第二十三話 新たな道へ
ロランは目が覚めると、ギルドのベンチで眠っていた。近くにいたのはゲイルだった。ギルド内は何故か慌ただしく騒々しかった。
「ロラン起きたか?お前、また無理していたんだろ。食堂のマスターが連れてきてくれたみたいだぜ?」
「あ…そうか…確か…マスターのスープを飲んで寝ちゃったんだっけ…。」
ぼんやりと記憶の片隅にマスターの事を思い出していた。畑へ戻らなければという気持ちと、少しでも休みたい気持ちの狭間でロランは悩んでいた。そんな時、ギルドマスターが住民に向かって、発表があった。
「皆の者、先日の魔獣襲撃において、この街の現状を見てきただろう。今もギリギリのところで持ちこたえている印象だ。そこで、隣国である炉都グランバルドより、支援していただけるようになった。グランバルドはドワーフ国ではあるが、人間である我々を避難民として、受け入れてくれるそうだ。準備が整い次第、出発をしてグランバルドに向かうとする。馬車も何台か生きている。平民は馬車に乗り込んで向かってくれ。何人かの冒険者は護衛を頼む。」
ロランはハッとした。まさか、故郷であるグランバルドが受け入れてくれるとは思っていなかったのだ。だが、ロランは素直に喜ぶことは出来なかった。追放された身としてはとても複雑で、とても難しい問題が絡み合っていた。ゲイルは事情を知る一人でロランの顔色を窺っていた。
「ロラン、もしかして、グランバルドには行かないつもりか?と、言うか行けないんだよな?」
「あぁ…俺は行けない…追放されたやつが行くと迷惑を掛けてしまうから。」
ロランは寂しい顔をした。ただ、これから一人でどうしていこうか考えていた。皆がグランバルドに着いたころにはロラン一人で何をしているのか想像も出来ていなかった。また、違う街を転々と旅をして生きていくことも考えていた。そんな時に、ゲイルがロランに声を掛けてきた。
「俺はロランと一緒に行くぜ!どこまでもな!ロランといる方が楽しそうだしよ!」
ゲイルはそう言うと、力いっぱい微笑んだ。満面の笑みでロランを見つめ、ロランは嬉しくなって、泣いてしまった。不安だった。また一人になるのが怖かった。ガンテとの旅も楽しいけど、同じドワーフ族であるゲイルが居なくなるのが寂しかった。
「ありがとう。ゲイル。俺も嬉しいよ…。…グスン…。」
「泣くなよ、ロラン。これからも離れないから覚悟しろよ。」
ゲイルはロランの頭を脇腹に抱え、髪の毛をわしゃわしゃと触り始めた。そこに食堂のマスターが現れた。
「二人とも楽しそうじゃん!ロラン、体はもう大丈夫か?」
「はい!お陰様で!すっかり元気になりました!」
「それは良かったな!グランバルドに行くらしいから、しっかり準備しておけよ!」
ロランとゲイルは怪訝な顔をした。その雰囲気を察知してかマスターも声をかけた。
「え~と、二人とも、グランバルドにはいかないのか?」
「はい。いろいろ事情があって…。俺たち、違う街を目指すことにします。」
マスターは不思議そうな顔をして、ロランの顔を覗いた。少し考えて、マスターは話を続けた。
「そっか…。それじゃ、俺もロラン達に付いていこうかな。俺にはちょっとあそこの雰囲気は暗すぎて。日の光を浴びていたいし、美味しい料理をお前らに食べてほしいしよ。」
ロランは驚きを隠せなかった。リーフェルに残る訳でもなく、ロランに付いてくるのが信じられなかった。仲間が増えるのは大歓迎ではあったが、心配が一つあった。
「マスター、俺に付いてくるとまた災いが起きるかもしれませんよ…。」
「まだ、言っているのか…ロランは…。こいつ、今回の魔獣の件もロランのせいだって、自分を責めているんだぜ?おかしいだろ…?それに、皆の為に働いて食料不足を免れて、みんな感謝しているっていうのによぅ!」
ゲイルは激しく突っ込んだ。ロランにも災いが起きるなど確証はなかった。しかし、マイナスな言葉しか出てこなかった。グランバルドに裏切られたことが相当、ロランの人格を捻じ曲げてしまったようだ。
「ハハハ、なんだそれ!?俺はロラン達と行って、美味しいご飯を食べさせてやりたいんだ!それに、俺が付いていかなかったら、ロランは無理をするだろ?」
ゲイルもロランも納得してしまった。美味しいご飯に釣られたわけではなく、マスターの心意気に納得させられたのである。
「ところで、そろそろマスター呼びはやめてくれるか?もう店もないんだからよ。ガレスでいいよ。ガレス=オルディン。これが俺の名前だ。」
「ガレスさん…。よろしくお願いします。」
ロラン達はガレスと順番に握手を交わした。硬いごつごつとした手で料理人特有の豆があった。
周りの冒険者たちは遠征の準備を始めていた。炉都グランバルドに行くには3日ほど日数がかかる。人数分の食料と水をかき集めなくてはならなかった。そして、ギルドに蓄えていたお金も持っていかなければならず、馬車への積み込みの手伝いをしていた。冒険者に指示を出しているギルドマスターに声を掛けた。
「ギルドマスター!俺たち、三人はグランバルドに行けません!もし、両親にあったら、元気にやっていると伝えてもらえますか?ロラン=オージャーは元気にやっていると…。」
「そうか、お前はグランバルドの出身だったか。それなら、一緒に行けばいいんじゃないか?」
「いえ、いろいろ事情があって、帰る事が出来ないんです。代わりに伝えてもらえますか?」
「まぁ、仕方ないな。伝えておくよ。気を付けるんだぞ。」
ギルドマスターと別れ、ロラン達は一足早く、街を出る事となった。これからの事が何も決まっていない旅に三人と一匹は歩き出した。




