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魔物合成で世界に抗う反逆譚~HP10の凡人おじさん、ダンジョンマスターになる~  作者: 藍之介
vs.『ダンジョン討伐軍』編

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第65話 vs.討伐軍 ④ -地底湖の戦い-

 第一階層の森林エリアから第二層へと続く道。

 その道を進むにつれ、第一階層のむせ返るような土と血の匂いは、ひんやりとした湿気を帯びた冷たい空気へと変わっていく。


「……ここは」


 先行して第二層に足を踏み入れたミロが、暗闇の中で猫のような瞳孔を開き、息を呑んだ。

 そこは、先ほどの鬱蒼とした森とは全く異なる、異質な空間だった。


 果てしなく広がる、巨大な地底湖。

 天井は高く、微かな青白い燐光を放つ鉱石が水面を幽玄ゆうげんに照らし出している。

 しかし、その光は水底を照らすことはなく、水の中は底知れぬ漆黒の闇に覆われていた。


 そして、広大な湖の真ん中を突っ切るように、『一本の岩道』が真っ直ぐに伸びている。

 幅は馬車が一台通れる程度だろうか。

 もし足を一歩でも踏み外せば、そのまま暗い冷水の中へ落ちてしまう。

 逃げ場がない一本道であった。


「……ふん。森の次は湖か。下等なダンジョンのくせに、随分と環境を変えてくるものだな」


 背後から歩いてきたセラドが、つまらなそうに湖を見渡して言った。


「ジメジメとしていて、不愉快な階層ですわね。私の服が濡れてしまうじゃない」


 その隣で、リュネも来ている服の裾が濡れないよう、軽く持ち上げながら、不快そうに眉をひそめている。


「……おい、お前たち」


 セラドの冷たい声が、立ち尽くしていたミロとネムの背中を打つ。


「誰が止まっていいと言った? さっさと先に進め」


「……っ、はい」


 ネムは唇を噛み締め、ミロと視線を交わした。

 進むしかない。

 お互い覚悟を決めて頷き合うと、ゆっくりと一本道を進み始める。


「行くぞ、ネム。俺の背中から離れるなよ」


「ええ、気をつけてミロ」


 ミロが両手にダガーを構え先行し、ネムがその後ろに続く。

 チャプッ、チャプッ……という水音が、静寂の空間に不気味に響き渡る。

 真っ暗な水底から、何かに見られている感覚があった。


 そして、歩き始めて数分が経った頃。

 周囲の空気が、じっとりと重くなったように感じた。


 ピクッ、と。

 ミロの頭頂部にある猫耳が、微かな異音を捉えて反応する。


「……止まれ! 何かいるぞ!」


 ミロの警告と同時だった。

 静かだった左右の湖から、ブクブクと不気味な泡が立ち上り始めた。


「ゲコォ……」


「ゲコ、ゲコッ……!」


 暗い水面から耳障りな鳴き声を上げながら、極彩色の『それら』が姿を現した。


***


「……第二階層に入ったか」


 ボンドは、ダンジョン・コアの前に座り込み、目を閉じたままポツリと呟いた。

 俺の脳内には今、第二階層である地底湖の様子が、鮮明な映像として流れ込んできている。

 『ポイズン・トード』の視界共有によるものだ。

 水面から顔を出すようなアングルで、岩道を歩く四人の姿がはっきりと見えていた。


 先頭を歩くのは、猫の耳と尻尾を持った獣人の少年。

 その後ろには、浅黒い肌の銀色の髪の少女。

 そして、その後方で悠然と歩く、絵に描いたような美貌と尖った耳を持つ、二人のエルフ。


「エルフ……か。ゲームや漫画でしか見たことがない種族が、この世界では本当にいるんだな」


 現代日本のサラリーマンだった俺からすれば、本来なら感動すら覚える光景だろう。

 だが、現実は残酷である。

 こいつらは、俺を殺しに来た恐るべき敵なのだから。


 そうして、俺がポイズン・トードの視界を通じて状況を確認していると、ふと、隣にいるはずのレイがいないことに気がついた。

 少し前まで、蟻たちの活躍にキャッキャとはしゃいでいたはずだが。


「あれ? アビス、レイはどこ行った?」


『レイ殿ならば、先ほど「あたしの縄張りにゴミが入ってきたから、ちょっと行ってくるねー!」と、第二階層へ向かわれましたぞ』


「いつの間に……」


 まるでコンビニにでも行くかのようなノリで迎撃に向かってしまったレイに、俺は思わず頭を抱えた。

 相手は、吸血蟻ブラッド・アントの群れを無傷で突破してきた化物だというのに。


「はぁ……。勝って、無事に戻ってくればいいけど……」


 俺は気を取り直して、視界を共有しているポイズン・トードに意識を向ける。

 深海の塔のクリア報酬として召喚リストに加わった、極彩色の猛毒蛙たち。

 最初は二匹だけ召喚したのだが、第二階層に湖を作ってからというもの、彼らも少しずつ自然増殖を始めていた。

 今では、10匹以上の立派な『毒蛙部隊』となっている。


 普段のこいつらの様子はというと。

 レイが歌っていると、水面から顔を出して「ゲコッ!」「ゲコゲコッ!」と合いの手を入れていたり。

 レイがターンを決めれば、蛙たちも跳ねる。

 レイが「みんな、ありがとー!」と手を振れば、一斉に喉を膨らませて鳴く。


 要するに、レイの熱狂的な観客ファンであった。

 レイ自身も「あたしの可愛いファンたち」と呼んで可愛がっているようで。

 餌を与えたり、一緒に泳いだり、微笑ましい(?)光景を何度も目にしていた。


 そんな蛙たちに、俺は戦いの合図を出す。

 

「行ってこい。レイの舞台ステージに土足で上がる連中に思い知らせてやれ」


 俺の意志に呼応し、ポイズン・トードたちが、暗い湖から岩道に向けて一斉に跳躍した。


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