表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物合成で世界に抗う反逆譚~HP10の凡人おじさん、ダンジョンマスターになる~  作者: 藍之介
vs.『ダンジョン討伐軍』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/74

第72話 vs.討伐軍 ⑪ -地底湖の戦い-

 シューゥゥゥ……ッ。


 リュネの白い肌から、真っ白なもやがとめどなく溢れ出している。

 靄が触れた土壁の表面が、パキパキと音を立てて霜に覆われ、『凍結』していく。

 地底湖の気温が急激に下がり、レイの吐く息が白くなる。


「さあ、羽虫さん。身体の芯まで凍りつかせてあげましょう……」


 リュネの一言に、地底湖の空気が一変する。

 レイは本能的な危険を感じ、バサァッ! と大きく翼を羽ばたかせて後方へと飛び退いた。


「な、なんなのあいつ……!? 急に魔力の質が変わった……」


 警戒度を最大まで引き上げたレイは、先手を取るべく攻撃を仕掛ける。


「くらえっ! ――【激流の飛槍(アクア・ランス)】!」


 レイが叫んだ。

 固い岩盤をも容易く穿うがつ水の槍が出現し、空気を裂いてリュネの胸元へと迫る。


 しかし、リュネは回避しようともせず、冷ややかに微笑んだまま、迫りくる水の槍に片手をかざす。

 すると、彼女を取り巻く『白い靄』が、迫り来る水の槍に触れた時――。


 ――パリィンッ!


 澄んだ破砕音が鳴り響いた。


「なっ……あたしの水魔法が、砕けた!?」


 レイは信じられないものを見るように目を見開いた。

 リュネに向かって放たれたはずの激流の飛槍(アクア・ランス)は、彼女に命中する寸前。

 まるでガラス細工のように、粉々に砕けてしまったのだ。


「無駄な足掻きね」


 リュネが眼下の湖に向かって、すっと細い指を向ける。


「――喰らいなさい」


 そう呟くと同時。


 ズォォォォォンッ!!


 湖から、巨大な水流が巻き上がった。


 水流は一本ではなかった。

 何重にも渦を巻きながら絡み合い、巻き上げられた水流は一匹の蛇のような形を成していく。

 全長十メートルを超える、水の大蛇。


「あたしに水魔法は効かないって!!」


 レイは両手に魔力を込め、巨大な水流の蛇を受け止めて、軌道をそらそうとした。

 自身の得意とする水魔法。

 その程度は造作もないはずだった。

 だが。


「……えっ?」


 レイの手に触れた水流は、霧散するどころか、レイの腕に絡むようにまとわりついた。


「なっ、何これ!?」


 レイが焦って振り払おうとするが、『水流の蛇』はレイの腕を辿り、身体全体に巻き付くようにして、その拘束を強めていく。

 まるで意思を持ったくさりのように。


「ふふっ……ははははっ!」


 リュネが冷酷な笑みを浮かべている。


「本当にお馬鹿さん。私の本当の魔法属性は、水でも土でもないの……」


 リュネが、パチン、と指を鳴らす。

 その瞬間。


「――【絶対氷結コキュートス】」


 ピキィィィィィィンッ!!!!


 レイの身体にまとわりついていた水流が、一瞬にして凍り付く。


「あ――」


 レイが悲鳴を上げる間もなかった。


 腕。

 身体。

 脚。

 そして、空を舞うための美しい翼までも。


 リュネの【絶対氷結コキュートス】は、レイの身体を一瞬で氷の牢獄へと閉じ込めてしまう。


「――っ!」


 翼が凍らされてしまったレイは、飛ぶ力を完全に失った。

 氷の重量に引きずり込まれるように、成す術なく、真っ逆さまに地底湖へと堕ちる。


 巨大な水柱が吹きあがり、氷塊に包まれたレイが暗い水底へと沈んでいく。


「あーっはっはっはっは!! 羽虫にはお似合いの死に方ですわね!」


 リュネは両腕を広げ、狂気に満ちた高笑いを地底湖に響かせた。

 久方ぶりに解放した氷の魔力。

 下等生物を蹂躙し、絶望に染め上げる。

 体中に快感が駆け巡るようだった。


「もっと……もっと! この空間の全てを、氷漬けにしてあげる!!」


 リュネは、体中から湧き上がる膨大な魔力を力任せに湖面へと叩きつける。


 メキメキメキッ……!

 バキィィィィィンッ!!!!


 リュネの足元から、凄まじい速度で氷が広がっていく。

 それは単なる湖面だけの凍結ではない。

 水深数十メートルにも及ぶ地底湖の水そのものが、リュネの魔力によって分厚い『氷河』へと変貌していく。

 波打ち、荒れ狂っていた水面が、まるで時を止められたかのように静止した。


 ものの数十秒で、広大な地底湖は氷の世界へと塗り替えられてしまった。


 静寂。

 水音一つしない、死の世界。


「……はぁ、はぁ……」


 リュネは乱れた銀髪をかき上げ、深く息を吐き出した。

 完全に凍りついた湖面を見渡し、満足そうに微笑む。


「……終わりましたわね。他愛もない」


 あれほど分厚い氷の下に沈められれば、いかなる魔物であろうと助かる見込みはない。

 窒息するか、あるいは凍死するか……。

 どちらにせよ死んでいるだろう。

 リュネはくるりと背を向ける。


「さて、セラド様に追いつきませんと」


 歩き出そうとした、まさにその時。


 ――ピシッ……。


面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、ブックマークと評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ