第四十六章 オカンVS魔王
魔王との激突。
魔王の居城の前での連合軍と魔王軍の戦いは連合軍の圧勝で終わる。連勝で勢いに乗る連合軍と逆風の魔王軍差が出た。
魔王軍は壊滅、連合軍に死傷者一人も出ず。
「ふぁぁ~」
欠伸するオカン、緊張感皆無。魔王の居城の前の戦いにオカンの出番なし。
「ここからが本番だ」
バーナードの言っていることは正しい。この戦いは前哨戦に過ぎない。
その事は連合軍の全員が解っている。誰一人として驕っている者はおらず。
馬に乗ったままでは城には入れない、馬に乗った騎士たちは馬から降りて魔王の居城へ入って行く。
出番の無かったオカンは真輔と一緒に城の中へ。オカンの出番はここから。
アチナゴーン共和国の兵士とラティストアン帝国の騎士の一部は馬の見張りをするために残る。
「カビ臭そうな城やな」
城の中を見回す。
「同感だけど、匂いはしないね」
城の中は薄暗く、じめじめとした雰囲気は漂うものの変な匂いはしてこない。
先頭を歩くのはバーナード、その後ろはラティストアン帝国騎士団、ライナスとサーブレンダー国騎士団、クレアとゾマアスネ女王国騎士団、アチナゴーン共和国の兵士。最後尾はオカンと真輔。
時々、魔族が襲い掛かってくるが魔王の居城の前ほどの数はいない、容易く返り討ち。
「どうして、こんなに手薄なんでしょうか……」
イーサンが聞いてきた。罠かもしれないと不安を抱えているのだ。
「おそらく、魔王自ら私たちを迎え撃つつもりなのでしょう」
それがバーナードの読み。魔王の居城の前で戦力を集中させ、破られた場合は城内で魔王自ら迎え撃つ。
状況から、そう推理した。
バーナードの推理通りに、最深部に辿り着くまで大した襲撃は無かった。
魔王の居城の最深部は大広間になっており、奥に玉座に座る者が一人。
2mを上回る巨体に緑色の肌、赤いローブを着ている。その姿を例えるなら、鰐である。頭頂部に赤いとさかのような髪、所謂モチカンが生えていた。
「お前が魔王か」
バーナードが尋ねたが、みんな答えは解っている。
「そうさ、この私が魔王ニーンジグスだ」
玉座から立ち上がる魔王ニーンジグス。
「どいつもこいつも役立たずの部下共が、この私が虫けらと戦わなくてはならなくなったじゃねぇかよ」
腰に差した大きなファルシオンを抜き放ち、攻撃を仕掛けてきた。
連合軍とニーンジグスが激突、少し離れたところでオカンは準備体操、黙って見ている真輔。
ニーンジグスの剛腕で振り回されるファルシオンの大きさ切れやすさ、掠っただけでも致命傷になる。
素早く連合軍は距離を開け、ゾマアスネ女王国騎士団の槍とラティストアン帝国騎士団とアチナゴーン共和国の兵士のコンパウンドボウで遠距離攻撃。
ファルシオンで飛んでくる矢を叩き落す。
魔王ニーンジグスがどれだけの剛力を持っていたとしても、間合いに入らなければ攻撃を食らうことは無いはず。
ニーンジグスが口を開いた。
「全員、散開!」
鍛え上げた騎士の勘でバーナードは指示を飛ばし、連合軍全員が散開した。
ニーンジグスが炎を吐いた。間一髪、咄嗟に散開したので直撃した者はいなかったが、上昇した気温に汗が流れ落ちる。
体勢を崩したアチナゴーン共和国の兵士に、ファルシオンを振り下ろそうとするニーンジグス。崩れた体制では逃げられない。
サーブレンダー国騎士団の一人がシミターを投げる。
真っすぐ向かってきたシミターをファルシオンの軌道を変え、弾き飛ばす。
その間にアチナゴーン共和国の兵士は逃げることが出来た。
コンパウンドボウで放たれた何本もの矢をファルシオンの一振りで叩き切る。
単純に力任せにファルシオンを振り回しているのだはない、しっかりと剣術の心得がある。
近距離にファルシオン攻撃、遠距離には炎の吐息。ニーンジグスはこの組み合わせ攻撃を繰り出す。
一方、連合軍は安易に接近することすら困難。下手に近付いた途端、ファルシオンで斬られる。かと言って離れていれば炎が吐かれる。連合軍は辛うじて躱すことが出来ているが、これでは攻勢出ることが出来ない。
普通、人間の体力には限界があり、体力が尽きたところを斬られるか焼かれることになる。追い込まれていく、連合軍。
勝利を確信したニーンジグスのワニ顔に笑みが生まれた。
準備運動の終えたオカンはクラウチングスタートの構えを取った。
「位置について、よ~い、ドーン」
真輔の掛け声で走り出す。
突進してくるオカンにニーンジグスは炎の吐息を発射。
「危ない」
このままでは炎の吐息が直撃する、助けに行きたくてもクレアの位置からは間に合わない。
サーブレンダー国騎士団もゾマアスネ女王国騎士団もアチナゴーン共和国の兵士も最悪の状況を想像した。
オカンが口をタコの口のようにすると息を吐いた。想像を絶する肺活量から吐かれたオカン吐息はニーンジグスの炎の吐息を押し戻し、本人に返す。
このままでは自分の吐いた炎で自分自身が焼かれる。慌てて炎の吐息を止めた。
その隙に懐に飛び込んだオカンはニーンジグスを担ぎ上げると頭を左肩口に乗せ、両太腿を掴んで天高くジャンプ。
そのままの体勢で直地、衝撃でニーンジグスに首折り、股裂き、背骨折りを同時に食らわせた。
「ぐはっ」
呻き声を漏らすニーンジグス。
これがオカンバスター。
オカンが技を外すと、倒れたニーンジグスだったが何と立ち上がったではないか。
「オカンバスターを食らって立ち上がった!」
これには驚く真輔。
流石は魔王と言うべきたが、ふらつきファルシオンもオカンに担ぎ上げられた時に手放してしまっている。
確実に深刻なダメージを受けていた。何とか立ち上がった状態、満身創痍に違いなし。
走り出すバーナード、袈裟懸けにニーンジグスを斬る。
いつの間にかニーンジグスに迫っていたライナスは両手に持ったシミターを振るいニーンジグスを斬り刻む。
オカンバスターの直撃を食らったニーンジグスに抵抗する力は残ってはいない。
「止めだっ!」
クレアが投げた豪槍がニーンジグスの胸を貫き、串刺しにする。
ニーンジグスが口を開けた。炎の吐息を出そうとしたが、最早吐き出す力は残っておらず、吐かれたのは血。
再度、倒れるニーンジグス。しばらく、連合軍は様子を見ていたが、一寸たりとも立ち上がる様子は見せなかった。
実際のプロレスで使われたことがあるんだってね。




