第27話 最終決戦には、こういう形で……:前編
こうして雪原で出会ったうさぎの魔物の『グラビット』。そんな彼とも滞りなくスカウトの為の戦いの話は進んだのであった。
これは話が早かった訳であるが、更に気の利いた事をグラビットは言う。
「ところでアイ様。私は裏を突くような事はしたくないから、予め言っておきますね?」
「ほう、それは何と?」
そう意味ありげに切り出して来たグラビットに、アイは興味を持ってその先を促すのであった。
「私は重力を操るのが得意なんですよね、グラビットっていうくらいですから」
それは、彼女の名前は重力と兎という二つの単語から来ているという事という意味であるのだ。
そして、その分かりやすい説明に、アイは感心する所であるのだった。
「うむ、その正々堂々とした立ち振る舞い、見事じゃぞ? 故に、その事はお主の誇りに思うといい」
正々堂々が大事な物事の全てではないのであるが、一方で自分に逃げ道を作らないその心構えというのは貴重なアイデンティティーの一つとなるのである。だから、アイはグラビットの事を褒めるべきと思い、そう口にしたのであった。
そう言われたグラビットも、満更ではない様子で以て返事をするのだった。
「アイ様にそう言われると、私というものが誇れるに値するって実感しますね♪」
そう畏まった言い方であるものの、彼女が十分に喜んでいる事は端から見ると分かるのであった。──何せ、彼女の長い耳がピョコピョコと動いていたからである。
そんな武人気質かつ正直者であるグラビットには、アイは敬意を以て戦わねばならないだろう。だが、彼女は今しがたこう思っていたのであった。
(……この者には、今からの戦い方は最後までサプライズとしておきたい所じゃのう?)
そうアイが思うのには理由があるのであった。何故なら、これから行う戦い方は、彼女はそう頻繁にやるものではないからである。
なので、取り敢えずここはまず勝負の体勢に入る事が必要であるのであった。
「では、まずお主との戦いの形に入ろうではないか?」
「望む所です♪」
売り言葉に買い言葉。一先ずこの場の戦士二人には前置きは必要なく事が進んだのである。
◇ ◇ ◇
そして、アイとグラビットはそれぞれが適度な間隔を開け、そして戦闘がいつでも始められるような姿勢となっていたのであった。
まず、目に見えた体勢となっていたのがグラビットなのだった。
その光景を見ながら、アイは目を引かれながら言う。
「ほう、それがお主の戦闘態勢か?」
「ええ、こうやって私は重力エネルギーを溜め込んでいるって訳なのですよ」
そう言うグラビットの角の色は目映くありながらも妖艶である紫色の光に包まれていたのであった。この事から、彼女が既に臨戦態勢に入っている事が分かる所だろう。
準備段階だけでこのような強烈な印象を与えるグラビットに、アイはますます期待が高まるのであった。
なので、彼女はそんなグラビットの心意気に更に答えなければいけないと思うのだ。
故に、満を持してアイはここで自分の出方をグラビットへと提示するのであった。
「「!?」」
その『出方』によって、外野であるミナトとリンは驚愕してしまうのであった。──それは、アイ『自身』が前に躍り出てグラビットへと挑むような構図となっていたからである。
その二人の驚きは当然であろう。何せ、このザファイブでの魔物との戦いでは、決まってアイは神霊機を繰り出してそれに戦わせるという手段を取っていたのだから。
しかし、今のアイを見れば、今度は彼女自らが出陣する姿勢である事は目に見えているのである。これが如何に異様な事であるかは、彼女とこのザファイブ地方を旅してきた二人にはよく分かる所であったのだ。
(父さん……どういうつもりなのでしょう?)
(ですね)
このように二人は小声でアイの真意は何であるのかを探るのであったが、こればかりはアイ本人の主張を聞かない事には分からない所であろう。
「グラビットや。お主の心意気に応える形で、今回はわし自らが相手する事にしたぞ」
「それは光栄ですね」
対するグラビットも、そんなアイの熱意がその姿勢から伝わって来るが為に、そんな態度を自分に向けてくれる事を誇りに感じるのであった。
だが、ここでアイは更に付け加えるのであった。余り付け加えなくてもいい事ではあったのだが。
「それに、お主が重力を操るというなら、それに対して無重力、即ち巫女の出番というものじゃろう?」
「いえ、その理屈はおかしいです」
折角いい感じでアイの心意気を感じ取っていたグラビットは、ここで水を指される気持ちとなってしまったのであった。
その理論は、巫女は巫女でもどこぞの腋を出した巫女であるのであろうと。
確かにアイはノースリーブの小袖(?)を着ている為に腋が露出されている状態なのであるが、それとはちょっと何かが違うとグラビットは思う所であったのだ。
ともあれ、それは別次元の話であるが為に、グラビットはそれ以上は踏み要らない事にしたのであった。少々アイへの尊敬のイメージが下がってしまったのではあるが、まあ勝負においては問題ない所であろう。
なので、気を取り直してグラビットはアイに先を促すのであった。
「それではアイ様。今回はあなた自身がどのような戦い方を披露してくれるのですか?」
「まあ、そう焦るでない」
そう言いながらアイは懐から例の如く神霊機を取り出すと、例の如くそれに神の力を投入する手筈を見せる。
「では出でよ、『カグツチ』よ!」
言って彼女は神霊機に注ぎ込む神の力を現出させるに至ったのであった。
これは例によっていつもの展開である。だが、違うのはここからであったのだ。
何と、神の力を注ぎ込んだ神霊機は、いつものように別の自立した形状の存在となる訳であるのだが、今回はそうでは無かったのであった。
今回の神霊機は、使い手であるアイ自身の肉体に装着される事となったのであった。
具体的には、その火の神の力を宿した赤く染まった機械は、二つに分かれてアイの両腕へと身に付けられる形となったのだ。
それは、まるで籠手やガントレットといった感じの様相であったのだ。
「ふむ、良く馴染んでおるわ。こういう時ノースリーブだと便利じゃのう?」
「さすがアイ様。そんな風変わりな出で立ちも、こういう時を想定しての前準備という事だったのですね?」
そう感心したように言うグラビット。だが、この言葉は彼女自身の心の中にでも留めておけば良かった事をすぐに思い知らされる事となるのであった。
「いや、このノースリーブの巫女装束は、わしの趣味じゃ♪」
「堂々と言い切りやがったよ!?」
『やがった』等と、自分が温厚である事も忘れてグラビットはそんな汚い言葉遣いをしてしまうしか無かったのだった。
「まあ、これでわしの準備も整ったのじゃから、言いっこなしじゃろう? では……」
そこで一旦言葉を区切るとアイは改めるかのようにこう締め括ったのであった。
「我が神霊機は『パンデモニウム合金』製じゃからの。その堅剛さをその身でとくと味わうが良い」
「っ……」
その言い回しと、聞き慣れない金属の名前を出されて、グラビットは思わず固唾を飲んでしまうのであった。そうさせるだけの貫禄が、見た目九歳の少女の筈のアイには存在していたのだ。
「では、始めよう」
「……お手合わせ、お願いします」
こうしてこの旅最後となる勝負の火蓋が落とされたのであった。
そして、まず最初に動いたのはアイであったのだ。
彼がそうしたのは他でもない、グラビットに敬意を示す意味合いでの事なのであった。誇りの高い彼女に対しては、まず自分から示すのが流儀だとアイは考えての事だったのだ。
それにより、アイは籠手状に纏った神霊機もろとも、両手を相手へと掲げてみせたのである。
「では、いきなり行くぞ!」
その後には話が早かったのだ。彼女の両手から、炎で形成されたエネルギーの弾丸が放出されたのだから。
「!」
その展開を目の当たりにしたグラビットは驚愕するのであった。こうも相手は迷う事なく攻撃から踏み切ってくるのかと。
だが、それは少々悪手であったのだと思い知らせるべく、グラビットもその攻撃に対応する形を取るのであった。
彼女は、先程のように自前の角を紫色に妖艶に輝かせる。すると『それ』は起こったのであった。
何と、彼女に向かっていた炎の弾丸が、突如として失速して、そのまま地面へと落ちてしまったのである。
「何と……」
これには驚いたアイであったが、だが一方で取り乱してはいなかったのであった。
加えて、そのからくりを彼女は言い当てるのだった。
「成る程、重力で炎の弾丸を地面へと引き寄せたか……?」
「ご名答です♪」
そうグラビットが得意気に答える通り、そのからくりは実にシンプルであったのだ。
だが、それはシンプルだからこそ驚くべき内容であったのだ。何せ、固体、液体、気体のどれにも属さないエネルギーである炎を地面へと引き寄せたのだから。そこに要した重力の規模は相当なものであろう。
この事にアイは驚きはすれど、戦慄したりはしなかったのである。寧ろ、このような奮闘を見せてくれた相手の魔物にますます敬意の念がその心に宿る所なのであった。
「これはいい、これはいいぞ♪ じゃから、この勝負はお互い楽しもうではないか?」
「望む所です♪」
そのアイの意見には、グラビットとて同意する所なのであった。そして、まずはアイが行動し終えたから次は自分の番だと彼女は決め込んだのだ。
「次は私の番でしょう?」
「いや、ここは『今度は俺の番だろ?』と言うべきじゃのう?」
「言いませんよ、そんな『くそみそ』な言い回しは? しかも、私は女性ですからね?」
これが、もしグラビットがオスだったらどうなっていたのかと考える事自体糞味噌な事であると言えよう。
このような不毛な話題となってしまったが、要は次に攻撃に転じるのはグラビットの方であるという事が分かればいいだろう。
「では、気を取り直して……私から行きますよ♪」
もう『いい男』な話題の事は忘れる事にしたのであった。ここはやったもの勝ちというものであるからだ。
そして、その為の動作をグラビットは手短に行ったのであった。
「重力角撃!!」
言うと彼女は手早く自前の角に重力エネルギーを溜めると、それを惜しげもなく一気に解き放ったのであった。
それにより、角のように尖った重力エネルギーの塊がアイ目掛けて放出されていったのである。
だが、アイは至って落ち着いた様子で、それに対してたった一モーションで対応したのであった。
それは、手に備え付けた籠手の形の神霊機で以て、その攻撃を叩き落とすというものであったのだ。
そして、ものの見事にグラビットの放った重力弾はその一発の動作の元に叩き伏せられてしまったのであった。
そんな芸当をやってのけたアイは、さも当然と言わんばかりにこう言う。
「お主も先程わしの火弾をあっさりと落としたじゃろう? じゃから、わしもそのような事が出来るだろうというのは読めんといかんぞ?」
それは、アイからの手厳しい一言であったのだ。
このような事をアイが言うのは、他ならぬ当事者であるグラビットが彼女の目に敵う存在であるからであったのだ。
つまり、アイはグラビットの事を認めているからこそ、敢えて苦言を呈したという事なのであった。
しかし、どうやらこのアイの配慮は彼女の読み違いという形となるようだ。
「勿論、その事は感じていましたよ。でも、今のはアイ様にはそういう事は通用しないだろうというのを確かめる為と……」
そう言いながらグラビットの周りに流れる空気に変化が出、そのまま彼女は続けるのであった。
「私の本命をうまく決める為の小手調べという訳だったのですよ!」
そのように言い切ったかと思うや否や、彼女はすぐさま行動に出るのであった。
それは、『跳躍』であったのだ。彼女はそのままアイ達を見下ろせるまでに宙に飛び上がったのである。
それを見ながら、ミナトは呆けながら言う。
「ほええ……見事なジャンプですね。さすがはうさぎさんって所でしょうか?」
何気ない一言であったが、これに対して聞き捨てならないものを感じるのがリンであったのだ。
「ミナト君、その発言は捨て置けないよね。幾らうさぎさんでも、『身体能力』だけであそこまで跳べる訳がないじゃない?」
「あ、ごめんなさい」
「分かればよろしい♪」
このやり取りが意味する所、それはリンが自身の鍛錬によって並外れた脚力を得た事にあるのであった。
そんな彼女よりも高く跳び上がったグラビットが自身の身体能力でやったのであれば、己の肉体を磨き上げて得たリンの立場というものが無くなってしまうだろう。
決して自尊心は高くない方であるリンであるが、自身の鍛錬によるものか、それ以外の要因であるかの区別は付けて欲しい感情を持っているのであった。
その事を理解したミナトは、改めるようにこう言うのだ。
「あれは、グラビットさんの重力を操る力を応用したという事という訳ですね?」
「多分、そうでしょう?」
そんな二人のやり取りを聞きながら、グラビットは心の中で『ご名答』と呟くに至っていたのであった。
だが、今はその重力操作を応用した跳躍により一瞬にして高く跳び上がった所であるのだ。故に、彼女は集中しなければならないだろう。
そして、グラビットは作戦の第二段階へと入るのであった。
「そして、再度重力操作です」
そう彼女が呟くと、再び彼女の周りに重力の力場が作り出されたのである。しかし、これは先程までのものとはものの見事に『真逆』である代物であったのだ。
先程までのは自身に掛かる重力を『減らす』力であった。しかし、今度のはその逆の性質となるのだ。
つまり、こういう事であった。
「アイ様、お覚悟!」
そう言うや否や、グラビットは宙へ跳躍した状態から、一挙に勢いを付けて……アイ目掛けて猛スピードで迫ってきたのであった。
そして、グラビットは蹴りの態勢へと入っていたのであった。
その自身の能力をフルに活用した跳び蹴りに対して、アイは咄嗟に腕の籠手で防御態勢へと入ったのである。
そこに、グラビットの蹴りが突き刺さったのであった。そこから激しい衝撃が外野の二人にも分かる程に走ったのである。
「これは……!」
「父さん!?」
この目まぐるしい展開には、リンもミナトも目を見開くしかなかったようであった。そして、ミナトが気遣うアイがどうなったのかを見てみると……。
「ふう……間一髪といった所じゃったな?」
そのように一息吐くアイ。そして、彼女はグラビットから一距離離れた場所に陣取っていたのであった。
それが意味する事は一つであろう。アイはグラビットのその蹴りをかわしたという事なのだ。
一体どうやったのか……。その答えはグラビットの口から語られるのであった。
「さすがです。火の神の力で爆発を起こして、その反動で距離を取るとはですね」
「いや、お主こそ蹴りに転じる時には逆に自身に掛かる重力を増やす……思い切った事をするものじゃな?」
アイのこの言により、グラビットの方の凄まじい威力の蹴りのからくりも判明したという事なのだ。
跳躍する時には自身に掛かる重力を軽減し、逆に蹴りを叩き込む際にはその重力を増やす。
それは、単純だが効率的な作戦だと言えよう。
無論、自身に多くの重力を課すとなるとその負担も一入だというものであろう。
だが、そこはうさぎの魔物であるグラビットであるのだった。彼女の優れた足腰が基礎となって、自身の重力増加による負担にも問題なく耐えられるような肉体構造なのであった。
その事を知るに至ったアイは、ますます彼女の評価を脳内で上げていくのだ。
しかし、こうしてアイがカグツチの力で以てその攻撃をかわしてしまったのである。故に、このやり取りは振り出しに戻ったと言えるだろう。
その事はグラビットもよく分かる所であったのだ。重力弾はかわされて当然との想いから小手調べに放ったものであるのだが、それを囮にしてでも繰り出した今の重力蹴りは本命そのものだったのだから。
つまり、自信作を不発にされてしまったという事なのだ。だからグラビットは最早後がない所であるのだった。
(こうなったら……仕方ないかな?)
だが、そう考えるようにグラビットにはまだ秘策があるのであった。しかし、その心の中の言い回しが示すように、彼女は『それ』を使う事ははばかりがある所なのだ。
(でも、やるしかないよね?)
そう自問自答するグラビットであった。彼女は今のアイの隙の無さを垣間見ると、最早戦い方に四の五の言っている場合ではないと感じたからである。
(よし……!)
そう心の中で気合いの一声を入れたグラビットは、意を決して覚悟を決めて言うのであった。
「アイ様、少しばかりあなたには後悔してもらいます」
「と言うとな?」
そのような挑発的な物言いに、どういう事であろうかとアイは思うのであった。その理由をグラビットは語っていく。
「あなたが他の時のように神霊機で大型の遣いを繰り出す事なく、今回はアイ様が自ら出向いたという事にですよ?」
「ほう?」
その意味ありげな言い回しに、当然アイは頭に疑問符を浮かべてしまうのであった。
そんな反応も当然だろうと、グラビットはここでこれから自分が出る事について口にするのであった。
「私は重力を操る能力というのは……最早言うまでもありませんよね?」
「うむ、当然じゃ」
「それでですね、私が重力を操ると──こういう事も出来てしまうのですよね?」
そう言うと、グラビットはまたも角を艶やかに紫色に光らせる。
無論、これは彼女が重力を操る為の準備なのであり、今まで通りの現象であったのだ。
だが、今回はその規模が違ったのであった。彼女の角から放たれる紫色の光は、まるで怪しく燃え盛っているかのようだったのだ。
「むう……」
これはただ事ではないと、彼女と戦っているアイだからこそ人一倍分かる所であるのだった。一体何が起こるのかと、アイは瞠目する。
そうしていると、その答えの片鱗が否応にも辺りに見えてきたのであった。
それは、この雪原を構成する物そのものといえる、『雪』そのものであったのだ。その雪が次々と一箇所に集まってきたのであった。
その場所は、丁度グラビットの頭上であったのだ。そこに数多の雪が何かに引き寄せられるように集束しているのだった。
無論、その何かはグラビットが操る重力に他ならないというのは明白な事であろう。問題となるのは、何故グラビットは雪を集め始めたのかという事であろう。
その推論の一つを、アイは口にする。
「もしかして、巨大な雪玉を作って、わしにぶつけようというのかの?」
しかし、その推論の一つは真実の的を得てはいなかったようだ。
「残念、ハズレですよ。今のあなたにそれは悪手以外の何物でもない事は……あなたも良く分かっておられるでしょう?」
「……そうじゃな」
その事はアイも察する所であったのだ。何故なら、雪は細かい氷の塊であるのだから。それを今『炎の力』を操るアイにぶつけても、呆気なく溶かされてしまうのは、正に火を見るよりも明らかというものであろう。
このようにして、アイの推論の一つは候補から外れたのであった。故に、彼女は次の候補が真実味を帯びてきた事に警戒をしなければならなくなったのだ。
(つまり、残る候補は『あれ』になるか……ちと厄介じゃのう……)
そのグラビットの奥の手が攻略に際して難儀である事は、アイは良く分かる所であったのだ。何故なら、彼女も似たような事を日常的に行っているからだ。
そして、その答えがもうじき出ようとしていたのであった。
これまでの雪の集束により、一際大きい雪の塊がグラビットの頭上に掻き集められていたのであった。
「これで、雪の方は頃合いですね♪」
そう得意気にグラビットは言う。これだけの雪を掻き集めたのだ。幾ら温厚で落ち着いた魔物である彼女とはいえ、その壮観な光景には自分自身で陶酔してしまうのも悪い事とは言えないだろう。
しかし、いつまでも酔いしれていては、相手にとっても自分にとってもプラスにはならない所であろう。──勝負というのは滞りなくスムーズに行われるのがベストな絵となるからである。
なので、彼女は手っ取り早く次の段階へと移る事にしたのであった。




