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パロディアスの牙001・ザファイブ地方編  作者: デウスXマキナ
ザファイブ地方編
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第11話 獣機使い:後編

 サイコメットーラーのメットと、村雨アイの勝負はどこか和やかな雰囲気となっていたが、これは真剣勝負だという事をアイは忘れずに指摘する。

「じゃが、それとこの勝負に関しては別じゃ。心して掛かれ」

「勿論だよ」

 その瞬間、アイとメットは互いに確かな意思の交換をこなすに至ったのだった。これぞ、鎬を削り合う勝負ならではの程良い緊張を含む理想の流れであるのだ。

 そして、アイはここで畳み掛けるようにメットに言う。

「勝負はこれからじゃからの? お主の鉄球をわしのドリルで見事に打ち砕いてみせようぞ?」

 そう言ってアイは心でワームへと念を送ったのであった。それに呼応する形でワームの動きは鋭さを増す。

 それからであった。ワームの先端のドリルの回転速度がみるみるうちに増したのであった。それにより、鉄球からほとばしる火花の激しさが益々拍車を掛ける。

 このままでは、メットの鉄球は無残に打ち砕かれてしまうだろう。だが、彼の目には未だ闘志が宿ったままとなっていたのだ。

 そう、彼は断じて今の状況に諦めの念を抱いてはいなかったのである。ここで、彼はとっておきの手に出る事にしたのであった。

「削岩鎚──念導強化……」

 そうぽつりとメットが言った後すぐにそれは起こったのである。突如として彼の繰り出す鉄球が青白い光を放ったかと思うと、そのまま一気に敵のドリルを押し返したのであった。

 これにより、ドリルは瞬く間にグニャリと人間の関節だったら一大事なレベルにへし折れ、一瞬の内に穿孔機としての役割が剥奪されてしまったのであった。

 そして、ドリルの持ち主であるワームは、自身のそれの命運を悟ったかのように、その回転を止めるに至った。

 その、最大の好機を逃すメットでは無かったのであった。そのまま、彼は高らかに宣言する。

「このまま喰らえ~! サイキックハンマー!」

 その、所謂『必殺技名』を叫びながら、メットはその手に持った念導力製の鎚を再度ダンジョンワームの懐へと投げ付けたのである。

 これは、先程ドリルを使い物にならない有様にまで追い込んだ産物なのである。これを今度は本体へと叩き込めば……後は分かるであろう。

 これが決まれば勝負が着く。そう思いながらメットはこの攻撃を繰り出していったのである。

 しかし、現実はそう簡単にはいかなかったのであった。

「ダンジョンワームよ。再度潜りつつ、この攻撃を避けよ!」

 そのアイの指令を受け、まるで先程自前のドリルを破壊されて呆気に取られていたかのような機械のミミズはその意識を取り戻したかのように再度動き出す。

 その後は一瞬であった。彼には今ではドリルはないものの、今度は自身の口で以て地面を掘りながら姿を眩ましてしまったのであった。

 それにより、メットは再び眼前から敵が見えない状態へと陥ってしまったのである。

 そして、逆に今度はアイとワームの好機となる番であるのだった。

 そう、アイにもワームの感覚機能から通して、彼女にその居場所を知らせる事が出来ている状態であるのだった。これをアイは利用しない手はないというものであろう。

 地下の機械ミミズから、メットの足下が手に取るように分かるのであった。

 ちなみに、この機能を悪用すれば、リンの足下から彼女の腰巻きスカートの中身がキッチリ確認出来るという人によっては夢のような手立てを講じる事が出来たのであるが。

 幸か不幸か、今のアイは少女の姿となっているが為か、彼女の頭の中からは男性的趣味の傾向は薄れているのだ。無論、全くない訳ではないが、元の男性の肉体の脳を行使している時程のそれは沸き起こらないのであった。

 そんなアイの仕様にリンは救われた……というべきなのかは定かではないが、取り敢えずアイはそういう興味を抱く事なく戦闘に集中していたのである。

 そして、しっかりとメットの様子を確認したアイは、ここで念で以てワームへと指示を出したのであった。

(今じゃワームよ。『ピーピングショット』じゃ!)

 その指令を受けたワーム。それをこなす為に彼は手際よくその筒状のボディーを地中で蠢かせていった。

「一体どこから……」

 そう呟くメットに答えるかのように、その後のワームの行動は手っ取り早かったのであった。

「っ!?」

『それ』を察したメットは、咄嗟にまずその大振りの削岩機を平行世界へと収納したのであった。

 それを躊躇う事は無かった。確かに一日に平行世界からアイテムを取り出せるのは四回までと決まっているが、一度その日に取り出した物は、再度取り出してもそれが回数には含まれないのであるから。

 だから、メットは迷わずにそれを行ったのである。そして、次なるアイテムの現出となる訳だが。

 この平行世界から質量を取り出すという行為は、単にこの世界にない存在を引き出すだけではないのである。その事を再確認するように彼の行動は早かったのである。

 その為の行為の内容を、メットは口にする。

「オレを守れ! 『シェルターヘルメット』!」

 そう言い切るとメットの元から頭にある物──即ちヘルメットが、突如として何やら大きな気配を出し始めたのであった。

 その次の瞬間であった。そんな得体の知れない気配を発したヘルメットは──一瞬の内に巨大化したのである。それも、メットをすっぽりと覆ってしまう程のビッグサイズに。

 そして、そこへ先程アイの命を受けてワームから繰り出された、土塊を吐き出しての射撃攻撃を見事に防いだのであった。

 そう、その様は正にメットを守るシェルターそのものの役割を果たしたという事なのであった。

『シェルター』の外では激しく打ち付ける轟音があったが、幸いにも中にいるメットにはダメージ一つ与える事は無かったのであった。

 そして、一頻り役割を果たした巨大ヘルメットは、再び元のサイズとなってメットの頭部へと収まったのである。

 今しがたメットがしたその芸当が何であるのかを、まるで我々に説明してくれるかのように、代弁するかのようにアイは言う。

「見事じゃ。しかも平行世界から質量を追加するというのはのう♪」

 それが、今のメットが行った事の詳細であるのだった。

 平行世界を通して出来る事。それは何も無い所にアイテムを引き出すだけではないのである。このようにして、元ある物に対して追加で質量を加算するという地球の原理では理解しがたい荒業もやってのける事が出来るのであった。

「でも、この星では出来て当然の事だよね?」

 そう言うメットは謙遜ではなく、本心からその言葉を選んで口にする所であるのだ。

 だが、アイはそんなメットに対して首を横に振って見せるのであった。

「いいや、そこは問題ではない。わしが感心したのは、その行為を戦闘の最中に咄嗟にやってのけたというお主の判断力という点なのじゃよ♪」

「そうなんだ~……」

 そうアイに言われて、メットの方としても悪い気はしなかったのであった。誰しも、皮肉や慰めでなければ褒められて嬉しくない訳がないのだから。

 だが、今は真剣勝負の最中である。なのでアイは褒めはこの位にすべきだと思い、メットに注意を促す。

「じゃが、この勝負に情けは無用じゃな? そっちの方が、お主としても都合が良いじゃろう?」

「そうだね」

 そのアイの意見にはメットも同意する事となったのだ。そして、密かに若い自分の心を配慮していて心地良さというものを感じてしまう所であった。

 そんなアイに感謝しつつ、メットは再度戦いへと意識を向ける。

 ──敵のドリルは破壊したものの、相変わらず相手は地面の中を進みながら、こちらの隙を伺いながら攻撃の好機を伺っている現状に変わりはないのである。

 そんなこの状況で今自分がすべき手は何だろうかとメットは考える所なのだ。

 先程ヘルメットの質量を取り出すという事は行った訳である。つまり、それの巨大化はもう『取り出し回数』のカウントに加算される事なく気兼ねなく行う事が出来るという事だ。

 つまり、今の自分は防御は万全という事なのだ。ならば、そこから攻撃に意識を向ける事に集中すべきであろう。

 そう思ったメットは、ここで腹を括るのであった。そして、『この手段』に出るには敵の出方が関わっている為、ここは慎重にワームのこれからの動向へと気を配るのであった。

 そうメットが脳内で戦闘の構想をしている事を露知らず、アイはここからもワームを地面に潜らせ、そして隙あらばその合間に攻撃を加え続けるだけだろうと踏むのであった。

 やる事は変わらない。そう思いながらアイは再度ワームへと指令を送る。

(もう一度潜るんじゃ、ワームよ)

 その指令を受けて、再度その機械ミミズは地面の中へとその身を潜めて行ったのであった。

「…………」

 その様子を見ながら、メットは神経を集中する。──ここから敵はどう出るのだろうか?

 もし、先程のように地中から顔を出して射撃をしてきたなら、その時は再びヘルメットを巨大化させて防御の姿勢に出るまでであろう。

 だが、そうでなく相手が……。

 そう思うながらメットはじっくりと敵の出方の動向を伺うのであった。

 一方で、アイはこう考えていたのである。

 ──相手には先程見せたヘルメットによる隙の無い防御が出来る術が備わってしまっている。そして、この星で質量を取り出す際のルールでは、その日に行った物ならば再度施行しても『数』にはカウントされない……。

 そうなると、再度ワームに射撃させてもまた防がれてしまったジリ貧となるだろう。ならば、ここで違う手に出る方が賢明というものであろう。

(よし……)

 そう脳内で思い描いたアイは、ここで次にワームに取らせる行動を決めるに至ったのである。後は、それを実行するだけであろう。 

 そうと決まれば、後は行動あるのみだろう。故に、アイは迷わずにワームに指令を送るのであった。

(ワームよ、次は『アレ』をやるのじゃ!)

 その主の指示を受け止めたワームは、何も声を出さずに念で以てアイに了承の意思を送った。

 ここで音声を出してしまえば、敵に悟られてしまうだろう。なので、アイとワームは念話で以て意思疎通をこなしたという事である。

 そして、アイの指令を聞いたワームは、一気にここで行動に出るのであった。

 それにより、洞窟内に激しい振動が走るのであった。まるで地震のようなそれであるが、ここは惑星パロディアスである。故に、この衝撃により洞窟が崩落する等という心配は全くを以てご無用という訳なのである。

 しかし、当然何も起こらない訳ではないのだ。その事はすぐ分かるに至るのであった。

 それは、正に満を持してという表現がしっくりくる光景であったのだ。

 今まではこそこそと地面から顔を出す感じで攻撃のチャンスを伺っていたワーム。だが、今回はその身全てを乗り出して全身を現したのであった。

 そう、これは強行突破であるのだった。

「そのまま一気にやれ、ワームよ!」

 その指令を出したアイの方も意気揚々とした態度であるのだった。何せ、全長5メートルもある巨体を全て余す事なく繰り出しながら突撃していくワームの勇士を見る事となったのだから。

 それには、好奇心旺盛なメットも目を見張っている状態だった……そう思われていたが、実際は少々違う様子であったようだ。

 彼はこの派手な光景を、普段の彼らしくなく、至って冷静に見据えていたのである。それが意味する所は一つであった。

(よし、『この時を待っていた』よ!)

 そう密かに心の中で言い切ったメットは、ここで自身の持てる力の集結を始めたのだ。

 メットがそうしている間にも、刻一刻とワームが巨大な口を開けて彼に差し迫っていたのであった。

「メット君!」

 思わずリンが彼にそう叫んでしまうのであった。確かに彼女もメットの実力は良く知る所ではあるが、それでもこの敵の猛撃を前にしては心配の一つもしてしまうものであろう。

 だが、ここでメットはリンに目配せしたのであった。それが意味する所は……。

 ──心配ご無用だよ、リン♪

 そのメッセージを視線に乗せてリンへと送ったメットは、いよいよだと本腰を入れるのであった。

 そして、彼は持ち前の念導力を練り合わせ、それと同時に右足を前に出していつでも突撃出来る体勢に入る。

 そのように準備万端となったメットに対し、ワームはいよいよ彼を丸呑み……にはこの星のルールでは出来ないので、その分の精神的ダメージを彼に与えようとその大口の牙を開いたのであった。

 その牙が彼を飲み込む……前にメットは行動に出ていた。

「『念導破壊法』!」

 そう宣言しながら、彼はその身にまるで燃え盛るかのような禍々しい青い炎のような念導エネルギーを纏い、かつその身を回転させながらワームへと突撃していたのである。

 その回転と念導のエネルギーから来る奔流によって、ワームのその筒状の身を綺麗に丁寧に粉砕していったのであった。

 これには、ワームは抵抗出来ずに直撃を受けてしまっていたのである。

 それはそうだろう。彼は大口を開けながらその身で丸ごとメットを飲み込もうと突っ込んでいったのだから。つまり、ワームは防御というものとはこの瞬間に無縁の存在となっていたという訳だ。

 そこへメットの念導と回転と突撃の洗礼を浴びたのである。これでは一溜まりもなかったというものであろう。

「wsrfklcvf……ッ!?」

 そして、最後にワームは一瞬言葉にもならないような呻きとも雑音ともいえない音声を出しながら、その身を粉々に吹き飛ばしてしまっていったのであった。

 その後、事が済んだのを悟ったかのように、その機械ミミズの残骸は派手に爆散してしまったのだった。


◇ ◇ ◇


 その事後は、まるでダンジョンワームなる機械の化け物など始めから存在していなかったかのように、しんと静まりかえる洞窟と、そこに四人の魔物を含めた少年少女が囲み合っている光景があったのである。

 だが、先程までの事はれっきとした事実である事が、アイの発言から証明されるのであった。

「おめでとう、メットこと『サイコメットーラー』の少年よ。これでお主の勝ちじゃよ♪」

「オレの……勝ち……」

 先程までの事が激闘であった事も手伝って、メットはその言葉を上の空の状態で反芻するように呟いて噛み締めるのであった。

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