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とある刑事の日常  作者: 湯川 賢也
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分岐点

田中と一は今、コンビニから少し行ったところにあるアパートにいた。先程の少女が言うにはこうだ。

「コンビニ強盗が起きた時間だと思うんですけど、その時間に家に帰ろうとしていたら慌てて走っていく人を見かけたんです。男の人だったと思うんですけど、関係があるか断言できません。ただ普通の慌て方じゃなかったから。その人はあそこのアパートに入って行きました。」

この話を聞き、二人はそのアパートを訪ねた。昔から存在し、所々ボロがきているこの建物には、8部屋ある。それを見ながら、一が口を開いた。

「一部屋ずつ聞いていきましょう。何か出るといいですね。」

「あの少女の話が当たればいいな。」

すると、二人の背後から声がする。

「本当に聞き込みに行かれるつもりですか?」

聞き慣れた声ではなかったが、この声を田中は知っている。振り向くとそこには、

「何をしてる?」

今朝、警察署に出現したあの女がそこに立っていた。

「本当に聞き込みに行くか、聞いているんですが、質問に答えてもらってないですよ?」

静かに女は田中に聞き返す。それに対し、田中はもう一度

「ここで、何をしているのかって聞いてるんだ。」

「…別になんでもないですよ。」

一が女に言葉を発する。

「今朝もお会いしましたね、でもこんなところでもう一度会うなんて奇遇ですね?」

「本当に偶然か?」

田中が付け加えて、偶然か、否かを問うが、女は答えない。それにしびれを切らし、田中が言う。

「朝、あんたが言った人が死ぬってこと、どうしてあんたは分かった?本当にたまたまか?それとも…」

「人の運命って不思議ですね。」

田中が喋っているのを遮り、女は話し始める。

「ある人がある人と出会うことで良い方向に進むかもしれない。逆に出会わなければ、またある人は助かったかもしれない。その時、その選択をしなければ、そうならなかったかもしれない。人は常に選択を迫られています。運命という大きないくつもの分岐点でどの道を選ぶかという。私は田中さん、あなたと出会った。これもまた一つの選択だったんですね。」

「意味が分からねぇ。何が言いたいんだ、あんたは。」

「今はまだ分からないかもしれません。けど、必ずいつか分かる時が来ると思います。そして、これだけは言えます。」

「なんですか?」

一が聞き、田中は黙っている。すると

「すべての人を救うなんてこと…不可能なんですよ、田中さん?」

女は最後にそう言った。

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