第四十四章 オカン、勲章を受け取る
貰えること自体は嬉しい。
お茶を飲み終えた一同。バーナードが一息ついたところで本題に入る。
「これが皇帝陛下と皇女殿下からの感謝の贈り物です」
革の背負い袋から小さな木箱を取り出す。
オカンが開けてみると、中にあったのは六角形の金細工の中央に赤い宝石が填まっている品物。
「何やこれ、バッチかいな」
小さな木箱の中身を見たエミーとハンナの顔色が変わる。
「きっと、勲章たよ」
形と宝石でそう判断した真輔。
「その通りです。皇帝陛下と皇女殿下が感謝の気持ちを込めて贈る、めったにお目にかかれないんですよ」
「本当に活躍した人にしか贈られない、とても名誉なものなのですよ」
めったにお目にかかれない勲章が見れて、二人のテンションが高い。
「おおきに」
テンションはそれほど高くはない。プレゼントをされたこと自体は嬉しいことは嬉しいが、勲章を貰ってもどうすればいいかよく解らない。オカンは勲章を貰ったことがないで。貰ったことがあるのは皆勤賞ぐらい。
「こちらもどうぞ」
バーナードは背負い袋からA4サイズぐらいの木箱を取り出して机の上に置いた。
蓋を開けてみると、中には包丁が一本入っていた。形は三徳包丁。
手に取って見てみる。
「これはええ品や」
オカンに刃物の善し悪しが解るわけでもなく、愛想で言ったことだが、勲章の時よりも嬉しのは確か。
皇帝陛下も皇女殿下もラティストアン帝国の民ではないオカンが勲章を受け取っても、それ程喜ばないであろうことは解っていた。
それでも感謝の気持ちを示したく、勲章を授与した。そしてオカンが喜ぶ品も送りたいと考え、オカンと親しいニックに相談。
料理人のニックは料理好きのオカンには包丁が良いのではと提案。
実際、料理をしている最中にあんな包丁があったら良いなこんな包丁があったら良いなと言っていた。
あんな包丁があったら良いなこんな包丁があったら良いなの話を参考に、皇族御用達の鍛冶師に造らせたら三徳包丁が出来た。
「握り心地ええ、肉に魚に野菜、沢山料理を作れるで」
贈られた人が喜べば送った側も嬉しい。
お昼の時間になった。バーナードも来ていることもあり、オカンと真輔は外に食べに行くことにした。
クロゴネンドにはオカンのプロデュースした美味しそうな食べ物屋の他にも、この世界の料理を出す店も並んでいる。
この世界の料理の店もオカンのプロデュースした店の料理に負けるものか腕を磨いた結果、とても美味しくなって集客力が上昇。
オカンのプロデュースした店の料理も負けるものか腕を磨いて美味しさが上昇。
帝都でバーナードはお好み焼きやたこ焼きを食べたことがあって、正直に美味しいと思った。
どこで何を食べようかと、ぶらぶらと歩きながら店選びしているオカンたち。どの店も美味しいと評判なので選ぶのも一苦労。
道端に止めてあった馬車に積まれた荷物の一つ。荷物を縛っているロープがひとりでに動いて解けたかと思うと、真っすぐオカンに目掛けて飛んで行った。ロープの先には顔が付いている。
カーティスとサイモンたちを絞め殺した体をロープ状に伸ばすことの出来る魔族、ナダンコア!
オカンを窒息死させるために、首に巻きつこうとする。
咄嗟にバーナードは剣を抜くが、この距離では間に合わない。
飛んでくるGを素手で叩き落とすオカンの動体視力と度胸。むんずと飛び掛かってきたナダンコアを掴み取った。
素早く雁字搦め(がんじがらめ)にナダンコアを結んでしまい、たちまち玉状にしてしまう。
慌てて解こうとしても、あんまりにも複雑に固く結んだので解くことが出来ない。あんまりにも複雑に固く結ぶために、結んだオカン本人が解けなくなり、ハサミで切る羽目になったりすることもしばしばあった。
「ピッチャー、バッターボックスの大谷に向かって第一球を投げましたで」
オカンは玉状に結んだナダンコアをバーナードに向かって投げた。
解くこともできない、逃げることもできない。ナダンコアは真っすぐバーナード目掛けて飛んで行く。
大谷の意味は解らなくても、オカンの意図は解った。
投げつけられたナダンコアに剣を振り降ろし、真っ二つに斬る。
カーティスとサイモンの仇を討ったことになるかもしれないが、ここにいる誰もが何とも思わない。普段から人との関係は大切にしないと。
馬車に積まれた荷物の一つを調べる真輔。
「荷物のロープに化けて町に潜入したのか……」
復興を果たしたクロゴネンドだが、結界を張れるようになるまではまだ時間がかかる。一度、魔族に支配されてしまったのだから。
討伐されたナダンコアが実は魔公爵、爵位持ちなのであった。
こうしてオカンは魔爵位持ちを全て倒したのである。
オカンが喜ぶ贈り物。




