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魔物合成で世界に抗う反逆譚~HP10の凡人おじさん、ダンジョンマスターになる~  作者: 藍之介
vs.『ダンジョン討伐軍』編

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第69話 vs.討伐軍 ⑧ -地底湖の戦い-

 リュネが、閉じた扇の先端で足元の岩盤をトン、と軽く叩く。

 詠唱すら必要ない。

 ただそれだけの動作で、彼女の足元から魔法陣が広がる。


 ボコッ、ボコボコボコッ!!


 周囲を囲む湖水が不気味に泡立ち、水と土が一斉に舞い上がっていく。

 空中で水や土砂が次々と混ざり合う。

 やがて形成されたのは、大砲の弾ほどの大きさの『泥弾クレイボール』。

 それが、リュネの背後に数十、数百と展開された。


「穿ちなさい――【泥濤連弾マッド・バレット】」


 リュネが扇をレイに向けて振り下ろす。


 シュバババババババッ!!


 空気をつんざく轟音と共に、無数の泥弾がまるでガトリング砲のような連射速度で撃ち出された。


「ちょっ、なにそれッ!?」


 レイは上空で美しい翼を羽ばたかせ、咄嗟に両手を前に突き出した。

 地底湖から水を巻き上げ、自身の前方に分厚い『水柱の盾』を何重にも展開する。

 純粋な水魔法同士のぶつかり合いであれば、レイに分があるはずだった。


 だが、リュネの放った泥弾が水柱の盾に着弾した瞬間、レイの顔色が変わる。


 ドゴォォォォンッ!!


「きゃああっ!?」


 レイの展開した分厚い水の盾が、たった数発の泥弾の直撃を受けただけで、ガラスが割れるように容易く粉砕されたのだ。

 泥弾には、魔法で高密度に圧縮された『岩』や『土砂』が混ざり込んでいる。

 物理的な質量を持った、まさに砲弾の雨。

 一発ならまだしも、質量をもった何百という砲弾の雨を、水柱だけでは防ぎきれない。


「くっ、このぉっ!」


 レイは空中で急旋回すると、殺到する泥弾の軌道から間一髪で逃れる。

 彼女が直前までいた空間を、数百発の泥弾が通り過ぎ、洞窟の壁面にドスドスと突き刺さって巨大なクレーターを穿っていった。

 もし直撃していれば、細身のレイの身体など簡単にミンチにされていただろう。


「あら、逃げ足だけは小鳥のように素早いですこと」


「虫でも小鳥でもないわ! あたしはセイレーンよ!」


 レイは激しく飛び回りながら、反撃とばかりに空から【水刃ウォーターカッター】の雨を降らせる。

 だが、リュネは焦る素振りすら見せず、再び扇を軽く振った。


 ズズンッ!


 リュネの足元から、極めて分厚く、そして強固な『土の防壁』が瞬時にせり上がり、傘のように彼女の上空を覆い隠した。

 レイの放った水刃が土の防壁に突き刺さるが、深く抉ることはできても、貫通には至らない。


「なら、これならどう! ――喰らい尽くせ、【水竜の顎(ドラゴンズ・ファング)】!!」


 レイが両手を大きく広げ、莫大な魔力を地底湖へと注ぎ込む。

 湖の表面が大きく隆起し、そこから巨大な竜を象った『水の激流』が顕現した。

 全長数十メートルにも及ぶ水竜が、咆哮を上げながらリュネの土の防壁ごと噛み砕こうと突進する。


「……ふん」


 リュネは土の防壁を解除すると同時に、自らの魔力を水竜へと撃ち込んだ。


「――【泥岩化マッド・ドレイン】」


 水竜がリュネに到達する前に、その身体を構成していた水が、下部から重い土砂の塊へと変わっていく。

 やがて重力に逆らえなくなった水竜は、リュネの目の前でただの巨大な泥の塊となって岩盤に崩れ落ちた。

 リュネの土魔法によって、レイの水魔法がことごとく無効化されていく。


「土魔法とか……さっきから、ちょこざいなんだけど!」


「お褒めに預かり光栄ですわ」


 激しい爆音と水飛沫が舞う中、足場の端で縮こまっていたミロとネムは、その常軌を逸した魔法戦を震えながら見上げることしかできなかった。


「すげぇ、あの魔物……あのエルフのババアと、互角に魔法で撃ち合ってやがる……!」


「あの子、一体どれほどの魔力を持っているの……? あんな大魔法を連発すれば、普通なら魔力が尽きるはずよ」


 ネムは、空を舞うレイの姿に畏怖の念を抱いていた。

 リュネの強さは、これまで奴隷として間近で見てきたネムたちが一番よく知っている。

 Bランクの魔術師の魔法ともなれば、魔物の群れを一撃で消し飛ばすほどの威力がある。

 それを、多彩な水魔法で捌ききり、反撃まで行っているレイは、完全に規格外の魔物であった。


 ドバァァンッ!


 再び泥弾と水流が衝突し、激しい水蒸気となって視界を白く染める。

 その白煙を抜け、レイが上空へと舞い上がった。

 激しい回避運動と大魔法の連続に、レイは少しだけ息を弾ませる。

 美しい蒼い髪が、汗と水飛沫で額に張り付いていた。


 対照的に、リュネは涼しい顔で扇を仰いでいた。

 ドレスに一滴の泥はねすら許さず、呼吸の乱れも一切ない。

 リュネは、上空で息を整えるレイを見上げ、冷ややかな笑みを浮かべた。


「……ふふっ。ただの害虫かと思いましたが、訂正してあげますわ。あなたは中々に優秀な魔物のようですわね」


「誰が害虫よ! こんな、美少女に向かって失礼ね!」


 レイが牙を剥いて言い返すが、リュネは気に留める様子もなく、値踏みするような視線をレイに向けた。


「それほどの魔力……あなたが、このダンジョンのボスなのかしら?」


「…………は?」

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