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黒鉄領主と異色の炎 ~追放されたドワーフ少年の開拓記~  作者: 凪野 リアン


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第二十二話 絶望と再生


 あれから、3日が経った頃、街の入り口に一人の住人が呆然と立ち尽くしていた。その人は食堂のマスターだった。持っていた荷物をぽとりと落とし、信じられない様子で街の様子を見ていた。


「な…なんで…。」


 目の前には壊滅したリーフェルの街があった。マスターが生まれ育った街リーフェルが見た事のないような景色へと変わっていて、頭の処理が追い付かないようだ。街の中は焼け焦げた匂いが漂っていた。そんな時、狩りから戻って来たゲイルと冒険者たちに出会った。


「何があったんだ…。街が…店が…。」


 マスターは悲しみに暮れていた。ゲイルたちも悔しそうに目を逸らす。悲しみはまだ拭いきれていない。生きるために動いてはいるが、現実を受け入れるには時間がかかるようだ。

 ゲイルはマスターに事情を説明した。魔獣の大群が襲撃してきたこと、魔王が復活したこと、今は生きるために皆で乗り越えようと奮起していることも…。どれも信じられないような話で理解が追い付かなかったが、目の前の景色を見て、受け入れるしか出来ないと悟った。


「君、ゲイルだったな。ロランは一緒じゃないのか?」

「あいつなら無事だよ。畑の方で働いていると思うぜ。手が空いたら顔を出してやってくれるか?喜ぶと思うから。」


 食堂のマスターは頷き、街の中を散策していた。子供の頃に遊んだ公園もよく買い物に行ったお店も見事に破壊されていた。沢山の思い出がこの一瞬で頭をよぎっていった。子供たちの笑い声や賑やかだった朝市の感じも今では静かで、まるで違う街に来たみたいだった。


(なんだ…これ…本当にここはリーフェルか?夢でも見ているのか?)


 不気味な静けさが恐怖を掻き立てていた。屋台が並んでいたであろう場所を通過し、食堂へとやってきた。建物もひび割れて半壊。扉のガラスは割れ、屋内のテーブルと椅子が散乱し、土埃が床に積もっていた。中には到底入る事が出来ない状態であった。マスターは店の前で膝から崩れ落ち、涙を見せた。


(俺の夢が…俺の店が…俺のすべてが……。)


 マスターにとって大事な店だった。誰もいない店の前で泣き叫んだ。どうしていいかもわからなかった。悲しみに暮れ、何も考える事が出来なかった。しばらくして、ようやく立つ気力が出てきて、何度も店の中を確認した。すると、店の中の床に一つのお守りが落ちていた。そのお守りは店の開店の時に師匠からもらったお守りだった。そっと、半壊した店の中に入り、静かにお守りを手にした。その時、地鳴りのような鈍い音がして、慌てて店の外へ飛び出した。すると、半壊だった店が全て壊れていった。危機一髪の瞬間だった。お守りを手に持ち、無事を感謝した。


(お店を守ってくれてありがと。これから、どうなるかわからないけど、これからも守ってくれよな。)


 悲しみを拭い、前へ向く決心をした。引き続き、街の散策を続けた。そして、最後はロランのいる畑へとやってきた。

 畑も焼け焦げていた。しかし、一部だけは緑も鮮やかに作物が出来ていた。遠くから眺めていると、どうやらロランが何かのスキルを使っているのが見えた。ロランは、フラフラとしながら、作物を育てていた。

 ロランはフラフラとバランスを崩し、倒れこむ寸前で食堂のマスターが手を差し伸べた。


「ロラン、大丈夫か?」

「あ…はい…すみません…。」


 マスターはロランを抱え、木陰に座らせた。しばらく、休ませるとロランの意識がはっきりしてきた。


「マスター無事だったんですね。良かった~…。」

「それはこっちのセリフだ!お前、今何やっていたんだ?」


 ロランの疲弊した姿に心配そうに話しかけるマスターだった。初めて見るロランの姿に過酷な労働環境を知ることとなり、声を掛けずにはいられなかった。


「畑の再生を少し…。食料確保しないと皆が困りますから。」

「再生ってどういうことだ!?それに酷く疲れているじゃないか…。」


 ロランの話に耳を傾け、スキルのことや食糧不足を防ぐために、ロランは一生懸命に作物を育てていることを知った。


「ロラン、無理はするな!今度はお前が倒れてしまう!俺が収穫するから。その間は休んでおけ。わかったな。」


 ロランは静かに頷いた。マスターはロランの育てた作物を収穫していった。土の香り、作物の緑の香りに癒されていた。街の現状も忘れてしまうぐらい、無我夢中になって、収穫をした。畑の作物は芋と野菜が植えてあった。ロランの不思議な力で育った野菜たちは栄養たっぷりで大きな野菜に育っていた。


「ロラン、収穫終わったぞ。次はどうするんだ?」

「今、種を作るので見ていてください。」


 ロランは区画の作物に手をかざした。すると、芽から花が咲き、しばらくすると花の軸が乾燥し、種が取れるようになっていった。ロランの疲労がピークを迎え、また、倒れこんでしまった。種の収穫をマスターが行い、再び、土に植えていった。


「今日はもう、ゆっくり休め!収穫した野菜で美味しいもの作ってやるからさ。」


 ロランは倒れこんでいる。その横で、野菜の土を落とし、水洗いをして、道端に落ちていた鍋などの調理器具を拾い上げ、調理していった。焚き火に火を起こし、その上に鍋を置いてスープを作っていった。匂いに釣られて、数人の子供たちもやってきた。


「みんな、お腹空いているんだろ?食べていきな!」

「ありがとう!お兄さん!」


 美味しそうに食べる子供たちの顔を見て、嬉しくなった。マスターは、この時、店が無くても料理を提供できる喜びを知った。横になっているロランに声を掛けて、スープを食べさせた。


「ほら、ロラン!スープが出来たぞ。食べろ!」


 ロランは美味しそうにスープを飲みほした。疲弊した体に染み渡る優しい味がしていた。そして、また、瞼を閉じて眠りについた。


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