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とある刑事の日常  作者: 湯川 賢也
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出会い

その女は突然現れた。街ですれ違えば、何人もの男が振り替えるであろうその女は出会い頭に脳裏に焼き付いて離れない言葉を放った。

「あと三秒です…あと三秒で人が死ぬ。」




その日は普段と何一つ変わらない平凡な始まりだった。目覚まし時計の音がうるさく鳴り響く六畳の部屋に昨日三十歳を迎えた田中はいた。

「ん?もう朝か…もうちょっと寝かせろよな…」

くしゃくしゃの天然パーマを掻きながら昨日までの疲れが残った体をゆっくりと起こし、仕事に向かう準備をするためベッドから立ち上がる。そして、ベッドの横に置かれた小さなテーブルの上の手帳を取り、歯を磨きながらつぶやく。

「今日は事件が何も起こらなきゃいいけどな…」


仕事場に到着したのは、午前八時過ぎだった。よれよれのスーツに剃り残したひげを携えながら、田中は自身のデスクにてコンビニのパンを頬張っていると左側から元気な声がする。

「田中さん、おはようございます。」

「おう、一」

「一」と書いて「にのまえ」と読むその二十歳そこそこの爽やかな青年は続けてこう言った。

「昨日のコンビニ強盗の件どうなりました?」

開口一番にコンビニ強盗の話をするのは何もこの二人がコンビニ関係者だからではなく、この二人が刑事だからである。

「とりあえず、今は防犯カメラの確認してるそうだ。まだ時間がかかるから俺らは待機だとよ。」

やる気がなさそうに答えた田中をよそに一は元気に続ける。

「せっかく刑事になったんですから、もっとこう大きな事件の捜査とかしてみたいですね。」

「何言ってんだ。刑事の仕事がないってのは平和ってことでいいじゃねぇか。」

「まぁそうなんですけどね。」

大きなあくびをしながら答える田中に一はがっかりした様子でこれまでの事故などの記録整理を始めた。

(まぁ大きな事件が起きたら起きたで本庁のやつらが持ってくから所轄の俺らにはあんまり関係ねぇしな)

田中がそういうことを考えてる時だった。部屋の入り口に見知らぬ四十歳くらいの女が立っていることに気づいた。他の刑事は出払っていて今は田中と一以外に部屋には誰もいなかった。

「あのどちら様でしょうか?」

田中が不審そうに聞くと女は静かに口を開いた。そう、

「あと三秒です…あと三秒で人が死ぬ。」

「は?何言ってんだ?あんた?」

女の言葉を理解できないでいる田中をじっと表情も変えずに女は見つめていた。そして、続けてこう告げた。

「ああ、もう遅いようです。」

「だから何なんだって聞いてんだけど?」

「今に分かりますよ、田中さん。」

「俺の名前…?」

出会ったことのないはずのこの女が自分の名前を知っている。何かの事件の時に出会っているのだろうか。必死に過去の記憶を辿っていると誰かが走ってくる音が聞こえてきた。その足音の主である婦人警官は、現れるなりこう言った。

「あの、すいません!誰か来ていただけませんか!署の目の前で事故が!なので、お願…」

田中は婦人警官が話し終わる前にすでに現場に足を向けている。時刻は今、九時ちょうどを指していた。

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