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パロディアスの牙001・ザファイブ地方編  作者: デウスXマキナ
ザファイブ地方編
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第26話 最後の目的の魔物へと……

「それではアイ様、ありがとうございました」

 そう言うのは、彼女の遣いと今しがた激戦を繰り広げた魔物である、コロムシことコロシテデモムシであったのだった。

 そんな彼に、アイは優しく諭すように言う。

「いや、勝ったのはお主の方なのじゃらな? 堂々と胸を張るといいぞ♪」

「確かにそうなんですが、どうもアイ様と俺では格が違うって事がこの戦いからは伝わってきたのですよね」

 その事がコロムシが確信する所であったのだ。

 確かに自分はアイの遣いとの勝負には勝ったのだ。だが、これは自分達魔物が活躍出来るようにアイにより調整がなされている事は手練れの戦士たるコロムシには分かる所であるのだった。

 だから、彼はこう思わずにはいられなかったのであった。──断じて自分はアイ様自身には勝ってなどはいないのである、と。

 その内容はアイにも伝わる所であったのだ。そして、このコロムシの考えは至極真っ当であると彼女は感じるのであったが。

「確かにお主の考えは的を得ている。じゃが、お主はこれでチャンスを掴んだ事には変わりないじゃろう?」

「あ……」

 そう言われてコロムシはハッとなってしまうのであった。──全くを以てアイの言う通りであるのが彼には通じたのだ。

 そう、確かにアイの実力は自分では計り知れない境地にいるのではあるが、要は今自分は彼女の出す課題をクリアして皇国へとスカウトされる好機を得た事もまた事実なのである。

 なのでコロムシは、考えてどうにかなる問題を気にするよりも、これから夢が実現出来る可能性の切符を手にした事を喜ぶ方を選んだという事なのであった。

 故に、彼はこう言うのだった。

「ねんがんの 剣博物館開示へのチャンスをてにいれたぞ!」

「うむ、調子を取り戻したようじゃな?」

 そのようにして再び所謂『コロムシ節』を見せた彼に対して、アイはご満悦といった風にそれを見守っていた。

 こうして、予想していなかった新たな魔物のスカウトに成功するに至ったアイの方も気分は乗り気であるのだった。

 その想いを噛み締めつつ、名残惜しそうに彼女は言う。

「それでは、お主とは一旦ここでお別れじゃのう? 暫し、お主をスカウトして我が皇国へと招くまでの別れじゃ」

「はい、ありがとうございました」

 そう言ってコロムシは再度頭を垂れると、再び旅路に着く村雨一行の見送りをするのであった。


◇ ◇ ◇


 そして、再開した旅の中で、アイは口を開く。

「ミナトにリンや、準備はいいかの? 先程はコロムシという『嬉しい誤算』が現れてくれた訳じゃったが、これでザファイブ地方最後の目的地へと向かう事になる訳じゃが?」

「いよいよという事ですね?」

 そのアイの物言いに、ミナトは首肯するのであった。そして、これで本来の目的である最後の場所へと向かう事が出来るのかと。

 その事にはリンも同意する所であったのだ。

「僕も最後まで付き合いますよ。元よりそのつもりであなた方には同行した訳ですからね♪」

 そうリンは茶目っ気を出して答えてみせた。

「それは頼もしいのう。そして、お主にも感謝しておるぞ。お主のお陰で丁度旅の人数にピッタリな三人という構図が出来ていたのじゃからな?」

「それは光栄ですね」

 アイにそのように返されて、リンの方もご満悦といった風に振る舞うのであった。

 そのようにして気合いと期待を満ちあふれさせながら、一行は次なる、そして最後の目的地を目指すのであった。


◇ ◇ ◇


 そして、比奈三沢台地を入って来たのとは丁度逆側から下り始めると、一行を目に見えた変化が出迎えてくれたのである。

 その光景は、思わずミナトに感嘆の声を出させてしまう程なのであった。

「ここは……とても立派な雪原ですねえ……」

 そのように彼が言う通り、比奈三沢台地を抜けた先には、目を見張るような銀世界が待ち受けていたという事であったのだ。つまり、冬の空間であるのだ。

 しかし、今の村雨一行はというととても冬に向いている出で立ちは『誰しも』がしてはいなかったのだ。

 まず、アイは巫女装束をノースリーブにあしらった代物、ミナトはミニスカート丈の浴衣、挙句の果てにリンに至っては毛皮のノースリーブにミニスカートの中はすっぽんぽんという有様であったのだから。

 だが、ここで誰も寒がっている様子はないのであった。それのからくりが如何なものであるかは、大体ご察しが出来るであろう。

 そう、これもパロディアスの加護によるものであったのだ。それは、旅人が気温により旅が滞ってしまってはこの星としても困る所であろう。故にここでも旅人に対して施しをするに至っているという事なのであった。

「……相変わらず便利ですよねえ、この星のシステムって……」

「じゃな♪」

 この事には一同も実に有難いと感じるしかなかったのだ。こうも都合が良すぎても、こうして快適に旅が出来るのだから、これには感謝して享受する以外の選択肢は惜しいと皆思うのだ。

 つまり、皆にとって良い事づくめであるのであり、これを否定する意味は無かったのであるが、ここでもリンは少々羽目を外してしまうのであった。

「僕としてもありがたいですね。こう雪の世界でもノーパンを貫き通す事が出来るのですからね♪」

「その件に関しては、この星に対して一言物申したい所ですね……」

 そうミナトは心からの念の籠った言葉を口にするしかなかったのであった。

 その一方で、ミナト自身もこうしてミニ丈の浴衣で銀世界に立っていられる事には感謝する所であるのだった。

 そう、彼にもポリシーというものがある訳であり、その事に関しては自分もリンも同じ所であるのは彼も認めるのだった。──ノーパンは勘弁なのではあるが。

 ともあれ、ここで重要なのは我らの地球の価値観では寒冷地には『全く』向かない者達であったのにも関わらず、これで彼等の旅が中断される等という事が無かったという点の一つに集約されるのだ。

 そして、やはり今のこの『雪原』の光景は絶景であるのだった。

 丁度雪はやんでいて視界を遮れられる事もなく快適であり、かつ辺りが純白の雪で染められている様は、正に『幻想的』という言葉で語るのに適していたのだ。

 このような光景は大人でも心躍るものであろうが、特に子供が好奇心を刺激されてはしゃぐ事が多いものなのであり。

 そして、村雨一行では『見た目』が子供である村雨アイが真っ先に体を動かしたのであった。

「うぼぁ~♪ 雪じゃ雪じゃ~♪」

 そう言いながらアイはその見た目幼い体を存分に動かしながら駆け出して行き、そして雪の積もった場所へと繰り出してする事と言えば……。

「父さん、何雪だるま作っているんですか?」

 と、ミナトが指摘した通りなのであった。

 そう、アイは年甲斐もなく雪でお手軽に作れる人型の存在たる、雪だるまを拵えようとしていたのである。

 そんなミナトの抗議に対して、アイも負けじと抗議で返す。

「むぅ……わしは九歳のおなごじゃぞ? じゃからこうして雪だるま作りに走るのも年齢相応というものじゃろう?」

 それを聞いたミナトは「言いましたね?」といった表情でニンマリと彼らしくない笑みを浮かべながら、次にこう続けたのである。

「いいんですか父さん、そんな事言っていて? 父さんは実際の年齢は……」

「待て待て待て!」

 その切り出しには、さすがのアイとて慌てて両手を振って静止をミナトに促すしかなかったのであった。

 彼女とて、それ以上踏み込まれてはいけない一線である事が分かっているからであった──自分の実年齢をバラされる。それは絶対に願い下げな事なのである。

 そんな彼女らしくなく慌てふためくアイの態度に満足したかのように、ミナトはこう締め括るのであった。

「分かってもらえればいいですよ、父さん。なので、今後は自重して下さいね?」

「うむ……分かった」

 そう言ってどこか項垂れるように言うアイであったが、ここで同時にこんな事も言い始めるのであった。

「しかしミナトや、どうやらもう雪だるまを作っているような場合じゃなくなったようじゃしの?」

「……そうですね」

「ですね」

『その事』にはこの場にいる歴戦の戦士たる三人には良く分かる所であるようであった。

 そして、それこそアイがこの旅の目的としているメインディッシュなのである。

「もうじき『魔物』が現れるという事ですね、父さん」

「あ、僕にも心当たりがあります」

「うむ、そしてこのザファイブ地方の旅の締め括りとなる大物という事じゃの?」

 そうアイが言う通り、彼女達のこの地方での旅は、その魔物をスカウトして完了するだろう算段が決まっていたのであった。

 つまり、この旅の終着点のお出ましという事なのだ。これには一同は胸を高鳴らせずにはいられない所であろう。

 その存在が何であるのかを、一同は一斉に視線を送って確認する事とする。

 そして、その視線の先にあったのは……。

「ほう……これはまた」

 そうアイが呆けたような反応をする一方で、ミナトの反応はこうであったのだ。

「可愛い……♪」

 確かに男性であり、その思考も男性のものであるミナトであったが、その見た目相応の可憐な一面も彼にはあり、それが今示されたという事のようだった。

 そして、ミナトがそう反応してしまうのも無理からぬ事である光景が目の前には存在していたのである。

 それは一体何であるかというと……。

「これまた見事なうさぎさんですよね、父さん♪」

 そう、白くてふわふわしていて耳の長い等という特徴を持った生き物である『(うさぎ)』がここにはいたという事なのであった。

 そして、その癒し効果の権化たる生き物を目の当たりにしながら、ミナトの気分はどんどん高揚していった。

 なので、彼も少々悪ノリしてしまうのであった。

「父さん、この子をなでなでしていいですか?」

「……」

 そんなミナトには、アイは先程の自分の事を顧みさせる形なのだった。なので、敢えてアイは彼にこう言う。

「ミナトも、わしの事を言えんのじゃないのか?」

「うっ……」

 そう手痛い指摘を受けてしまえば、ミナトはグゥの音も出ない所であるのだった。

 しかし、素直に負けを認めるのも悔しい所であろう。なのでミナトは悪あがきとばかりにこう口にしておいた。

「これで、父さんと僕は五分と五分ですね?」

「まあ、そういう事じゃろう……」

 そのミナトの言にはアイは納得しておく事にしたのであった。こんな状態でどちらか勝ちかというのは不毛もいい所であるのだから。

 だが、この親子の繰り広げた仕様もない勝負はこうなったが、しかし、今ここにはもっと大切な勝負の話を切り出さなければならない所であるのだ。

 その勝負の相手に、アイは早速とばかりに声を掛けるのであった。

「またせたの、魔物の子や?」

 そう、先程ミナトが愛でたがっていた張本人であるうさぎの魔物のそれであったのだ。

 こうして漸く声を掛けられたうさぎの魔物は、極めて温厚にこう言葉を返したのである。

「アイ様、お目に掛かれて光栄です。私はこの雪原に住まう魔物の『グラビット』と言います」

 そう言うとこのうさぎはペコリとお辞儀をしたのであった。その際に、アイの目には否応にも飛び込んでくるものがあるのだった。

「おっ、お主の額には角があるのかえ?」

 そうアイが指摘した通り、そのうさぎ──グラビットの額には、立派な角が生えていたのであった。

「ええ、私はうさぎでも『アルミラージ』と呼ばれる種類ですから、なのでこの角は私達の誇りなんですよね?」

 そう言うとグラビットはその角を強調するかのように顔をクイッと上げて自慢気に見せたのである。

 それだけで、その異質さが引き立てられるようであったのだ。なので、思わずリンはこう言ってしまうのであった。

「ほえぇ~……、うさぎさんなのに角が生えているって、際立ちますね……」

「そういうリンだって、ゴブリンなのにこうもりの翼を生やしておるではないか?」

「あ、確かに……」

 そうアイに指摘されて、リンはてへっと気恥ずかしそうに舌を出して茶目っ気を出してみせたのであるが、その他にこの娘には言いたい事があるとミナトは密かに思う所があるのだった。

 ──こうもりの翼はありますけど、パンツは無いのってどうなんですか? ゴブリンがどうのという以前に。

 だが、それは今触れても無碍に終わる所なので、敢えてミナトはその事には言及しないでおくのであった。

 ともあれ、このグラビットとの話はそんなミナトのやるせない心持ちの中でも滞りなく行われていくのであった。

「それにしてもグラビットや。ここは綺麗な所じゃのう?」

 そうアイに自分の住まう憩いの場所を褒められたグラビットは、まるで自分が褒められたかのように嬉しく感じながらこう言葉を返す。

「でしょう? 私達が育ったこの場所は自慢なのですから。だから、私が皇国にスカウトされた際には、あなたの皇域にもこのような素晴らしい雪原を作って欲しいのですよ」

 このようにグラビットは提案してきたのであった。温厚であっても、しっかりした一面も持っているようである。

 そんなグラビットの姿勢にアイは感心する所であるのだった。こういった貪欲さが、自分の皇国で働く事になる者には必要だと考えるからである。

 しかし、まだ話の内容はグラビットにとっての『取らぬ狸の皮算用』というものであろう。彼女はうさぎかつ、自分の皮が利用されてしまいそうな感じもするが、そこはご愛敬である。

 無論、アイがこう切り出すのは重々承知の所であったのだ。だから、グラビットは意気揚々とアイにこう返すのであった。

「勿論ですよ、これから始まるアイ様との勝負、私が勝たせて貰います♪」

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