第四十七章 オカン、前回と合わせてマッスルドッキング
魔王を倒した後に……。
倒れたまま動かない魔王ニーンジグス、動く気配すら見せない。
バーナードが進み出て倒れているニーンジグスを調べる。
「確実に生命活動は停止しています」
つまりはニーンジグスはもう生きていない。
死亡確認と言わなくて良かったと、真輔は内心そんなことを考えていた。
「ニーンジグスを倒したのか……」
ラティストアン帝国の騎士が呟く。
魔王ニーンジグスを倒した。この事実を連合軍が受け入れるのに数秒か必要であった。
受け入れた次に来たのは喜び。
「ニーンジグスを倒したぞ!」
最初にアチナゴーン共和国の兵士が声を上げた。
ついに魔王ニーンジグスを倒した。この喜びが連合軍に広がって行く。
「やった!」
「俺たちは魔族に勝ったんだ!」
魔族との戦いに勝利した。もう誰も彼もが魔族の脅威に怯えなくて済む死ななくて済む。中には抱き合って喜び合う人も。
バーナード、ライナス、クレアは大喜びはしていないが表情が緩んでいる。表に出さなくても嬉しいものは嬉しい。
真輔は嬉しいと言えば嬉しいが、大喜びするほどではない。真輔は日本人、ここは異世界。他人事とは思わないが、これで終わっただなとの思いの方が強い。
何にも気にしていない様子のオカン。
カタカタカタカタカタカタカタカタ、喜び合う連合軍に水を差すような薄気味悪い笑い声が響き渡った。
「誰だ」
笑い声の聞こえてきた方向をクレアが見ると、そこには細長い嘴、飛膜の付いた細い腕、両足の鈎爪で天井に張り付いている魔族が居た。似ている生き物と言えば翼竜。
「――何か嫌な予感がする」
真輔の脳裏を定番の展開が思い浮かぶ。
「誰だと言うなら、名乗りましょう。あたくしはノードラテンプ、大魔王ディオウマ様に使える戦男爵でございます」
「――ああ、やっぱり」
強敵を倒したと思ったら、更なる強敵が現れる定番の展開。映画でモンスターを倒して喜んでいたら、もっと大きなモンスターが出てくるのがお約束。
魔王を倒して世界が平和になると思ったら、大魔王が現れた。何度もリメイクされている大人気RPGがある。
「大魔王ディオウマだと……」
天井にいるノードラテンプを見ているライナス、いつでも攻撃できる体制を整えている。
「魔王ニーンジグスなど、人間世界に攻め込む魔王軍の指揮を任された一軍の司令官に過ぎないのですよ」
魔族のボスだと思っていた魔王ニーンジグスがただの一軍の司令官に過ぎない。それを聞いたアチナゴーン共和国の兵士の一人がへたれ込む。致し方ない、やっと魔王ニーンジグスを倒して魔族との戦いが終わると思っていたのに、唐突にさらに上位の存在がいたのだから。
「せやな、モヒカンはザコやもんな」
「それは違うと思うよ」
突っ込んでおく真輔。
「降りて来いよ」
挑発するクレア。あんな場所に居たら攻撃は届かない。
「カタカタカタカタカタカタカタカタ、その挑発には乗りませんよ、今日は顔見せのために現れたまで。今は短い勝利の余韻に浸っていなさい」
逃がすものかとコンパウンドボウ部隊が動こうとしたが、それよりも早くオカンが動いた。
「どっせい!」
気合一閃、人間とは思えない跳躍力でジャンプ。逃げようとしたノードラテンプに張り付く。
高い場所にあるはずの天井まで届いたジャンプだけでも驚きなのに、おばさんが飛びついて来て張り付いて来たのである。戦男爵でもノードラテンプが固まってしまうのも無理はなし。
硬直状態のノードラテンプの両足首を掴み、脇の下に足をかけて落下。頭から床に叩きつける。これがオカンドライバー。本家と違うのは背中からではなく、前面で仕掛けたこと。
オカンを下から除く形となり、精神的視覚的にも破壊力を与える。
オカンが離れると、ノードラテンプが倒れた。
魔王ニーンジグスを倒し、魔族との戦いに勝利したと思ったら、更なる強敵が現れたことでどん底まで落ち込んだアチナゴーン共和国の兵士たちの気分をオカンが一気に引き上げた。
アチナゴーン共和国の兵士の一人がコンパウンドボウで倒れたノードラテンプに矢を打ち込んだのを合図に連合軍がを一斉攻撃、とどめを刺す。
折角、名乗り出た戦男爵ノードラテンプだったが、逃げる間も与えられずにオカンが倒してしまった。
「定番を覆してしまったね、オカン」
真輔は突っ込まずにはいられない。
定番を覆すオカン。




