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とある刑事の日常  作者: 湯川 賢也
3/9

思考

時刻は正午を回っていた。事故の現場検証はある程度終わり、事を起こしたトラックやその他交通を妨げられる物は片付けられていた。署内に戻り、田中と一は、休憩所にあるソファーに座りながら会話を交わしている。

「まだ強盗の件は情報入ってこないんですかね。また聞き込みに行きますか、田中さん?」

「ああ…」

田中は心ここにあらず、そのような曖昧な返事を一にする。田中の頭の中は朝からたったひとつの事で埋め尽くされていた。それを察したのか、呆れたように一が口を開いた。

「いい加減納得してくださいよ、朝の事故のこと。現場を見た上に、検証してくれてた人にも話聞いたじゃないですか。しかも、報告書まで読ませてくれって頼み込んで…。その報告書には、事故を事故足らせる事柄しか記載されてませんでしたよね?」

「うるせーな。んなことは俺だって分かってんだ。ただ…。」

「ただ?ただ何なんですか?」

「人が死んでんだよ。」

「へ?結局搬送された人は助かったらしいですし…ああ、トラックの運転手のことですか。まぁ、運転席があの様子でしたからね、即死だったようですね。」

そう、今朝起きた事により死傷者は2名、うち病院に搬送された男性は重傷を負ったもののかろうじて命は助かった、だが、トラックの運転手は、外傷がひどく即死だったらしい。起こった原因としては、運転手のてんかん発作であると断定された。

「田中さんの救命措置が適切だったから良かったって話ですしね、すごいですね。」

少し先輩を持ち上げるように言う一だったが、田中は眉間にしわを寄せたまま考え込んでいる。

「人が亡くなってることは痛ましいことですけど…何をそんなに考え込むところがあるんですか?」

数秒の間、黙っていた田中が重い口を開く。

「あの女だよ。あの女、今朝のことをぴたりと当てやがった。これは偶然か?俺にはそうは思えねぇ。」

一は一瞬きょとんとした顔を見せた後、大きく笑った。そして、こう続ける。

「田中さん、そんなことを考えてたんですか?おかしいですよ、たまたま起きた事件性がない事故なんですよ?それをふらっと現れた女性が変なことを口走った。そして、それが偶然一致した。ただそれだけのことじゃないですか?」

そうなのかもしれない。いや、可能性だけで言うなら、むしろ、一が言うことのほうが高いだろう。そんなことは田中は頭では理解している。しかし、それでも田中は気にならずにはいられないのだった。

(あの女…俺が署に戻った時には消えてやがった。なんだ…事件性がないとしたらどうしてあんなに正確に事故が起こる瞬間を当てられる?本当に偶然なのか?)

その時、遠くから二人を呼ぶ声がする。

「田中さん、一さん!コンビニ強盗の新たな情報が出たそうです!早く来てください!」

二人は勢いよく立ち上がり、休憩所を離れた。やっと情報が挙がってきたかと意気揚々とする一は対称的に、田中の顔は静かに曇ったままであった。

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