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魔物合成で世界に抗う反逆譚~HP10の凡人おじさん、ダンジョンマスターになる~  作者: 藍之介
vs.『ダンジョン討伐軍』編

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101/110

第101話 vs.討伐軍 ㊴ -戦いの後-

 しばらくの間、互いの生存を確かめ合うように抱き合っていた三人だったが、やがてガルムが静かに涙を拭い、ネムとミロの肩に手を置いて、ゆっくりとこちらを振り向いた。

 ガルムは二人を伴いながら、ボンドの前まで歩み寄ってくると、その巨大な体躯を深く折り曲げ、地面に膝をつく。

 それに続くように、ミロとネムもボンドの前に並んで跪いた。


「……ダンジョンの主よ。いや、ボンド殿といったか」


 ガルムが謝意を伝える。


「俺たちの命を、そして何より、仲間の未来を救ってくれたこと、言葉では言い尽くせぬほどの恩義を感じている。セラドの呪縛からネムを解放し、俺たちをこうして再び引き合わせてくれた。貴殿は、俺たちの生涯の恩人だ」


 ガルムは一呼吸置いた。

 そして、横にいるネムとミロに視線を送る。

 二人も頷いている。


「改めて自己紹介をさせてほしい。俺の名はガルム。見ての通り、虎獣人の戦士だ」


 続いてミロが少し照れくさそうに、自己紹介をする。


「俺はミロ。狼の血を引く斥候シーフだ。……さっきは、あんたのことを色々言っちまって、悪かった! ネムを……俺たちを助けてくれて、ホントにありがとな」


 ミロが不器用ながらも精一杯の感謝を口にすると、最後にネムが挨拶する。


「私は、ダークエルフのネムと言います……。あの首輪のせいで、身体が引き裂かれそうに痛くて……いつ死んでもいいって、ずっと思っていました……。でも……ボンド様が、温かい光で、私を暗闇から救い出してくれた……」


 ネムはまだ息が少し荒く、時折苦しそうな表情を滲ませながらも、一言一言を噛み締めるように言葉を紡ぐ。


「助けていただいて、本当に……ありがとうございました……っ!」


 三人が俺に向かって、深く、深く頭を垂れる。

 なぜだか、胸の奥が熱くなり、俺は小さく鼻をすすった。


「顔を上げてくれ、三人とも。……これからはあのエルフに怯える必要はない。どうか三人で自由に生きてくれ」


 俺が優しく声をかけると、三人は救われたような表情で顔を上げた。

 ただ理不尽な奴隷の呪いのせいで命をもてあそばれていた彼らが、ようやく手に入れた本物の自由だ。


「バフォメット、頼む。ガルムとミロの首輪も外してくれ」


 俺がそう言うと、バフォメットは羊の耳をぴんと立て、顔を真っ青にした。


「へっ? む、無理、無理ですぅ! ネムさんの首輪だって、どうやって外したのか分かりませんし……!」


「そこをなんとか頼む!」


「えぇ……私なんかが触ったら、逆に爆発して死んじゃうかもしれませんよぅ……」


「大丈夫だよ! バーちゃんなら、きっとできるって♪」


 レイが背後から、ぐいぐいとバフォメットの背中を押す。


「ば、バーちゃん!? 私、そんな年寄りっぽい名前じゃ……!」


「ねえねえ、バーちゃんの能力、見たい見たい!」


「ひぃぃっ、期待の圧が強いですぅ!」


 バフォメットは涙目で、近づくレイを手で押しのけるが。

 やがて、観念したように肩を落とした。


「わ、分かりました、分かりましたから! やりますぅ……」


「まぁ、あの様子なら何とかなりそうだな」


 俺は小さく息を吐く。

 

「……さてと」


 俺はポケットから端末デバイスを取り出した。

 勝利の余韻に浸ってばかりもいられない。

 ストーリークリアによる、成果を確認しなければならない。

 今までの経験上、すぐに新しい試練ストーリーが更新されるはずだ。


 画面を立ち上げ、まずは自身のステータスを開く。


-----------------------------------------------------

名前:ボンド

職業:ダンジョンマスター LV:11(+1)


HP:64/64(+6)

MP:52/52(+7)


筋力:24(+4)

魔力:31(+4)

耐久:26(+5)

俊敏:23(+5)

運 :34(+6)


【スキル】

・魔物合成(LV:2)

・鼓舞(LV:1)


【実績】

深海の塔:第2階層突破

-----------------------------------------------------


「おっ、レベル11まで上がってるな」


 ハイエルフと精霊女王を倒した経験値は莫大だったようだ。

 バフォメットを合成した時より、もう1レベル上がっていた。

 レベルアップに伴い、画面にはシステムメッセージのポップアップが通知されていた。


-----------------------------------------------------

『新しい魔物の召喚リストが解放されました』


『ダンジョン構築機能が拡張されました』


【フィールド改装】(毒沼、雪原)が追加されました

【ダンジョン構築】(転移陣)が追加されました


『氷の神殿に行けるようになりました』

-----------------------------------------------------


「おお……! 新しい魔物と新しいダンジョン環境……。それに、新しいダンジョンか!」


 新たな機能の詳細が気になって仕方ないが、逸る気持ちを抑え、【ストーリー】のメニューをタップした。

 厄介だった、ストーリーは無事にクリアした。

 だが、既に次なる試練が更新されているかもしれない。


 すると、画面が切り替わり、詳細が表示される。


-----------------------------------------------------

【ストーリー6:討伐軍レイドの胎動】


『鋼の薔薇』全滅。

Cランクのトップパーティであり、いずれBランクへの昇格が約束されていたエリートたちの死は、冒険者ギルドに計り知れない衝撃を与えた。

あのダンジョンには、異常な魔物が存在している。

そんな噂がギルドや町中を駆け巡っていた。

最早、【嘆きの森】を管轄している冒険者ギルド支部だけでは、対処が不可能と判断された。

冒険者ギルドは、ダンジョンの推奨ランクを更に引き上げることを決定。


また、冒険者ギルド支部は王都のギルド本部に正式な救援を要請。

かくして、本格的な【ダンジョン討伐軍レイド】が結成されることとなった。


中核となるのは、王都にその名を轟かせるBランクパーティ『銀葉の魔術団シルバーリーフ』。

さらには、討伐軍レイドとしてC・Dランクパーティが数組、大規模な連合部隊として編成されることとなった。

総勢数十名に及ぶ、冒険者パーティたち。

彼らが準備を整え、嘆きの森へ到達するまで、残された時間はあと1ヶ月である。


ボンドよ、死の足音は確実に近づいている。

この1ヶ月の間に、戦力とダンジョンを構成し、防衛準備を整えなければならない。


なお、戦力増強のために、いつでも『深海の塔』へアクセス可能となった。

闘争の中で、己の牙を研ぎ澄ませ。


ミッション:ダンジョン討伐軍レイドの全滅

制限時間:0日1時間13分

-----------------------------------------------------


「……え?」


 俺は、画面を見つめたまま固まった。

 読み間違いかと思った。

 そこに表示されていたのは、俺たちが死闘の末にクリアしたばかりのミッション内容。

 あのエルフが率いていた軍団こそが、このテキストにある『ダンジョン討伐軍レイド』だったはずだ。


 だが、画面にはそれしか表示されていなかった。


「おいおい、冗談だろ……?」


 もう一度、画面を閉じる。

 トップメニューに戻る。

 深呼吸して、再び『ストーリー』を開く。


-----------------------------------------------------

ミッション:ダンジョン討伐軍レイドの全滅

制限時間:0日1時間9分

-----------------------------------------------------


 俺が困惑していると、デバイスの画面全体が、突如として不吉な真っ赤な光を点滅させ始めた。

 ピィィィィン! ピィィィィン!

 無機質な警告音が鳴り響き、画面の中央に一つのポップアップウィンドウが強制的に割り込んでくる。


-----------------------------------------------------

【警告】

『ダンジョン討伐軍レイド』が侵入しています。

速やかに、侵入者を戦闘不能にしてください。


侵入者残り:3名


制限時間:0日0時間59分

-----------------------------------------------------


「……侵入者が……残り、3名?」


 俺の心臓が、ドクンッと嫌な音を立てて大きく跳ねた。

 討伐軍レイドの生き残り? 

 バカな、冒険者たちも、エルフたちも全滅させたはずだ。


 第一階層からこの最深部に至るまで、他の敵など存在しない。

 このダンジョンの中にいるのは、俺と配下の魔物たち、そして――。


 俺は、デバイスから顔を上げ、ゆっくりと視線を動かした。


 少し離れた場所で。

 自由の喜びを分かち合い、肩を寄せ合っている三人の姿があった。


 俺の頭の中で、冷や水を浴びせられたように、理解が急速に広がっていく。

 彼らはエルフの奴隷だった。

 だが、ダンジョンのシステムから見れば、彼らは『ダンジョンに侵入してきた討伐軍』として登録されている。

 奴隷の首輪が外れようが、心を通い合わせようが、そんな情報はシステムには関係ない。


 そう。

 システムが要求している『残りの侵入者』とは。

 今、俺が命懸けで救い出したばかりの、ネム、ミロ、ガルムの3人のことだったのだ。


「ウソ、だろ……」


 俺は、震える手でデバイスを握りしめたまま、その場に立ち尽くすのだった。


いつもご覧いただき、誠にありがとうございます。

これで、vs.『ダンジョン討伐軍』編は完結です!

次回の話まで、少し期間が空くと思います。

できるだけ早く帰ってきますので、少々お待ちください!


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