第四十八章 ライナスとクレア、クロゴネンドに来る
ライナスとクレアがクロゴネンド視察に来ます。
クロゴネンドに護衛を引き連れてライナスとクレアが訪れた。噂を聞きつけて興味を持ち、ならば是非とも訪れたいと、視察に来たのである。
「クロゴネンドに来てくれて、ありがとうございます」
緊張気味にチェルシーが出迎える。二人はサーブレンダー国とゾマアスネ女王国のトップなのだ、緊張してしまうのが普通。
「そう気を張るな、力を抜くと良い」
「そうそう、普段通りでいいからよ」
ライナスとクレアに言われ、チェルシーは肩の力を抜くことが出来た。
馬車から降りたオカンは大欠伸。帝都からここまでずっと寝ていた。オカンは緊張とは無縁の生き物なのだ。
「クロゴネンド(ここ)に帰って来ると、何かホッとするな」
魔族領に遠征していたから尚更。真輔はオカンの息子、こうでならなくては生きて行けない。
吉本新喜劇・異世界劇場を見るライナスとクレアと護衛の騎士たち。今日は特別講演、前以て知らせていたので一般客は居ない。
貴賓席にライナスとクレア、護衛の騎士たちは二人を護るように座る。
まずは前座として出たのはフレッド、相方はクロゴネンド出身の青年。魔族の侵攻時に家族と共に非難、奪還後に戻ってきた。
始まる二人の漫才。ボケ役が相方でツッコミ役がフレッド。即席のコンビにしては息が合っている。
「なんでやねん!」
フレッドのツッコミを見たオカンはウムと深く頷く。
タイミング、入れる場所に角度にスピードの鋭さ。どれをとっても申し分なしのツッコミ。
「短期間でよくぞここまで会得しよった。教えた甲斐があるってもんや」
感心する。
「一生懸命、練習していたみたいだね」
真輔たちが魔族領に遠征していた間も、フレッドが練習していたことが窺い知れる。
「「ありがとうございました~」」
前座が終わり、舞台から去るフレッドと相方。
幕が下り、しばらくの休憩。
今のうちにトイレに行く、護衛の騎士も。
今日の観客はサーブレンダー国の王とゾマアスネ女王国の女王と護衛の騎士たち。しくじればクロゴネンドは大変なことになるかもしれない。
舞台袖に控える芸人たちはプッシャーに押し潰されそうになっていた。
幕が開き、メインの新喜劇か始まる。
舞台袖ではプッシャーに押し潰されそうになっていた芸人たちだったが、幕が開いた途端、プッシャーを吹っ飛ばす。
異世界とはいえ、プロの芸人なのだ。
観客席はある意味、地獄絵図であった。国の代表、立場、イメージからして腹を抱えて笑うわけにはいかないライナスとクレアは気力で声を潜めて笑い、主君がそんな状態なので護衛の騎士たちも声を上げて笑うことは出来ず、必死に笑いを堪えた。
オカンと真輔は芸人たちの成長ぶりに感心。
新喜劇が終わった。まずライナスとクレアが拍手を送り、続いて護衛の騎士たちも拍手を送る。
次は腹ごしらえ、ライナスとクレアにオカンが料理を作る。
十分に温めた鉄板に油を塗り、豚肉にキャベツにもやしに麺を両手に持ったテコで炒める。
美味しそうな音立てて、鉄板の上で焼かれる具材たち。
「なんとも、豪快に作る麺料理だな」
この世界にも麺料理はあるが、パスタ系の乾燥麺が支流。大きな鉄板の上で二本のテコを巧みに使って目の前で調理する麺料理は無かった。
焼いた具材に特製ソースを振りかける。
「いい匂いがする」
焦げたソースの香ばしい香りにクレアは鼻をヒクヒクさせる。
焼きそばは嗅覚だけではなく、視覚的にもライナスとクレアの食欲を刺激した。二つの国を代表する王と女王に食べたいと言う欲求を呼び起こさせた。
「出来たで」
焼きそばを皿に盛り、青のりと鰹節を掛けて完成。ライナスとクレアの前に置く。
箸を使ったことがないので代わりにフォークで食べる。
食べる前から、真輔にはライナスとクレアの感想は解り切っていた。
「美味しいではないか」
「美味い」
やっぱりの感想、オカンの作る料理はどれもこれも絶品。
ライナスとクレアが食べ終えた後、護衛の騎士たちにも焼きそばは配られた。
感想は王と女王と同じ、護衛の騎士たちは一気に焼きそばを平らげる。
ライナスとクレアはクロゴネンドの最高級の宿屋に宿泊することになっている、ここにはホテルは無いので。
護衛の騎士たちは少しランクの落ちる宿屋に宿泊。ランクの落ちる宿屋と言ってもそこら辺の町の安宿よりは上等。
客の居なくなった吉本新喜劇・異世界劇場でオカンと真輔とライナスとクレアで話し合い。
「帝都でもクロゴネンドでも魔族の形跡が見当たらない」
クレアと部下も色々探ったが、尻尾さえ掴めなかった。
「クロゴネンドに新しく移住してきた者の中にいるかと思ったが、怪しい動きをする者は見当たらなかった」
影成を使って調べ、視察の際にライナス自身観察してみても怪しい動きをしている者は見当たらなかった。。
「私も確認できなかった」
クレアも目測だけではあったが、確認できず。
「バーナードさんも騎士団も優秀なのに、見つけられていない。本当に潜入した魔族は何も行動を起こしていないんだ。一体、何が目的なのだろう?」
当たり前の疑問。
動かないし、目的も解らないのでは見つけるのは困難。
「ウチの料理、食いに来たんとちゃうんか」
「そんなわけあるか」
反射的に真輔はツッコミを入れた。
焼きそばはカップのも美味しいよね。




