表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物合成で世界に抗う反逆譚~HP10の凡人おじさん、ダンジョンマスターになる~  作者: 藍之介
vs.『ダンジョン討伐軍』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/107

第89話 vs.討伐軍 ㉘ -セラド戦-

 俺が静かに語り終えると、ミロの顔から血の気が引いていた。


「……待てよ」

 

「ネムが……器……? あのクソエルフの……?」


 ミロの手が怒りで震えている。


「なんだよ、それ……聞いてねぇぞ……!」


 ネムは苦しそうな表情で、呟くように言った。


「……ミロ……ごめん、なさい……」


「……どうして言わなかったんだ?」


「ガルムに……言われた、から……。ミロに言ったら……きっと無茶、するからって……」


 ネムは、途切れ途切れにそう言った。

 一言ごとに胸が上下し、額に浮かんだ汗がこめかみを伝っていく。

 ミロは、何か言おうとしたが、言葉を飲み込んだ。


 怒ることもできない。

 責めることもできない。

 ネムはずっと、自分の身体が徐々に壊されていることを分かっていたのだ。


 ボンドは話を続ける。


「それと、ガルムっていう獣人のことだけど」


「おい……!」


 ミロが、ボンドの胸倉を掴みかからんばかりの勢いで詰め寄ってきた。


「ガルムの兄貴は無事なんだろうな!? 兄貴の身に何かあったら許さねぇぞ!」


「ああ、安心してくれ。動きは封じさせてもらったが、ちゃんと生きてるよ」


「そうか……よかった……」


 ミロは大きく息を吐き出し、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。

 だが、安堵するのはまだ早い。


「さて、ここからが本題だ」


 ボンドはミロを見る。


「エルフの精霊魔法を封じ、この戦いを終わらせるには、その子がカギとなる」


 ミロは瞬時にダガーに手をかけ、ネムを庇うように立ち塞がった。


「……さっきアンタが言った、器を壊せばいいって。まさか、ネムを殺す気か!? ネムに何かしたら承知しねえぞ!」


「違うって! 危害は加えないって言っただろ! 少し落ち着け!」


 ボンドは必死に両手を振り、ミロを制止した。


「そんな真似をするくらいなら、最初からお前たちをここに避難させたりしない。……俺が言いたいのは、その子を救いつつ、エルフの精霊も封じる方法だ」


「ネムを……救うだって?」


「エルフの精霊魔法は、その子の首輪に魔力が繋がって成立している。なら、その繋がりを断ち切ってしまえばいい」


「そんなことできるのかよ……?」


「そのガルムってやつから聞いたが……お前たち、『解呪の秘石』ってやつを持ってるんだろ?」


「あ、ああ……」


 ミロは警戒しながらも、ネムへと視線を落とした。

 ネムが震える指で、胸元を押さえる。

 そこに隠しているのだろうか。


「それを使えば可能かもしれない」


「……それで首輪を外せるんだな?」


「ああ。ただし、問題がある」


「問題って、なんだよ?」


 ボンドは少し言い淀む。

 これから告げる現実は、彼らにとってあまりにも残酷だということが知っていたからだ。


「……ガルムは知っていたそうだが。その解呪の秘石は……一回しか使えないそうだ」


「なんだって!?」


 ミロが驚愕に目を剥き、絶句した。

 あの馬車の中で、三人は誓ったはずだ。

 三人で逃げる。

 三人で自由になる。

 誰か一人だけではなく、全員で。


 それが、一人しか救えないという現実。


「なんで……ガルムの兄貴、そんな大事なことを……」


「お前らの希望に満ちた顔を見ていたら、どうしても言い出せなかったんだってさ……」


「……馬鹿野郎」


 ミロの声は震えていた。


「じゃあ、どうすりゃいいって言うんだよ……」


 獣の耳がペタンと伏せられ、ミロは頭を抱え込む。


「待て、落ち着け」


 ボンドはミロの肩を掴んで、どうにか冷静さを保たせようとした。


「一つ確認したい。その首輪をつけたまま、あのエルフの術者を倒したら……どうなるんだ? 術者が死ねば、呪いが解けて、お前たちの奴隷の首輪も外れるんじゃないのか?」


 もしそうなら、話は早い。

 どうにかして鬼一がセラドを倒せば、全て解決する。

 だが、ミロは力なく首を横に振った。


「この首輪は特別製なんだ……。普通の奴隷の首輪とは違う。首輪をつけたまま主人が死んだら、奴隷も一緒に死ぬ」


「やっぱりか……。カーミラの言う通りだ」


 俺は苦々しく舌打ちをした。


***


『なぁ、カーミラ。そのガルムという獣人についている奴隷の首輪だが、術者であるエルフが死んだら、呪いも解けて解放されるんじゃないのか?』


 俺の甘い見通しを、カーミラは鼻で笑って一蹴した。


『主よ、闇の魔道具を侮ってはならぬ。この手の強力な呪具は、逃亡や反逆を防ぐために、非常に厄介な仕掛けが施されておるのが常じゃ』


『厄介な仕掛け?』


『たぶんじゃが、主人と運命を共にするように設計されておる。主の生命活動の停止と連動して、奴隷に呪いが発動する仕組みじゃ。つまり……主人が死んだら、奴隷も死ぬじゃろうな』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ