第21話 次なる目的の地へ
「それではアイ様、ありがとうございました」
「礼を言うのはわしの方もじゃな。お主の我が皇国での働きには期待しているぞ♪」
そう言い合う二人の関係は、正にお互いの為になる事、洒落た言い方をすればwin-winとでも言えばいいだろうか。
そのようなやり取りなので、クリボールの方もウハウハな気分でこう言うのであった。
「ボクの方としても、沢山のキャベツ、期待していますよ♪」
「お安い御用というものじゃよ♪」
このようにして、互いに満足出来る話をした後で、いよいよ別れの挨拶を交わすのだ。
「では、わしらは次なる魔物のスカウトへと向かうからな。ここでお別れじゃ」
「色々ありがというございました、アイ様」
そのクリボールの言葉には、本当に色々な感謝の念が籠められていたのであった。
◇ ◇ ◇
そして、村雨一行は茨の森を後を抜けて、道中を歩み進めている最中なのだった。
そんな中で、ミナトはリンに見惚れている状態であったのだ。
それは、彼女がクリボールとの勝負の際に突如として変更する事になった腰紐が関係しているのであった。
そのアクシデントによりリンは普段の見慣れた腰紐から、急遽茨であしらった腰紐へと交換するに至っていたのだから。
つまり、普段とは違うリンの姿は、どことなく妖艶に彩られていたという事なのだ。それが純真な少年であるミナトには些か刺激が強めであるという事なのであった。
なので、ミナトは思わず彼女にこう言うのだった。
「何か、今のリンさん……何だか魅惑的です」
こう言ったのであったが、どうやらその言い回しが良くなかったようであった。
「おおっ♪ ミナト君もこのノーパンの素晴らしさを分かってくれるようになったのかな?」
「いえ、全然分かりません」
悪ノリしてのたまうリンに対して、ミナトはきっぱりと斬り捨てる返答で抗ってみせたのだった。
だが、100%否定出来ない所がミナトには歯がゆいのであった。今のリンの艶やかさは、ノーパンを貫いている彼女だからこそより引き立てられているのは紛れもない事実であったからだ。
しかし、その事を彼女の前で口にしてしまえば、これはミナト自身が敗北を宣言してしまう事に他ならないのである。それは、温厚な性格でいながら良い意味で負けず嫌いなミナトには譲歩出来ない事なのだ。
なので、ミナトはその内心をおくびには出さずにこの話を切り上げるのであった。
「取り敢えず、今のリンさんは魅力的だって事を分かってもらえれば僕としてはいい訳ですので……勿論ノーパンうんぬんの事は含めない形でですね」
「ありがとうミナト君」
ノーパンの否定以外は、自分の事を称賛してくれている事が分かるリンは、素直にそれに対してお礼の言葉の形で締め括ったのであった。
そんな二人のやり取りを垣間見ながら、アイは呟く所だった。
「う~ん、青春じゃのう。わしにもそういう時代があったかも知れんのう……」
それは昔の事だと、アイは余り過去を振り返るのはこれ位にしておこうと、その思考の渦から早々に切り上げるのであった。
彼女がそうしたのは、今の少女姿の自分の人生を堪能したいという想いからという事でもあったのだった。
このようにして雑談に華を咲かせる一同であったが、ここいらで一つ今の状況について触れておく必要があると思い返すのであった。
そして、一番にそれを切り出したのはミナトであったのだ。
「それで父さん、茨の森も抜けて、いよいよ次の目的地へと辿り着く事となりますよね?」
「そうじゃな」
そのミナトの問いかけに対して、アイは素直に首肯するのであった。
そう、彼等はもうじき次の目指すべき場所へと到着する兆しとなっていたのである。
その場所はどこなのか? その事も既にアイは知っていたのであるが、それを代弁するかのようにリンがそこに触れるのであった。
「確かにもうすぐですね。あの子がいる『比奈三沢台地』は?」
『比奈三沢台地』……。それが彼等が次に目指す到達点だという事なのであった。
つまり、『台地』であるが故に、彼等は少し高い所を目指している最中という事なのだ。
即ち、今彼等の道中は当然上り坂となって些か険しくなったいる真っ最中なのであった。
こうなってくると、鍛えられていない割と普通の人であれば、その肉体が酷使される状況によって多かれ少なかれへばってしまうというものであろう。
だが、この村雨一行はそんな『一般人』とは程遠いコミュニティーである事は改めて言うまでもないであろう。
「ミナトや、少々坂道が続いておるようじゃが、へばってはおらぬか?」
「そういう父さんこそ、肉体年齢は九歳なんですから、無理はなさらないで下さいね」
そう言って軽口に対して軽口で返し合う二人は、疲労とは全くの無縁な状態である事は分かるであろう。
そして、そんな状況を引っ掻き回してしまうのが、彼等に同行を続けるリンという魔物の少女なのであった。
「僕の方も大丈夫ですよ。お陰でノーパンし甲斐ってものがありますからね♪」
「うむ、おまけに裸足じゃし、健康にはすこぶる良さそうじゃのう♪」
「いえ、山登り的なものをやるのには自殺行為もいい所じゃないのですか!?」
それだけはミナトは言っておきたかったのであった。そんな彼の主張は決して間違ってはいない所であろう。
そのような坂道を登る者達としては些かふざけきった一同であったが、やはり彼等の力量は言うまでも無い所なので、至って問題なく滞りなく行われていったのであった。
そして、一同の目の前に現れたのは、台地の中へと続く自然の通路──即ち洞窟であったのだ。
その光景を見ながらアイは、うむと頷きながら言うのであった。
「ほう、これは如何にも冒険らしい演出というものじゃのう♪」
このような自然のダンジョンこそ旅の醍醐味だと彼女は思う所であったからだ。
確かに、先日の後半にはサイコメットーラーのメットをスカウトする為に洞窟へと入っていったものであったのだが、そこは鉱山という整備された洞窟であったのだ。
しかし、今回のそれは正に自然が創り出した産物となっていたのである。
これには、好奇心旺盛な村雨一行にリンも含めたコミュニティーの心を踊らされさせられずにはいられなかったのであった。
「準備の方はいいかの、お二方や?」
「ええ、僕の方としても願ったり叶ったりといった所ですよ♪」
「僕も皆さんと同じ所ですね♪」
ここに、三人の心は一つに決まっていたようであった。皆がそう口々に言い合うと、一同は迷わずにその入り口へと入って行ったのだった。
◇ ◇ ◇
そして、一同を待っていたのは、これまた立派な台地に口を開いた洞窟の内部であったのだ。
その中から入り込んでくる空気に、皆は心洗われるかのような体感となっていたのであった。
「父さん……ここは素敵ですね」
「全くじゃのう、洞窟じゃというのに、通気性というものが心地良いわ」
「僕も、スカートの中を風が通っていく度にキモチイイですよぉ♪」
「全くですね~」
このように、リンのノーパン下ネタ発言も文字通り洗い流してくれる程の心地よさが、この洞窟の中にはあったという事なのだった。
そのようにしながら自然の空間の癒やしを満喫しながら進む一同であった。
そして、順調に進む一行であったが、その内にこんな風の抱擁にもやがて慣れていくのであった。
なので、一同は少しばかり刺激が欲しいなと思い始めるのだった。




