表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物合成で世界に抗う反逆譚~HP10の凡人おじさん、ダンジョンマスターになる~  作者: 藍之介
vs.『ダンジョン討伐軍』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/74

第43話 深海の塔 -第2層- ④

 深海の塔の探索が進み、数時間が経った頃。

 俺たちは、一際巨大な空間へと足を踏み入れた。


「ここは……」


 通路を抜けた先には、ドーム状の天井を持つ大広間ホールが広がっていた。

 これまでの通路とは違い、水深は俺の腰のあたりまで深くなっている。

 青白い燐光りんこうが水面を照らしているが、水深が深いためか、水底の様子は全く見えない。

 広間の中央には、太い石柱が何本も立ち並んでいる。

 まるで水没した神殿のようだ。


「マスター、気をつけて。水の流れが、少し変だよ」


 先行して空中を飛んでいたレイが、ピタリと動きを止め、険しい声で言った。

 彼女の視線は、広間の中央――暗く沈んだ水底に向けられている。

 その中心部だけは、もっと水深が深いように見える。


「敵か?」


「うん。……大きくて、冷たい魔力の塊。水底にじっと張り付いてる」


 レイの警告と同時だった。

 静かだった水面が、突如として不自然に隆起した。


 ボコッ……! ボコボコボコッ!!


 広間の中心部から、巨大な影が一つ浮上してくる。

 水を割って現れたのは、巨大な烏賊いかだった。

 頭部は鐘のように大きく、五メートルはあろうかという大きさ。

 触手は太いもので人の胴ほどもあり、吸盤の縁には鋭い歯のようなとげがびっしりと並んでいた。


『主! あれは、【クラーケン】というCランク相当魔物です!』


 アビスからの念話が響く。

 その巨大な怪物が、巨大な広間の水中で、俺たちを完全にロックオンしていた。


「ギョォォォォォォッ!!」


 クラーケンが、耳障りな咆哮を上げる。

 それを合図に、水中に潜んでいた複数の触手が、水面から一斉に襲い掛かってきた。


「なっ!?」


 大蛇のような触手が、こちらへ殺到する。

 俺は水に足を取られ、回避すらできない。


『主には手を出させぬ!』


 主人の危機に、一瞬早く動いたのはアビスだった。

 アビスは、自身の巨体が沈み込むのも構わず、水しぶきを上げて俺の盾となるように立ち塞がる。


 巨大な触手が、アビスの青黒い装甲に激突。

 大きな衝撃音とともに、吸盤の牙が装甲を削り取ろうとギリギリと嫌な音を立てる。

 だが。


『……浅はかな。この程度の攻撃で、この装甲を貫けるとでも思っているのか』


 アビスは、その場から一歩も退かなかった。

 その背中に守られながら、俺は安堵の息を吐く。

 敵の先制攻撃に、 鬼の将軍(鬼一)も黙ってはいなかった。


「ふむ……水のせいで多少動きにくいが、問題では無いな」


 鬼一の低い声が、大広間の湿った空気を震わせる。


「斬れぬ理由には、ならぬ」


 次の瞬間、鬼一の身体が消えたように見えた。


「――断て」


 喰血くうけつが抜かれる。


 ヒュン、と。

 空気より先に、水が裂けた。


 目にも留まらぬ初太刀しょだちが、一本の触手を断つ。

 返す刃で二本目も両断する。

 そのまま、三本、四本と、流れる用に斬っていく鬼一。

 腰まで水に浸かっているというのに、それを感じさせない速さ。


 切断面から、黒ずんだ血が噴く。

 クラーケンが悲鳴を上げる。


「ギャギィィィィッ!!」


 鬼一はクラーケンへ正面から飛び込んだ。

 膨れ上がった脚力が水流を踏み潰し、石床を砕く。

 通常、水中での戦闘は圧倒的に不利だ。

 水の抵抗で、陸上の動物の動きは半減する。

 しかし、B+ランクの魔物である彼にとって、そんな物理法則は些末さまつな障害に過ぎなかった。


「水の抵抗如き、我が刃のかせにはなり得ぬ」


 鬼一が腰を深く落とし、『喰血くうけつ』を構える。

 一瞬の静寂。

 そして。


「――瞬斬しゅんざん


 短い呼気と共に放たれたのは、目にも留まらぬ神速の一閃。

 鬼一の莫大な膂力りょりょくと、天才剣士から受け継いだ剣技が融合した斬撃。

 刃が水を切り裂く速度が、水が元に戻る速度を完全に上回った。

 瞬間、鬼一の太刀筋に沿って、水中が真空状態となり、パカッと空間が割れたように水底の石床が露出した。


 ズッシャァァァァァァッ!!


 空気を裂くような鋭い音の直後、クラーケンの無数の触手が、まるで細い糸のようにプツン、プツンとすべて切断された。

 一拍遅れて、切断面からドバァッと赤黒い血が噴き出し、広間の透明な水があっという間に濁っていく。


「ギョベェェェェェェッ!?」


 自慢の触手を一瞬で細切れにされたクラーケンが、苦悶の叫びを上げてのたうち回る。


「フン……手応えのない」


 鬼一は血に濡れた妖刀を静かに振り払う。

 その圧倒的な剣技に、俺は鳥肌が立っていた。


面白い、続きが読みたいと思っていただけましたら、ブックマークと評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ