第二十七話 大斧
「次はどこ行くにゃ?」
「お前、まだ付いてくるのかよ!俺は暇じゃないって言っただろ!?」
「私は暇だにゃ。だから、付いていくにゃ!」
マリーはニコッと微笑み、ゲイルを見つめていた。
おかしな旅仲間が出来てゲイルは諦めて道具屋へと向かった。町の中には沢山の店が並んでいた。宝石屋、道具屋、武器屋、防具屋、雑貨屋。さすが交易の町といったところだろうか。店が立ち並ぶ一画に、目当ての道具屋を発見した。
道具屋に入ると、中には色々な材質で出来た道具が並んでいた。木、銅、鉄、鋼鉄、黒鉄、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト。ゲイルはどの材質を買うのか迷っていた。と、言うのも、ロランから預かってきたお金で色々道具を買わなければならなかった。手元には銀貨10枚が入っていた。心許ないが長く使えるように鉄のスコップを買うことにした。
「おじさん、鉄のスコップを買いたいんだけど、もう少し安くならない?銀貨3枚は高いよ。」
「そう、言われてもなぁ…。」
「わかった。ツルハシや斧も買うから、全部で銀貨10枚にしてくんね?」
「そうだなぁ…。それなら売ってやってもいいかな。鉄一式銀貨10枚だ。」
「ありがてぇ。助かるよおじさん!」
ロランから預かってきたお金をすべて使い果たした。ゲイルはロラン達の事を考え、道具は材質の良いものにした。ちなみに、ツルハシはロラン以外でも手伝えるように買ったのだった。
とりあえず、買い出し分はこれで終わりだったのだが、せっかく、町に来たので、町を見て回ることにした。まず、立ち寄ったのは武器屋だった。先日の戦いもあって棍棒で戦うには限界を感じていた。お金がない今、見るだけのつもりで店にやってきた。
武器が沢山並んでいた。ナイフ、短剣、剣、弓矢、大斧などそれぞれ材質も違っていた。ゲイルは手に持ちながら感触を確かめていった。短剣はとても良いが、軽すぎる。剣も長すぎて、扱いづらそうだった。次に大斧を持ち上げてみる。ゲイルは電撃が走ったような感覚になった。この大斧がゲイルを呼んでいるような、それくらいしっくりと来ていた。ちょうどいい重量感、握り心地、大きさ。全てにおいて、完璧だった。慌てて値札を見てみた。そこには銀貨15枚と書いてあった。
(たけぇよ…。でも…欲しい…。)
その時、武器屋の店員が話しかけてきた。
「その大斧は少し重めですが、魔獣には効果抜群で好評いただいております。お買い求めいたしますか?」
「欲しいです!…だけど、今はお金がないのでまた今度にします!」
そそくさと店を出たゲイル。冒険者ギルドへと向かっていた。大斧が欲しくて、依頼報酬の確認が目当てだった。ずっと、付いてくるマリーを無視していたが、そろそろ限界だった。
「いい加減にしろよ!お前!何がしたいんだ!」
「一緒に遊びたいんだにゃ。遊ぼうにゃ。」
ゲイルはこの時、ある考えが思い浮かんでいた。マリーの素早さを加味して、あることをしようと…。
「遊びたいんだな。いいぜ!それじゃ冒険者ギルドに行こうぜ!」
冒険者ギルドにやってきた二人は依頼を眺めていた。そして、見つけた。近場で出来る依頼はこれしかねぇ。そして、この依頼は高値の報酬がもらえる。
「ようこそ!依頼ですか?」
「はい!これをお願いします。」
「サンドイーター討伐ですね。この辺りではサンドイーターの被害が多発しておりまして、早めに討伐をお願いします。一体に付き、銀貨3枚となります。高値な分、魔獣も強力ですのでお気を付けください。」
ゲイルが選んだのは一度、死にかけたあのサンドイーターだ。ゲイルは負けっぱなしでいるのが悔しかった。ゲイルはマリーもギルドリングを付けていたのを見ていたため、一緒に討伐しようと考えたのだった。
「マリー、一緒に討伐して遊ぼうぜ!」
「いいにゃ!サンドイーターにゃら任せろにゃ!」
ゲイルは武器屋に行くことにした。それは交渉の為だった。今の棍棒では戦えない。だからこそ、大斧を借りられないかの交渉だった。
「おじさん、必ずお金払うから、大斧貸してくれ!頼む!」
「何を馬鹿なことを…。ダメに決まっているだろ。」
「そこをなんとか!サンドイーター5匹倒したら、銀貨15枚手に入るんだよ。頼むよ。」
「ダメだ!これは有名な大斧使いから買った代物だぞ。タダで貸すわけにはいかねぇ。」
「タダで?…それじゃ、このスコップ、ツルハシ、斧を担保に貸してくれ!」
「……もう、わかったよ……兄ちゃんには負けたよ…。必ずお金持って来いよ!」
ゲイルは飛び上がるほどに高揚し、早く、試し切りがしたくてサンドイーターの巣まで一直線に走っていった。町を出ると周りを確認したのち、大斧を両手で握った。そして、上から下へ振り下ろして見せた。遠心力で少し体は持っていかれたが、何度も振っていると体に馴染んできた。振り下ろすと風を切り裂く音が聞こえてきた。
「早く行くにゃ。」
「わかってるって!行こうぜ!」
二人はサンドイーターの巣へやってきた。
轟音とともに飛び出してきたサンドイーターに狙いを定め、大斧を振りかぶった。マリーは爪で引っかいたり噛んだり、容赦なく攻撃していた。しかし、サンドイーターは土の中へと潜っていった。続けてマリーが土の窪みの中心に目掛けて、飛び出していった。マリーの体はみるみる土に埋もれていった。
「マリー大丈夫か?」
「大丈夫にゃ。いつものことにゃ。」
マリーの姿が見えなくなった。ゲイルは心配そうに窪みを覗いていると、もそもそと土が動いた。マリーの手が出てきた。その手に持っているのは紛れもなく魔石だった。マリーは必死に土の窪みから脱出した。
「中で何が起きていたんだ?」
「えーと、サンドイーターの弱点は攻撃の瞬間ががら空きなんだにゃ。だから、その一瞬で反対に猛攻撃するんだにゃ。」
「そんな戦い方があるんだな。知らない事ばかりだ。」
ゲイルは感心していた。マリーの強さも知識も凄いというほかなかった。
「次行くにゃ!」
ゲイルはマリーに付いて、サンドイーターの巣を目指して走っていった。何体もサンドイーターと戦って、大斧もだいぶゲイルに馴染んできていた。
「なぁ、最後の一体は俺に最後戦わせてくれねぇか?」
「いいにゃ。でも、結構タイミング難しいにゃ。大丈夫にゃ?」
「やってみたいんだ。もし危なそうなら助けてくれ!」
マリーは頷いた。巣に近付くと、飛び出してくるサンドイーターにケガを負わせて、その後、巣に戻った所をゲイルも窪みに飛び出していった。土が沈んでいく。ゲイルの体を土が全部、覆いかぶさった。窪みの下にはサンドイーターがハサミを大きく開いて待っていた。武器を振るぐらいの空間もあるようだ。サンドイーターが挟んでくる前に大斧を振り下ろした。すると、黒い靄が出て消えた。ゲイルは魔石を手に入れる事が出来た。土の上に手を出し、マリーが引っ張ってくれ、無事に脱出する事が出来た。
「やったにゃ!ゲイル凄いにゃ!」
「やった…。やったぞ…。これで帰れる。」
ゲイルは喜びを嚙み締めていた。死にかけたサンドイーターとの戦いは晴れて終止符を打ったのだった。
早速、冒険者ギルドへと向かい、銀貨15枚の報酬を手に入れた。
武器屋へとお金を持って、支払いに向かう。担保として預けた道具も引き取りをしなければならない。
「おじさん、支払いに来たぜ!」
「おっ?早かったな。確かに銀貨15枚な。ほら担保の道具返すぜ!」
「ありがとう!」
「そうだ!お前さん、それ持って帰るの大変だろ?サービスでいいものやるよ。俺ももう使わなくて処分に困っていたから、持って行ってくれると助かるんだが、外で待っててくれるか?」
そう言うと、店主は裏口へと向かった。ゲイルは言われたとおりに外で待っていると店主は大きな少しボロボロの荷車を運んできた。
「これ貰ってくれないか?もう俺はいらないからよ。」
「貰っていいの?ありがとうおじさん!」
「こちらこそ、ありがとよ!」
ゲイルは荷車に道具と大斧を積んで、ロラン達が待つ土地へ帰ることにした。
「じゃあな、マリー。また会おうな。」
「え!?行っちゃうのにゃ?どこに行くにゃ?私も行くにゃ!」
「……。」
ゲイルは無言で立ち尽くした。驚きを隠す事が出来なかった。




