キ:オバケ三兄弟のブリックブレッド観光
適当な雑貨屋さんで小さな手鏡をいくつか買って帰宅。
僕の【鏡魔法】で『変身看破の手鏡』を何個か作成した。
変身するタイプの敵がそこら辺うろうろしてるなら、どこで必要になるか分からないからね。
ジャック達やおチビちゃん達の分も作ってみた。使う機会があるかは分からないけど、一応ね。ポケットにも入るようなサイズの革ケース付きを選んだから、簡単には割れないはず。
そうして作った鏡を皆に渡していると……ジャックが新聞片手にやってきた。
世の中の動きは知っておいて損はないだろうって、僕らが読み終わった新聞は皆に渡しているのだ。
「ねぇマスター、今日ってマスターは忙シイ?」
「んー? 特に何も予定は無いけど?」
「じゃあサ、ブリックブレッドに行ってみたいんだケド、ダメ?」
ソワソワしているジャックが言うには。
新聞のメイン記事、ピリオノート襲撃の話の中で、東側が城門前まで敵が来た事が書いてあったのを読んだらしい。
ジャックの前の故郷と同じ名前のブリックブレッドの辺りをスタンピードのモンスターが通過したって書いてあったから、それで気になったみたいだった。
「……そういえば、なんだかんだジャック達はブリックブレッドに行ったことなかったね」
「そういえばそうだな」
いくら名前が同じとはいえ、さすがに内部処理的には別扱いだろうと思ってたし。
でもそっか、名前が同じだと気にはなるよね。
保護対象のキャトナちゃん達が来てからは、戦闘以外でジャック達だけ連れ出すのもどうかなーと思っちゃって、バレンタイン以降はあんまり観光とかはしてなかったね。
「せっかくだから連れて行ってみようかな」
「ふむ……それなら俺が留守番しておこう。小粒達見てるよ」
「そう? じゃあよろしく」
相棒が構ってくれるなら、おチビちゃん達もしょんぼりはしないでしょう。そもそもまだ全然外には行きたがらないし。
「じゃあ行ってきまーす」
「いってらっしゃい」
変装はしたままだったから、このままで準備も特に必要無し。
ジャック三兄弟を連れて、僕はブリックブレッドへと転移した。
* * *
久しぶりのブリックブレッドは、相変わらず綺麗な観光地って感じの街だった。
レンガ造りの建物が並ぶオシャレな街並みに、食べ物の露店がチラホラ。あちこちに花飾りもあって、お貴族様っぽい観光客が多い。
大きな時計塔も完成してて、中世ファンタジー世界だと都会って感じ。
「ワー、これがブリックブレッドカァー」
「フム、大きな街デスナ」
「四角いですね」
完全にお上りさんなリアクションをするジャック達。
まぁ僕らの拠点は辺鄙な森の中の集落だから、お上りさんで何も間違ってはいない。
「あ、でも……モンスターの進路上にあった〜みたいな書き方の割には、全然襲われてた感じはしないね?」
「ア、確かにそうカモ」
観光しながら街をぐるーっとまわってみたけど、特に建物が壊れてたりとか、何かを修理してるとか、そういう現場は全然なかった。
「きっちり防衛しきったのかな。これだけ立派な開拓地なら防衛も上手なんだろうし」
「無事ならヨカッタ」
嬉しそうなジャックは上機嫌。
そうだよね。前のブリックブレッドが滅びた時にジャックはオバケになっちゃったんだし、新しいブリックブレッドが崩壊〜なんてイヤだよねぇ。
名物のレンガみたいな形のパンをお土産に買って、ダラダラと街を見てまわる。
「……あれ、変な所に壁と門があるね? 街のど真ん中だけど……」
「防衛用かもしれませんナ。有事の際にはここを閉じて、モンスターの侵入を阻む役割カト」
「あー、なるほどね」
そうだね、これだけ大きな街ならある程度区切っておかないと、街全体でこの前の闘技場みたいな乱闘になったら大変だ。
「あの時計塔、大きくてかっこいいです……糸で巣をかけたらキラキラしそう……」
「……うん、たぶん許可は下りないかな」
なにやら明後日の方向に感嘆しているマリーには、手芸屋によって好きな素材を買ってあげた。同じく手芸好きのナナちゃんにもお土産を購入。
……と、なると、キャトナちゃんとサナ君にも個別にお土産買いたいよねぇ。
何か良いものあるかなーと、キーホルダーみたいな物を扱っている露店を見てみる事にした。アイテム的にはお守りかな?
お土産屋さんのドラゴンが巻き付いてる剣のキーホルダーとか無いかなー。サナ君はああいうの好きそうなんだよね。
ジャック達と一緒にお守りを物色していると……お店の人に声をかけられた。
「……あの、もしや森女さんですか?」
「あ、はい」
「と、いうことは……そちらのカボチャさんは、もしやジャックさんですか?」
「ウン、そーダヨ」
「ああ、やっぱり」
白い髪の優しそうな顔をした若い男性店員さん。
最初NPCかと思ってたんだけど……僕をそう呼ぶって事は、たぶんプレイヤーさんなのかな。
「今日は観光ですか?」
「ですね。ジャックが来たがったんで」
「ほう? ブリックブレッドに御興味が?」
「ウン」
ジャックは自分の身の上を店員さんに話した。
別に隠してないからね。店員さんも興味ありそうだし、特に止めない。……あ、このコカトリスのお守りかわいいなぁ。自分用に買っちゃお。
「なるほど、そんな経緯が……それでしたらこちらとかいかがです?」
「ウン?」
そう言うと、店員さんは名物のレンガみたいなパンの形をしたお守りをジャックに勧めた。
「ブリックブレッドって名前の街なので、ここの住民さんはこの形のお守りを持ってるんですよ。ジャックさんも、今は所属が違っても出身はブリックブレッドということで、記念にいかがです?」
「ワァー! 買いマース!」
ジャックは喜んでブリックブレッド型のお守りを購入した。
ふふ、パンプキンヘッドとパンの形のお守りってなんか似合うねぇ。
「よかったねジャック」
「ウン!」
前の街はもうどこにも無いけど、同じ名前の街が襲撃にも負けず立派に発展しているのはジャック的に嬉しいポイントだったみたい。
ちなみに、サナ君へのお土産は良い感じのドラゴンソードお守りがあったからそれにした。
キャトナちゃんへは最近お料理の練習も始めたらしいから、パンのレシピ本と四角い型。ブリックブレッドが焼けるそうです。




