表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物合成で世界に抗う反逆譚~HP10の凡人おじさん、ダンジョンマスターになる~  作者: 藍之介
vs.『ダンジョン討伐軍』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/90

第84話 vs.討伐軍 ㉓ -セラド戦-

 精霊女王ティターニアの足元から、四つの魔法陣が瞬時に展開された。


 火、水、土、風の魔法陣。

 圧倒的な精霊の魔力が、容赦なく鬼一に襲いかかる。

 その威力は、先ほどの精霊たちの《《それ》》とは比較にならなかった。


「――【原初火プライマル・フレア】」


 彼女の白く細い指先が振られると同時に、最初に放たれたのは、灼熱の炎玉。

 それも、ただの火球ではない。

 広間の酸素そのものを喰らい、膨れ上がる灼熱の波。


「ちいッ!」


 鬼一は体を翻し、横へ跳んだ。

 しかし、炎はまるで意志を持つ大蛇のように空中で軌道を変え、鬼一の逃げ場を塞ぐように殺到する。


「ならば、斬るまで!」


 喰血が唸った。

 鬼一の剛腕が振るわれ、炎の波を真正面から斬り裂く。


 ズバァァァンッ!


 灼熱の海に、黒い裂け目が走った。

 だが、斬ったはずの炎が、裂けた断面からさらに増殖し、牙を剥く。


「なに……!?」


 鬼一は即座に踏み込みを変え、爆発的な脚力で地面を蹴って天井近くまで跳躍した。

 その真下を、炎の海がはしる。


「【大地槍グランド・ランス】」


 次に、ティターニアの冷徹な声が響くと、地面がぜた。

 岩の槍が、何十本も地面から突き上がる。

 空中で逃げ場のない鬼一へ、容赦なく。


「ぐっ!」


 鬼一は下から迫る岩槍の一本を足場にし、さらに上へと跳ぶ。

 だが、足場にした岩槍が内部から爆発するように砕け散る。

 砕けた無数の岩片が、散弾銃の弾丸のように鬼一の全身を打つ。


 鬼一の額が割れ、左肩の皮膚が裂ける。

 脇腹にも鋭い石片が深々と刺さった。

 鬼一の身体には、トロールから受け継いだ【再生】のスキルがある。

 だが、傷が塞がる傍から、新たな岩片が肉を抉り、再生の速度が全く追いつかなかった。


 それでも鬼一は空中で身を捻り、喰血の柄を握り直す。


「【豪剣・波断(はだん)】!」


 鬼一の剣圧が、迫り来る岩槍をまとめて砕いた。

 それらが石の雨となって広間へ降り注ぐ。


「【水葬渦アクア・コフィン】」


 空中で体勢を崩した鬼一を、今度は巨大な水球が襲った。

 その水球は、鬼一の体を丸ごと包み込み、内部で凄まじい凄まじい渦を発生させる。


 呼吸と視界が奪われる。

 鬼一の巨体が、水球の中で木の葉のように回転する。

 水圧で、鬼一の骨すらも砕こうと軋ませる。

 鬼一は水球の中で、『喰血』を握り締めた。


 斬る。

 しかし、水は斬れない。

 いや、斬っても一瞬で元に戻ってしまう。


 ならば。


「おおおおおおおッ!」


 鬼一は水球の中心で身体を捻り、全身の筋力を一本の刀へと集約させた。


「【鬼旋きせん】!」


 それは、剣士ユナから受け継いだ、『神速の剣技』を応用した技。

 回転する身体ごと放つ、螺旋の剣技。

 『喰血』が、水球の渦とは完全に逆方向に、爆発的な速度で振るわれる。

 一太刀が水流を削り、剣の回転が渦の流れを乱す。


 そして、ほんの一瞬。

 水球に歪みが生まれた。

 鬼一はそのわずかな隙間へ身体をねじ込み、ずぶ濡れになりながら強引に外へ飛び出す。


「がはっ……!」


 肺に残った水を吐き出す暇もない。


 そこへ最後の一撃が待っていた。


「【天風裂テンペスト・クリーブ】」


 風が、見えない巨大な斧となって、頭上から落ちてくる。

 大気そのものの断頭台だ。


「ッ!」


 鬼一は瞬時に『喰血』を横に構え、渾身の力でその不可視の一撃を迎え撃った。


 受けた。

 受けたはずだった。


 ガギィィィィンッ!!


 『喰血』の刃が悲鳴を上げる。

 尋常ではない重圧。

 鬼一の両足が、地面にめり込む。

 膝が沈む。

 不可視の風の圧力に耐えきれず、『喰血』を支える両腕の筋肉が内側から裂け、血が噴き出す。


「ぐ、ぅ……!」


 それでも、鬼一は倒れなかった。

 風の斧を刀で受け止めたまま、奥歯を砕かんばかりに噛み締める。

 その時、『喰血』が赤く脈打った。

 主の血を吸い、刀身に浮かぶ赤い波紋がより濃く、より鋭く輝いていく。

 鬼一は咆哮と共に腕力を爆発させ、押し潰そうとする風の斧を強引に弾き返した。


 その姿に、精霊女王ティターニアが、初めて反応を示した。


「……ほう。まだ立つか」


「当然……!」


 鬼一は血を吐きながら、ニヤリと笑った。

 それは、強がりではない。

 自分よりも格上を前にした、純粋な武人としての笑みだった。


「我は、御屋形様の剣……。簡単に折れるわけには、いかぬのでな……!」


 背後で見ていたセラドが、鼻で笑う。


「無駄だ。精霊女王に抗える魔物など、この世に存在しない。貴様はここで死ぬ運命だ」


「我の死に場所は、御屋形様が決める!」


 全身は裂傷だらけ。赤銅色の肌は血に染まり、足元には赤い水たまりができている。

 立っていることすら奇跡のような、満身創痍の状態だった。

 【再生】スキルが働き、傷口の肉が蠢いて塞がろうとしている。

 しかし、治るより早く、次の攻撃が来る。


 ティターニアは、静かに片手を上げた。

 四つの魔法陣が、再び彼女の背後に開く。


 先ほどの魔法陣よりも大きい。

 四つの元素が絡み合い、混ざり合い、一つの滅びとして形を成していく。


「次で終わらせよう」


 精霊女王の無慈悲な声が、広間を満たした。


 それは無情な宣告だった。


 鬼一は、血まみれの手で『喰血』を握り直す。

 逃げるという選択肢はない。


「来い、精霊女王ティターニア


 鬼一は、血に濡れた牙を剥いて笑った。


「この身が砕けようとも、貴様の一撃、受け切ってみせる」


「消えるがいい」


 巨大な魔法陣から、とてつもない魔力が噴き出してくる。

 いかに鬼一であれど、文字通り跡形もなく消えてしまうほどの威力。

 その滅びの一撃が、今まさに放たれようとしていた。

 その時。 


「……ッ」

 

 突然、精霊女王ティターニアの動きが、ピタリと止まった――


面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、ブックマークと評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ