キ:待ち構えていたお客を捌く
3回目のフリーマーケット、僕らの同盟の店は今回も盛況です。
「メテオお願いします!!」
「トマト結晶くださぁーい!!」
「小麦! 買えるだけ!!」
「マナの果実プリーズ!!」
「うおおお! なんだこの岩は!?」
「呪術関連グッズオネシャス!!」
「素材と溶岩くださぁーい!!」
(競りかな?)
(……雰囲気は完全に市場)
前回も最初に来たガチ商人ですみたいなヒト達と一部の愉快な仲間達が、今回も一番乗りで購入に来ている。
たぶん職人以外はクランの兵站担当なんだろうね。愉快な仲間達が後ろで静かに頭数と荷物持ちに徹してるから。
(ガルガンチュアさんの所とかお嬢様の所とかもさ、しれっと混ざってたりするのかな?)
(……かもしれないな)
なんたってシ◯ッカーで顔が見えないからね。
クランの皆で使えそうな物とか装備に使えそうな素材とかがすごい勢いで買われていって……そして波が引くようにラッシュは終わった。
「はい、第一波おつかれー」
「おつかれー」
「こ、今回もすごかったですね!」
「前よりも多めにしておいてよかったわ」
「ハッハッハ! フリマはこれが楽しくて良いな!」
「……まぁ、フリマだけなら」
「嵐が通り過ぎていったッス……」
「出したら意外と需要はあるもんだねー」
ちょっと疲れたから交代でひと休み。
ずっと近くに座って睨みをきかせてくれていた戦隊のレッドさんにも、知恵のリンゴジュースを差し入れ。一緒にラウラさんも、自分の所の小麦で焼いたパンを差し入れした。
「そういえば戦隊レッドさん。前回の林檎で出た山の上のドラゴンは行ったんですか?」
「ああうん、行った」
「どうでした?」
「勝った」
「わぁー」
勝ったんだぁ、腕試しドラゴン。
レベルいくらくらいのドラゴンだったんだろね。
僕らが会った坑道のスケルトンドラゴンさんは100超えだったけど、あれより強いのかな。
リンゴジュースとパンをムシャムシャと食べたレッドさんは……
「……『月夜桜の都にいるアヤカシの大親分は、自分に勝てる猛者を求めている』……だと?」
デジャヴを感じる殺気を滲ませた声で呟きながらゆらりと立ち上がりかけて……また戦隊のホワイトさんにハリセンでしばかれてた。
「へぇ~、アヤカシの大親分って強いんだ?」
「ああ、うん……強いね。あれはだいぶ強いよー」
「も、森呪術士さん、会ったことあるんですか?」
「身長縮んだ時に挨拶したー」
「む、やはり縮んでいたか! 気のせいかと思っていた!」
「そりゃ森巨人パイセンがデカいから細かい違いが分かんなかっただけっしょ」
それぞれが好き放題に情報を垂れ流している横で、通路の邪魔にならない位置に固まっている数人が、鬼気迫る雰囲気でせっせと何かのメモを取っていた。
* * *
今回、フリマが開催されたタイミング的に1番需要と供給に影響を受けたのは種とか苗として扱える植物系の素材だと思う。
なんと言っても、直前に『豊穣神の万能ミニ植木鉢』なんていう神アイテムが解禁になったから。
この同盟が売っている品物の中だと……
僕らの所はまず『知恵の林檎』。そして今回は結晶にしていないのもいくつか持ってきた『満ち夢ちトマト』、それから『ストロングハートベリー』。
ラウラさんの所は、『祝福の〜』系の神域に生えている作物。
そして何より、カステラさんの所の世界樹系の植物素材。
この辺は供給元が僕らしかいないのに効果が高いから、当然万能ミニ植木鉢で育てたいヒトが大勢いる。
だから売り始めた直後から『これ育ててもいいですか?』って質問があまりにも多すぎて……奇声を上げたカステラさんが立て看板を店の前に(僕らの許可を取ってから)ぶっ立てた。
『販売している植物系素材は、ご自由に万能ミニ植木鉢に使用して構いません』
そもそもダメならこのタイミングで売りに来てないよ。
流通したらイヤだなーとか怖いなーって物はそもそも売りに出していないのだ。デスポテトとかね、持ってきてもいないもん。
「えー、どれ植えようかなー?」
「やっぱ小麦かな、料理に使えるし……」
「マナの果実はすごい時間かかるって、どれくらいだろ?」
何故かお玉とか泡立て器を片手に持ったショ◯カー達が、キャッキャと楽しそうに会話しながら購入した素材片手に去っていく。
ただ申し訳ないんだけど……今回、微睡の木は持ってこなかった。
「えーっとー……珍しい木材とか無いですか?」
一応、バレバレではあるんだけど匿名参加のイベントだから、みんなこうやってセーフラインギリギリの感じで訊いてくれるんだけど……
「あー、えっとですね……最近の敵対組織が珍しい木材を探してるって話があって……流通して敵に使われるとまずいかなーと思って、今回は控えたんですよ」
錬金術士関係がまだ解決してないからね……だから揺り籠の木も同じく、持ってきていない。
それを聞くと、質問したヒトは大体が……
「うわ、そうなんですか……つまり、さっさと敵対組織をぶっ潰さなきゃ……」
……って感じに殺意を滾らせて去っていった。
まぁ気持ちはわかるよ。
僕だって面白いモノが見られるって思って見に来て、敵対組織のせいで延期になったら、潰さなきゃって思うもんね。
敵対錬金術士関係が解決したら、小さい枝を挿し木用に売るのは全然構わない。それこそ次のフリマを待たなくても、パピルスさんのところに卸してもいい。
そう考えると、現状、僕らの最大の敵は悪い死霊魔法使いじゃなく錬金術士の組織なのかもしれない。
(早く錬金術士滅ぼしたいねぇ)
(……急にどうした)
『敵対』って付けずに念話で呟いちゃったから一瞬とんだ誤解を招いてしまった。




