始まり
現場に着いた田中が辺りを見回した。目に付いたのは、ぐにゃぐにゃに曲がったガードレール。そのガードレールを曲げる原因となったであろうトラック。トラックの運転席付近は、ぶつかった衝撃からか潰れた空き缶のようになっていた。その周りを事故の目撃者となった人々が群がっている。
「まじかよ、こんな…」
田中がつぶやいたそんな時、どこからともなく声がする。
「おい、人が倒れてるぞ!」
誰かが発した言葉に田中が反応し、その聞こえる方に視線を向けると確かにそこには男性がぐったりと倒れていた。頭から出血しているのだろうか、頭部から着ているスーツの襟元までを赤く染め上げている。心配そうに眺める者、どうにかしなければと慌てる者など多種多様な様子を見せる人の中で最も早く行動に出たのは、
「何してんの!救急車!早く!」
少女が声を張り上げる前に足が先に動いていた田中であった。田中は倒れる人の横に駆け寄り、意識確認を行うとすぐさま救急措置を始める。
救急車は幸いにも五分ほどで到着し、男性は病院へと運ばれていった。事故の現場では、すでに署の警察官らによって現場検証が始められていた。田中と田中より遅れてやってきた一はその様子を眺めている。
「署の前でこんな事故が起きるなんて、驚きましたね。」
一が真剣な面持ちで話す。
「事故…。そうなんだよな、事故なはずだ。」
田中の言い回しに一瞬首を傾け、田中を見る一だったが、あまり気にも留めない様子でまた現場に目を向ける。ちょうどその時、二人の前を警察官が通り過ぎた。田中がその人に声をかける。
「ちょっと聞きたいんだけど、この現場ってどうなんだ?」
「どうってどういうことですか?」
田中の質問にその警察官は不審そうに答える。それもそのはずである。なぜなら、この現場は
「事故以外に何が考えられるんですか?」
その現場を遠くから女は無表情のままじっと見ていた。




