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 間接照明が、その彫刻のように整った横顔を淡く照らしていた。

 目の前の一輝さんの瞳は、もはやいつもの冷徹な光を宿していない。そこにあったのは、獲物を見据えるような熱。触れたら最後、すべてを焼き尽くされてしまいそうなほど、危うくて濃密な熱だった。

 その視線に射抜かれた瞬間、身体の奥がじわりと甘く痺れる。力が抜けてしまいそうになるのを堪えながら、私は彼のシャツを必死に握りしめた。

「……一輝さん」

 掠れた声は、驚くほど艶を孕んでいた。自分でも分かる。もう、戻れない。

 一輝さんは何も言わない。ただ、私の頬にそっと手を添えた。

 大きな掌。熱を帯びた指先が、壊れものを扱うみたいに、恐る恐る私の目元を撫でる。その慎重さが、かえって私の奥深くを狂おしいほどざわめかせた。

「あ……」

 抗う間もなく目を閉じると、まぶたにふわりと柔らかな感触が落ちた。

 羽毛のように軽いくせに、どうしてこんなに深くまで痕を残すのだろう。たったそれだけで、呼吸の仕方を忘れてしまう。

「……っ」

 小さく肩が震えた。なのに彼の唇は離れず、まるで私を慈しむように、顔の輪郭をゆっくりと辿っていく。

 額に。それは優しさという名をした、静かな支配だった。

 鼻先に。あまりにも控えめで、なのに胸の奥をきゅっと締めつける、愛おしさの証だった。

「……ん、ふふ……っ」

 くすぐったくて、甘くて、切なくて。こぼれた吐息すら熱を帯びてしまう。

 そのたびに、一輝さんの指先がわずかに揺れた。その微かな震えが、彼の理性がすでに限界を迎えている証のようで、私の胸はさらに高鳴った。

 そしてまた、唇。

 今度は少しだけ長く。確かめるように。逃がさないように。それでいて、こちらの反応を待つみたいに、やさしく、何度も何度も重ねられる。

 ◇

 唇が離れた瞬間、互いの熱い吐息が近すぎる距離で絡み合った。

 視線がまっすぐにぶつかる。

 そこにあったのは、私だけを見つめる、ひとりの男の、剥き出しの熱だった。

 独占欲。執着。渇望。どれも隠し切れないほど生々しくて、私の胸の奥をじりじりと焦がしていく。

「……はる」

 かすれた声で名前を呼ばれた瞬間、心臓が大きく跳ねた。たったそれだけで、こんなにも甘く壊されてしまうなんて。

 私は彼の首筋へ腕を回し、そっとその身体に身を寄せた。逃げないように、もっと求めるように。

「……一輝さんのせいです。こんなに、ドキドキするの……」

 耳元へ落とした、せいいっぱいの囁き。

 その瞬間、一輝さんの喉が大きく動いた。次の瞬間、強い力で腰を引き寄せられ、逃げ場なんて最初からなかったのだと知らされる。

「……ああ、俺のせいだな。君を、こんなふうに乱しているのは」

 低く、掠れた声。その一言だけで、辛うじて残っていた最後の理性が、音を立てて崩れ落ちた気がした。

 再び重なった唇は、もう先ほどまでの躊躇いを完全に失っていた。

 深く。熱く。息も、言葉も、思考さえもすべて奪い尽くすように。

 触れ合うたび、混ざり合うたび、身体の芯が甘く疼いていく。彼の香りも、切ない吐息も、存在そのものもが、私の内側へじわじわと深く染み込んでくるみたいで、もう何も考えられない。

 苦しいのに、満たされる。切ないのに、こんなにも幸福。矛盾した熱が胸の奥で激しく渦を巻いて、私はただ彼に縋りつくことしかできなかった。

「……ん……一輝、さん……っ、すき……」

 唇がわずかに離れた隙間へ、やっと零した本当の想い。

 その瞬間、一輝さんの瞳に、さらに激しい火が灯った。

 返事の代わりに、唇が何度も、貪るように重なる。まるでその言葉ごと、私の存在すべてを、深く深く飲み込んでしまうみたいに。

 完璧主義の支配者が、誇りも理性もかなぐり捨て私をこんなにも熱く、激しく、欲しがっている。

 そして私は、その強い熱に抱かれながら思う。

 もう、逃げられない。逃がしてもくれない。

 ――それでもいいと、甘く疼く胸の奥で、私は心の底からそう思っていた。


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