この水脈は平野の真ん中にあった。ちょうど、森と採掘場の中間地点である。この場所に湖が出来れば、大いに助かるのは間違いなかった。
ロランは湖の大きさを決めた。ただ、硬い土はスコップも入らなかった。すると、ガンテが鳴き、何かを伝えてきた。
「キュィキュィ♪」
「どうした?何か見つけたか?」
ガンテは肩から飛び出し、土の中に潜っていった。ロランが決めた湖の大きさに合わせて、土を掘り返していった。凄い勢いで掘り返していった。ロランはハッとして、ガンテの潜るスキルで土を柔らかくしてくれていることに気付いた。
(ガンテ、掘りやすいようにしてくれているのか?)
ロランは大きな声で叫んだ!土の中にいるガンテに届くように。
「ガンテ―!!!!ありがとう!!!!」
ガンテは地上に出て、返事をしているようだ。
「キュィキュィ♪」
ロランはガンテが柔らかくしてくれた土を掘り進めていった。掘った土は周りに集め、スコップで掘っていった。
―ザッ…ザッ…ザッ…
ふわふわの土は柔らかく、スイスイと作業は捗っていった。しかし、この作業が一日で終わるはずも無かった…。掘り起こした土は畑の方へと荷車を使って運んでいった。一人ですべてをやるには時間がもっと必要だ。地道にやるしかないのか。もっと効率的に作業を進める事が出来ないか、と考えていた。ロランは皆に相談することにした。ちょうど、ご飯の時間でみんなが集まる時を狙って相談した。
「ねぇ、ちょっと聞いてほしい。地下に水脈を発見したんだけど、それを掘り起こそうにも労働力が足りないんだ。何かいい方法はないかな?」
「ロラン、一人で全部やらなくていいんだよ。今のところ、畑も落ち着いているし、空いた時間に一緒に手伝ってやるよ。」
「そうだぞ。手が空いている人間が手伝えばいい!一人で無理するなんて、ダメだぞ。」
ゲイルもガレスも、優しく手伝いの志願をしてくれた。皆の優しさが嬉しかった。全て、自分でやる事に拘っていたのかもしれないとロランは気づかされた。その時、マリーが口を開いた。
「そんな簡単なことで悩んでいたにゃ?サイナスからごろつきどもを連れてきて手伝わせたらいいにゃ。力有り余っているから、それくらいのこと平気だにゃ。」
「ごろつき?」
「そうだにゃ。言葉は乱暴だけど、マリーに従順にゃ。」
「マリーお前何者だよ…。」
「早速行ってくるにゃ。美味しいご飯があったら、あいつらはいちころにゃ。ガレス!美味しいご飯作って待っててくれにゃ!」
マリーはすぐ、サイナスへ向かって走っていった。いつもの慌ただしいマリーは人の話も聞かず突っ走っていった。
「おい…またマリーは人の話も聞かず…。」
「まぁまぁ、いいじゃねぇか。連れてきてくれたら、問題は解決だし。ハハハ。」
ガレスは呆れ、ゲイルは能天気に過ごしていた。ロランはというと、マリーの行動力に唖然としていた。サイナスまでは2日かかる距離だマリーの足の速さなら、もっと到着は早いかもしれないが、その距離を躊躇なく行けるというのはもはやマリーの才能なのかもしれないとロランは感じていた。
マリーが出発して3日が経った頃、ロラン達が作業をしているとサイナス方面から騒がしい声が聞こえてきた。先頭にはマリーがいた。
「おーい、連れてきたにゃ。」
「おいおい、姉御に言われてきてみたら、こんなチビどもかよ。」
「うるさいにゃ。お前、それ以上言ったら飯抜きにゃ!」
「姉御、すんません!許してやってくだせぃ!まだ立場っちゅうのがわかってない若造でして…。」
「いいにゃ!マリーの友達をいじめたら許さないにゃ!」
「オッす!」
マリーが連れてきたのは、5人の獣人族だった。みんなそれぞれがツルハシやスコップや斧を肩に担いで、少しボロボロのタンクトップ姿で立っていた。ガタイは凄く良さそうな風貌だった。
「………。」
ロランは突然のことで、声を上手く掛けられないでいた。驚きで声も出ない。体が固まり、持っていたスコップもぽとりと落としてしまった。
「お前ら、自己紹介するにゃ。これから世話になるんだにゃ。」
「ガイ!」
「ヨウム!」
「ベルザ!」
「ジン!」
「タイガ!5人合わせて黒爪団!お見知りおきを!」
「相変わらずダサい名前にゃ。」
急に自己紹介が始まった。呆気に取られてしまったが、ロランも静かに自己紹介を始めた。
「えーと、ドワーフ族のロランです。で、こっちがゲイル。で、人族のガレスです。お手伝いに来てくれたという事であっていますかね?」
「あぁ、姉御に頼まれちゃ仕方ない。俺たちでやれることならやらせてもらうぜ。」
「勿論、ご飯は出るんだよな?」
「あ、はい!お腹いっぱい食べられるかはわかりませんが、是非食べて行ってください。」
5人がどんな生活をしていたのかはわからないが、ご飯に飢えているのだけ知る事が出来た。早速、ガレスに頼んでご飯を作ってもらうことにした。再生の力で、畑の作物を成長させ、今回に限っては沢山食べてもらうことにした。ガレスが調理している間に5人の話をし、ロランのこれまでの経緯を話した。
「追放?なんでそんな?意味が分かんねぇ…。」
「何かやらかしたのか?」
「…いや………。」
ロランは言葉に詰まった。今は黒鉄のリングについては話すべきではないと思った。まだ出会ったばかりの黒爪団に話す勇気が無かったからだ。
「まぁ、いいじゃねぇか。俺たちにだって、言えないことは山ほどあるんだからよ。言いたくなったら言えばいい。」
「ちげぇねぇ。」
黒爪団は笑い飛ばしていた。その後も会話をしながら、ガレスの料理を待っていた。
「よーし、野郎ども!!飯を食ったらバリバリ働くぞー!!」
「オオオオオオー!!」
タイガの威勢のいい声が響き、黒爪団の士気も高まっていった。賑やかな食卓には笑い声が絶えなかった。




