第102話 勝利の条件
お久しぶりです!
ようやくプロットに目途がついたので、ゆっくりですが更新を再開します!
血と鉄の匂いが立ち込める第三階層の最奥。
王都のBランク冒険者パーティ『銀葉の魔術団』が率いる、討伐軍との死闘は、俺たちの勝利で幕を閉じたはずだった。
だが、俺の右手に握られた端末は、いまだにストーリー未達成の文字と、物々しい警告音を鳴らし続けているのだった。
冒険者たちは倒した。
セラドも、リュネも死んだ。
あの精霊女王ですら、バフォメットが消し飛ばした。
それなのに――
まだ、終わっていないなんて……。
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【警告:制限時間残り、50分30秒】
条件未達成:速やかに侵入者を戦闘不能にしてください
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「……嘘だろ。なんで消えないんだよ」
「マスター?」
ただ事ではない俺の表情、そして空間を満たすデバイスの無機質な警告音に、皆が自然と集まってきた。
つい先ほど、俺たちが救い出したばかりの、ガルム、ミロ、ネムの三人も、戸惑ったように視線をこちらに向けている。
「どうしたの? 顔、真っ青だよ?」
レイが俺の顔を覗き込みながら、心配した声を出す。
『主よ、どうかなさいましたか?』
アビスの念話も、静かに頭の中へ響いてくる。
鬼一やカーミラも、俺の方へ視線を向けていた。
「……全員、集まってくれ」
俺は喉の奥から、どうにか声を絞り出す。
その異様な雰囲気を察したのか、勝利の余韻にわずかに緩んでいた仲間たちの表情が、一瞬で戦場のものへ戻る。
バフォメットだけが「ひぃぃ、また何か起きたんですかぁ……」と小さく震えていた。
そして。
自由になったばかりの三人も、こちらを心配そうに見つめている。
「ボンドさん……?」
ダークエルフの少女、ネムが怯えたようにアメジスト色の瞳を揺らす。
ネムは、まだ顔色が優れないでいる。
俺は画面を凝視したまま、乾いた喉を鳴らした。
画面に浮かぶ文字が、これ以上ないほど残酷な現実を告げていたからだ。
ミロは、俺と端末を交互に見ながら、嫌な予感に耳を伏せていた。
ガルムは何も言わない。
ただ、その鋭い目で、俺の表情を読もうとしている。
「……悪い。これを見てくれ」
俺は端末の画面を、皆に見えるように差し出した。
沈黙が落ちる。
冷たい洞窟の空気が、さらに一段温度を下げた気がした。
「侵入者……残り、三名……?」
ミロが、ぽつりと呟く。
最初は理解が追い付いていないようだった。
だが、次の瞬間、彼の瞳が大きく揺れる。
「ストーリー……俺に課せられた使命の、クリア条件だ……。『討伐軍の全滅』。それが……まだ達成されていないことになってる」
「……おい。まさか」
ミロの顔から血の気が引いた。
獣の耳がぺたりと倒れ、尻尾が小刻みに震える。
「まさか、それ……その三人って俺たちのことか?」
誰も答えられなかった。
答えられるわけがない。
だが、端末は冷徹にも警告を発し続けている。
それが答えの代わりであった。
「俺たちは奴隷として無理やり連れてこられただけだ! セラドは死んだ! なのに、俺たちをまだ『敵』として認識してやがるのか!?」
「そんな……」
ネムが、か細い声を漏らした。
「落ち着け」
俺は二人をなだめる。
「少なくとも、俺はお前らのことを敵だとは思っていないさ」
その言葉を聞いて、ネムはすがるような目を俺に向けた。
「ボンドさん……。信じていいんですよね?」
「あぁ! まぁ……何とかなるさ!」
「ボンド殿。何か方法はあるのか」
腕を組んで、状況を注視していたガルムが口を開く。
「そうだな……」
俺は顎に手を添えて考える。
その時、ネムが一つ提案する。
「ボンドさん、もし私たちがこのダンジョンの『外』に出れば……! 討伐軍ではなく、ただの迷い人として扱われるかもしれません。試させてください!」
「そうか、三人がダンジョンの外に出れば、侵入者判定が消えるかもしれない。よし! 物は試しだ」
俺の相槌に、ミロとガルムも小さく頷く。
それがどれほど薄い希望なのか、俺も三人も分かっている。
それでも、試さずにはいられなかった。
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